YOASOBI、ヒットの理由をSNS活用から徹底分析 ファンとのつながり&行動喚起を促す“チームワークの巧さ”

二次創作で広げてほしいと伝える

 TikTokで使ったりInstagramミュージックスタンプももちろんですが、カバーなどの二次創作を通じてアーティストのことを知ってもらえるわけですし、こうやってオフィシャルに紹介することで、「自分も紹介してもらえるかも!」とカバー動画が増えて行きますね。

 UGC(ユーザーが生成したコンテンツ)はなにより大事です。

 ここまで実際の投稿を見てきましたがいかがでしょうか? さりげない投稿の中に明確なCTAが存在します。ファンにどうしてほしいかはっきりと伝えていることに気づかれたでしょう。

 でも、そもそも何故こうなったのでしょう? もちろんアーティスト2人がSNSがとても上手なことに加えて、YOASOBIのオフィシャルアカウントを担当されている方が素晴らしいということはあります。

 彼らの成功は各所で様々語られています。楽曲の良さ、タイミング、TikTok。そして私は他所ではあまり語られない1つの理由があると推測します。

 それはスモールチームだということ。

 彼らがストリーミング配信のリンクとして設定しているスマートURLは「orcd.co/」ではじまるURL。これはThe Orchardのリンクです。

The Orchardとは?

 The Orchardは全世界に40カ所以上のオフィスを持つ大手音楽ディストリビューション会社です。SpotifyやApple Musicといった大手音楽配信サービスを始め、世界中の音楽サービスに向けて一括で音楽を届けることが可能なツールを提供しています。それだけではなく、マーケティングに関するフルサービス、シンクライセンシング、ビデオサービス、透明性を確保したデータ分析、広告、権利管理、デジタルとフィジカルのディストリビューションなども、全世界のアーティストやレーベルに提供しています。

 インディペンデントのアーティストがストリーミング配信する際に使う、TuneCore型のような年間あたり一定の登録料を先払いして、Apple Music、Spotifyのような各配信サービス(DSP)からの収入を100%で受け取るサービスとは少し異なり、各配信サービス(DSP)からの収入のうち一定の手数料をディストリビューター側(The Orchard)が受け取り、残りをアーティストが受け取るビジネスモデルですね。中国のテンセントや韓国のMelonなどの、グローバルサービス(Apple/Spotifyのような)ではないローカルの配信サービスに対応していることが特徴ですね(参考:BTSの世界展開もサポート デジタル・ディストリビューター「The Orchard」が目指すものは?)。

 YOASOBIはそんなThe Orchardを活用し、スモールチームでアーティストの熱量を周りへ広げていくことに成功したのではないでしょうか。発信し、広げていくことをアーティスト自身が行い、オフィシャルアカウントを上手に運用。アーティストの叶えたいストーリーに、ファンが参加していく。熱量を周りがブーストしていく。誰かが流行らせてくれるのを待つのではなく、自分たちで輪を広げていく。

 彼らのSNSには学ぶべきことが本当にたくさんあります。

 アーティストの「聴いてください」は告知ではありません。ファンにどうしてほしいかを伝えるエンゲージメントポイントです。自身の口で、自分の作品を聴いてもらうため伝えましょう。

 最後に私のお気に入りの投稿、YOASOBIコンポーザーのAyaseの投稿をご覧ください。

力を貸してほしいと伝える

「もっと多くの人に届けたい、広げてほしい 力を貸してほしい!」

 これを言えるか言えないか、今必要なことだと思いませんか?

■松島 功
音楽と美容が好きな人。Spotifyを退職後、音楽専業のデータ分析・デジタルプロモーション会社arne(アルネ)設立。同代表。
https://arne-jp.com
Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる