G-FREAK FACTORY 茂木洋晃が『VINTAGE』に込めた“勝ちに行く意志” 「今を綴ることがバンドマンの大事なマインド」

G-FREAK FACTORY茂木が語る“勝ちに行く意志”

「めちゃくちゃな時代をどうやって這い上がろうか考えてる」

ーーライブハウスに行くと「こんな人がいるんだ」みたいな驚きがありますし、何よりその場所に行くっていう行動が伴っている時点で、オフラインの出会いは信頼ファーストなところは少なからずありますよね。

茂木:もちろんそうだね。秘密の話もオンラインではできないから、そう考えただけでも十分オフラインの価値があるんだと思う。ただ、コロナ禍の状況もあって、もはやオンラインというものは避けられないし、俺らはオンラインと一緒に生きていかなきゃいけない。ボタンを押せばあっという間に会話をシャットダウンできちゃうわけだけど、人との繋がりってそんなに淡白でインスタントなものじゃないわけだよね。でも現実に両方あるんだったら、使い分けなきゃダメだと思っていて。地方に住んでいながらオンラインにアンチ立てちゃったら勝てないから、使い分けて次につなげていく感覚かな。

ーーそんな時代でいつ自分らしくいられるんだろうって考えると、「呉々も日の暮れと」でも〈孤独を楽しむ そんな未来よ〉と歌われているように、やっぱりひとりである時間に帰っていくんじゃないかなと思って。「呉々も日の暮れと」は明るいだけの曲ではないし、この曲で締め括られることで〈カサブタ〉のままアルバムが終わる感覚なんですけど、〈孤独を楽しむ そんな未来よ〉に向かっていくことには意識的だったんじゃないかと思いましたが、いかがでしょうか。

茂木:カサブタになったと思える傷って周りの人は忘れちゃうんだけど、やっぱり当事者にしてみれば、内側から傷を剥いでみるとまだグジュグジュなんだよ。それは自分でも経験したし、もちろんそういうところから這い上がろうとしている人たちをいっぱい見てきたし、何も考えないで時代に乗っかるのが一番楽なんだけど、そうはいかなくなったんだよね。少なからずこれだけ長くツアーをやっていると、毎年起こる天災によって傷つく人たちが身の回りにも出てくるから、対岸の火事ではなくなってきてる。「あっちの方はあんなになって可哀想に」とか言っても、そこには俺の仲間の顔がたくさん浮かぶわけでさ。傷がカサブタになったように見えるけど、世界のあらゆる噛み合わせが悪くなってきて、日本もおかしくなってる今、本当はまだカサブタにすらなってないと思う。そこは計り知れないよ。

ーーまだ世界の傷の深さすら把握できていないんじゃないかという感覚ですよね。

茂木:今回は全部コロナ禍の前に書いた曲たちだけど、自粛によって人と人が会って手を取り合うことを虐げられた世の中で、この先何が生まれてくるのかって考えるけど、生まなきゃダメだし、負けっぱなしじゃダメだと思う。どうやったら勝てんのかなって、そればっかり考えてるよ。

茂木洋晃(Vo)

ーー「AGAIN AND AGAINST」がすごく好きなんですけど、〈生命線を超える速さで 運命線を書き換えるだけ〉〈過去を超えて ここに立つ〉など、この曲ではポジティブな言葉で勝ちにいくことを歌い上げていますよね。

茂木:唯一ポップな曲だよね。 トーンが違いすぎて、最初はアルバムに入れるかどうかも迷ってたくらいだから(笑)。今年は全く良い年じゃないけど、「AGAIN AND AGAINST」で歌ってるのは「またかよ。またこんなことが起きるのかよ......でも、抵抗していこう」ということで。毎年免疫ができてるはずなのに、土砂崩れや地震が起こるとまたダメになっていく中で、じゃあどうやって抵抗するかの糸口を探していって、唯一この曲だけは「頑張ろうぜ」と思って作れたんだよね。

G-FREAK FACTORY「AGAIN AND AGAINST」

ーー毎年のように災害が起こってはまた日常に戻ることが繰り返されていると思うんですけど、放っておいたら人類の歴史自体がその繰り返しになるんじゃないかとも思っていて。災害、戦争、人種問題、パンデミックとか、様々な深刻な問題がいったん落ち着いたらまた平凡な日常に慣れきってしまうのではないか、ということに怖さを感じる瞬間もあるんです。

茂木:それは忘れるから? それとも、あえてそうしていくっていう意味?

ーー両方あるのかもしれないですけど、身近に当てはめるなら忘れてしまうことはどうしてもあるなって。大きな地震が10年に一度くらい日本で起きていますけど、日頃はそのことを忘れて地震対策を怠ったまま生きてしまう自分もいるから、そんな自分を律していかなきゃいけないなと思うことの繰り返しで。

茂木:でも、何もない場所で何かに備えることによって、頭の片隅に常に恐怖や不安があるというのはすごく酷なことだと思うんだよね。疲れちゃうし、そうじゃないところでたまたま暮らせていたということに、めちゃくちゃ価値を見出して感謝したほうがいい。その上で1日1分とか、30秒でもいいから被災地で苦しんでいる人たちを思うことができたら、それでいいんだと思う。その倍くらい、今生きていることや、身の回りの人たちとか環境に感謝しないといけないんだよ、きっと。ライブもできないし、とにかくみんな早くコロナのこと忘れないかなと思ってるからね(笑)。そうすればずっと腹から笑っていられるじゃんか。笑っててもその後すぐに悲しみが入ってきてたら、ずっとドンシャリみたいな暮らしになっていくわけだし。「当たり前が一番難しい」というのをコロナ禍を通して言う人がいるけど、そんなの本当はとっくにわかっていたはずなんだよね。でも虐げられて初めて気づくわけで、今はライブも非日常になっちゃってるけど、多くの人にとっては日常だったわけだし。俺はこのめちゃくちゃな時代を生きているのはどれだけ贅沢かって思うようにしていて、ここからどうやって這い上がろうかなってことを考えてる。

ーー今お話を聞いていてハッとしたんですけど、そう気づけたときに「笑える場所がちゃんとある」というのはすごく大事だと思うし、G-FREAK FACTORYはちゃんとその場所を作ってきたと思うんですよ。

茂木:いいこと言ってくれるじゃねえか。そうだと思う。さっきもオフラインの話をしたけど、今って一人一人が必要な情報だけを持ってカスタマイズしていくから、個人プレイのYouTubeが流行る理由もよくわかるよね。大げさなものは一切いらなくて、個人がメディアになって、そこに広告がつくというかさ。だから、それぞれがすごいアイデンティティを持ってると思うんだけど、それを共有してないんだと思うんだ。でも、それってみんなでつるんで何かやることが嫌なんじゃなくて、みんなでつるんで何かやることをそもそも知らないんだと思う。俺はそこに抵抗している感覚があって、「こんだけ便利になものを手に入れたけど、人と人との関わりってもっとこうじゃないの?」ってことは言い続けると思う。

ーー移ろいの速い時代で、変わらない大切なものを歌い続けるのは素晴らしいですし、簡単なことじゃないだろうなとも思います。

茂木:もちろん俺らより上の世代、俺の世代、もっと若い世代や、これから生まれてくる世代で感じ方や当たり前なことが全然違うのは、面白いなって思う。でも、どんだけツールが進化して便利になっても、人間が200歳まで生きれるようにはならないんだよ。そうやって同じ時間を共存しているからこそ大事なことは綴っていきたいし、時代が大きく変わらざるを得ないときでも“綴ることができている”ってことが、バンドマンの最後のマインドとして大事だと思ってる。『VINTAGE』もこのタイミングでリリースできて良かったと思うし、今のマインドで綴れたことはすごく大きいね。大事な作品になったと思うよ。

G-FREAK FACTORY『VINTAGE』

■商品詳細
G-FREAK FACTORY『VINTAGE』
・初回限定盤(CD+DVD)¥3,100(税抜)
・通常盤(CD):¥2,500(税抜)
※発売元:BADASS

<CD収録曲>
1.BE ALL AROUND
2.REAL SIGN
3.Fire
4.ヴィンテージ
5.DAYS(#29)
6.AGAIN AND AGAINST
7.FLARE
8.OVERALL
9.乞え~KOE~
10.SO LONG
11.STEADY
12.GRANDSLAM
13.FAKE SPEAR
14.呉々も日の暮れと

<DVD収録曲>
1.Fire
2.FLARE
3.Too oLD To KNoW
4.ダディ・ダーリン
5.GOOD OLD SHINY DAYS
6.いつの日か

※購入者特典対象法人
・タワーレコード
・HMV
・amazon
・ヴィレッジヴァンガード
・楽天
・TSUTAYA、ワンダーグー、新星堂

■ライブ情報
『G-FREAK FACTORY VINTAGE TOUR 2021』
2021年1月16日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2021年1月17日(日)兵庫・神戸 太陽と虎
2021年1月24日(日)長野・LIVE HOUSE J
2021年1月30日(土)茨城・水戸LIGHT HOUSE
2021年1月31日(日)栃木・HEAVEN'S ROCK宇都宮 VJ-2
2021年2月5日(金)埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3
2021年2月7日(日)静岡・静岡Sunash
2021年2月11日(木・祝)大阪・心斎橋BIGCAT
2021年2月14日(日)新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE
2021年2月20日(土)香川・高松DIME
2021年2月21日(日)徳島・CLUB GRINDHOUSE
2021年2月27日(土)神奈川・F.A.D YOKOHAMA
2021年2月28日(日)千葉・LOOK
2021年3月6日(土)青森・Quarter
2021年3月7日(日)秋田・club SWINDLE
2021年3月13日(土)石川・金沢vanvanV4
2021年3月20日(土)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
2021年3月21日(日)宮城・仙台Rensa
2021年3月27日(土)福島・郡山HIPSHOT JAPAN
2021年3月28日(日)群馬・高崎club FLEEZ
2021年4月3日(土)福岡・BEAT STATION
2021年4月4日(日)鹿児島・SR HALL
2021年4月10日(土)北海道・札幌cube garden
2021年4月11日(日)北海道・函館club COCOA
2021年4月17日(土)京都・KYOTO MUSE
2021年4月18日(日)広島・CAVE-BE

■イベント情報
『山人音楽祭2020』
日程:2020年9月26日(土)・27(日)
会場:ヤマダグリーンドーム前橋
山人音楽祭2020 公式サイト

G-FREAK FACTORY オフィシャルサイト

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