WONK 荒田洸が明かす、多岐にわたる活動を重んじる理由 「表現はすべてのジャンルが結びついてる」

WONK荒田洸、多岐にわたる活動の理由

「表現するって何だろう?」って考え続けることが重要

ーー荒田さんはドラマーであり、トラックメイカーであり、プロデューサーであり、さらにはソロアーティストで、シンガーでもあるというのは他になかなかいないですよね。

荒田:自分の作品に関しては、今はよりアコースティックに行くようになりました。ずっとトラックメイカーとして、フライングロータスみたいな音楽が好きだったので、あれをもっと自分色にして、ビートミュージックの進化版みたいなのを追い求めていきたいと思ってたんですけど、ヒップホップをやり過ぎたことによって、アコースティックをやりたくなってきて(笑)。最近のヒップホップとかR&Bの音作りですごく思うのが、一聴したときに、頭の中にDAWの画面が出てきちゃうんです。あとは、歌が乗ってきた瞬間に、ボーカルブースで録ってる感をめちゃ感じたり。そういう音作りには飽きてきて、自分の作品はもっとサウンド感に広がりを持たせたいというか、場所が想像できるような音を作りたくて。

ーー狭い画面ではなく、もっと広々とした場所?

荒田:例えば、Bon Iverを聴くと、「教会で歌ってるのかな?」って思ったりするじゃないですか。ああいう感じで、パッと聴いたときに草原の風景が浮かんだりするような音にしたいなって。ヒップホップをやりまくったことによって、今はそういう場所が浮かぶような音作りに興味を持つようになりました。

ーーコロナ禍で家にいる時間が増えたから、そうやって別の場所を想像させるような音楽はこれから求められるかもしれない。

荒田:どこかに連れて行ってほしいですよね。PCの中じゃなくて、もっと広い場所に……草原に連れて行ってほしいですね。

ーーソロ作としては2018年に『Persona.』をリリースしているわけですが、元からやりたいことだったのでしょうか?それとも、何かきっかけがあったのでしょうか?

荒田:WONK自体もともと自分がやりたいことをやるために組んで、自分がリーダーではあるんですけど、ワンマンバンドにはしたくなくて。せっかくバンドなんだから、みんなで作品を作りたいというか、チームプレーがしたかったんですよね。で、実際それぞれがいろんなところで経験してきたことをバンドに落とし込むようになって、結果的に自分だけのアウトプットをする場所ではなくなっていったんです。最初は俺が下地を作って、「こうゆうピアノを足して」とか指示してたんですけど、やっぱりバンドでそれをやっちゃうとつまらない。なので、自分だけの音楽を追求する場所としてソロを始めて、WONKはWONK、ソロはソロって感じで、今はいい感じに住み分けられるようになりました。

ーー最初から一蓮托生のバンドというよりは、それぞれが個人でも活動して、相乗効果を生むような活動スタイルを思い描いていたわけですか?

荒田:いや、最初はノリで始めてるんですけど、集めたメンバーがそれぞれ得意な範囲とか趣味がまったくバラバラだったので、自然とこうなって行ったというか。ここ最近はそれぞれバンドを組む前から興味があったことにより足を踏み入れて、それが結果的にWONKにも返ってくる流れができていて、その傾向は年々強まってますね。

ーーバンドメンバーにあえていろんな趣味の人を選んだというのは、幼少期からいろんなカルチャーに触れることが自然だったという最初の話とも通じるかもしれないですね。

荒田:そうかもしれない。僕はいろんなことに興味を持ってるような人が好きで、普段からそういう人たちと絡んでるから、WONKが今みたいなスタイルになったのも、自然なことなのかもしれないですね。

ーー自分の価値観だけを信じるのではなく、別の価値観に触れ、考え続けることの重要性をSF的な世界観で描いた『EYES』のストーリーも、もちろんメンバー全員がその意識を共有しているだろうけど、荒田さん自身の感覚と強くリンクしてるんだろうなって。

荒田:表現は個別の事象じゃないというか、すべてのジャンルが結びついてると思っていて。例えば、ガリレオ(・ガリレイ)は科学も物理学も天文学もやっていたように、結局すべては結びついてるんだなって、最近より感じるようになりました。僕の直近の夢としては、レインボーブリッジの上にオーロラを作りたいんですよ(笑)。自分の作品も作りたいし、日本のヒップホップに自分の思うサウンド感を根付かせたいし、服も作りたいし、それを別々のベクトルでやるんじゃなくて、ひとつのベクトルの中で完結させたくて。それこそ昔は美術館にもめちゃめちゃ連れて行ってもらってたんで、そういう経験も踏まえて、音楽だけじゃないもの作りで何かを表現したい気持ちはどんどん強まってますね。

ーーWONKとKing Gnuは深い交流を持っていますが、WONKが主宰するEPISTROPHと、常田さん主宰のPERIMETRONの活動からも見えるように、音楽的な接点だけではなく、「すべてが結びついている」という感覚をシェアしているのが大きいんでしょうね。

荒田:何を考えても、結局結びついてるんですよね。音のミックスを考えるのも、結局物理学とか音響学に結び付くし。ライブの演出を考えるにしても、僕が興味あるのはライブの演出だけをやってる会社じゃなくて、個人でインスタレーションとかをやってるような人たちで。そういう人たちの作品を見たときに、「この表現方法を使って、自分の得意な音と絡めることで、何か表現できるんじゃないか?」って発想をするので、そうやってすべてをクロスオーバーさせて、中身のあるいい表現にしていけたらなって。

ーー「オーロラを作りたい」という話にしても、一見突飛な考えだけど、「場所が想像できるような音楽を作りたい」という話と結びつくかもしれないですね。

荒田:まさに、そこも自然な流れかもしれないですね。

ーー今話してもらったのは、自粛期間の中で改めて考えたことでもあるのでしょうか?

荒田:うーん……僕、もの作りのことは常に考えてるタイプなんですよね。朝起きた瞬間から、「あれやりたいけど、どうしたらいいのかな?」って、自然に考えてるから、「自粛期間だから」っていうわけじゃ……いや、考えてましたね(笑)。もの作りそのものに関しては常に考えてるんですけど、もの作りをすることの意味とか、それを通じて何をやりたいのかとか、自粛期間でもっと奥の部分まで考えることができて、「結局すべてが結びついてるんだな」って、その中でより強く感じたんです。答えは出ないですけど、ただ作り続けるんじゃなくて、作品の強度を上げて、意味をしっかり込められるようにするには、一回立ち止まって、自分のこれまでの軌跡を振り返りながら、「表現するって何だろう?」って考え続けることが重要だなって、改めて思いました。

■WONK
日本の音楽を再定義するエクスペリメンタル・ソウルバンド「WO NK」。メンバーそれぞれがソウル、ジャズ、ヒップホップ、 ロックのフィールドで活動するプレイヤー/ プロデューサー/ エンジニアという異色なバンド。

2016年に1st アルバムを発売して以来、国内有数の音楽フェス出演や海外公演、成功を果たす。ジャンルや世代を超えた国内外のビッグアーティストへ楽曲提供・ リミックス・演奏参加するなど、音楽性の高さは多方面から支持されている。2019年7月にEP『Moon Dance』をリリース、11月にシングル「Signal」を配信。2020年1月リリースの香取慎吾ソロアルバム『20200101』にて「Metropolis(feat.WONK) 」を楽曲提供・共演を果たし話題となる。2020年4月にシングル「HEROISM」、6月3日には「Rollin’」を配信、 6月17日に4枚目のフルアルバム『EYES』をリリースした。

■リリース情報
『EYES』
配信:6月17日(水)リリース
ART BOOK+CD:¥8,800(税込)
7月22日(水)リリース
完全予約限定作品(※予約受付終了)
<特殊仕様>
・LPサイズ:AR対応ART BOOK(約30㎝×30cm/24P)+CD
・WONK初となる歌詞+対訳入り

<収録曲>
01.Introduction #5 EYES
02.EYES
03.Rollin’
04.Orange Mug
05.Sweeter, More Bitter
06.Filament
07.Skit 1 - Behind The World
08.Mad Puppet
09.Blue Moon
10.Signal
11.Esc
12.Skit 2 - Encounter
13.Third Kind
14.Depth of Blue
15.If
16.Skit 3 - Resolution
17.Heroism
18.Fantasist
19.Nothing
20.Phantom Lane
21.Skit 4 - Prayer
22.In Your Own Way

■関連リンク
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