SEVENTEEN、本国でミリオンセラー達成の『Heng:garae』が日本でもチャート首位 サウンドの緩急&ボーカルの色合いに注目

 なんでわざわざこのあたりに注目するかといえば、それがポップミュージックにおける今っぽいふたつの作法、つまり音数を減らしつつひとつひとつのサウンドの分離を強調するミニマム志向とも、リバーブやレイヤリングで空間をぎっちり満たすマキシマム志向とも距離があるな、と思うからだ。具体的には前作『YOU MADE MY DAWN』あたりと比べると歴然とする。

 とはいえ、それで鳴りが小さくまとまったり、あるいは不自然にだまになっているようには感じられない。

 こうしたサウンドがいかにも映えるのが(ちょっとレトロなバラード「I Wish」やロックバラード「Kidult」を差し置いて!)最終曲の「Together」だ。ふんだんにストリングスやピアノが盛り込まれたイントロは、日本のリスナーとしてはいっときのJ-POPを彷彿とさせる。イントロだけではない。楽曲中これでもかとストリングスがバックを支える。これまでJ-POPで頻出するしつこいストリングスアレンジに対して幾度となく苦言を呈してきた身ではあるが、この曲に対して思わずグッとくる現象にどう説明をつけたものかと思ってしまう。サウンドの細かいケアもさることながら、大所帯グループならではのボーカルの色合いの豊かさや賑やかさも重要かもしれない。

SEVENTEEN「Together」

 こういったサウンドやソングライティングの傾向を持った作品が、グループの勢いに乗ってセールス的に成功していることは興味深い。結構な方向転換にも思えるが、今後どのような展開を見せるのか気になるところだ。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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