Sir Vanity、GRANRODEO、OLDCODEX……声優所属の音楽ユニットが示してきた、新たな時代の可能性

 Sir Vanityで初めてギターに挑戦する中島ヨシキは、以前は絶対にやりたくなかったと、バンドのYouTubeにアップされているラジオ内にて語っている。すでにできる人がいるなら自分がやる必要はない。できないことをして恥を晒すのが嫌。かつてそう思っていたのが、年を重ねるうちに「恥をかける大人になりたい」と変わっていったのだという。梅原が作詞を手がけた「Vanity」には、その思いが組み込まれている。

 〈できないことを晒すのが 恥をかくのが怖いんだ〉と足踏みするBメロから、〈こんな無様な俺を笑ってやってくれよ〉と吹っ切れていくサビまでの流れは、Sir Vanityというバンドの成り立ちそのものに重なっているように感じられる。

 バンド名に冠されている「Vanity」は「うぬぼれ」の意味を持つ。「恥をかきたくない」という思いは、「自分をよく見せたい」といううぬぼれにも通じる感情だ。SNSやYouTubeなどのプラットフォームが充実し、誰もが発信者になれる環境になった。業界の壁や、仕事と趣味との垣根も曖昧になってきている。踏み出しさえすれば、誰もがなんでもできる時代において、いくつもの才能が組み合わさり、「うぬぼれ」を越えて結成されたSir Vanityというバンドは、象徴的な存在となっていくのかもしれない。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。
Twitter(@erio0129

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる