Mr.Children、BTS、The 1975……『サマソニ』の歴史彩る伝説のステージ オンラインフェス開催を機に辿る軌跡

『サマソニ』オンラインフェスを機に辿る軌跡

 また、BTSがサマソニに降臨したのは2015年。日本で通算4枚目となるシングル『FOR YOU』が、海外ヒップホップアーティストとして初のオリコン週間シングルランキング1位を獲得した年である。前年6月に日本デビューを果たし、『第29回日本ゴールドディスク大賞』で新人賞2冠を獲得。日本での、初の単独アリーナツアー『2015 BTS LIVE <花様年華 on stage>~Japan Edition~』を年末に控え、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのパフォーマンスが全編にわたって繰り広げられた。

 今でこそBTSを筆頭に、BLACKPINKやBIGBANGなど韓国のアーティストが世界中を席巻しているが、サマソニはそれよりずっと以前から彼らを積極的にフックアップしてきた。2010年にはBIGBANGが韓国アーティストとして初出演、その翌年には少女時代が韓国の女性アーティストとして初出演を果たす。その後も元2NE1のCLやHYUKOH、THE BOYZらが続いた。そうした積み重ねがあったからこそ、2019年には『コーチェラ』への出演を見事果たしたBLACKPINKとPerfumeの2組を、続けてタイムテーブルに並べるという「離れ業」をも成し遂げることが出来たのだ。

 積み重ねといえば、今年5月に新作『Notes On A Conditional Form』をリリースし、今や若者から最も信頼されるグループの一つとなったThe 1975も、サマソニが長きにわたってサポートし続けてきたバンドだ。本フェス『SUMMER SONIC 2020 ARCHIVE FESTIVAL』では2014年のライブがダイジェストで配信されたが、それ以外にも彼らは2013年、2016年、そして2019年と4回の出演を果たしている。

「「ポップ・フィールド」で戦えるロック・バンドがもっともっと出てきて欲しいし、それを応援してあげたい。そういう意味でThe 1975はその最右翼だと思っていて、実際にそうなりつつあるし、「サマソニ」でもずっと推しているバンドのひとつです。だから、未来あるアーティストを毎年何かしら拾い上げて、「サマソニ」でプッシュしていく。それは我々がやらなきゃいけないことだと思っています」

 音楽フェス情報サイト「Festival Life」のインタビュー(参照)で、清水氏はこのようにも語っていた。国内最高峰のバンドをはじめ、今やワールドスタンダードとなった韓国のグループ、そして世界中のフェスでヘッドライナーを経験してきたアーティストらが、こぞって出演する『SUMMER SONIC』。それは決して一朝一夕で作られたものではなく、長い時間をかけてアーティストやオーディエンスとの信頼を積み重ねてきたからこそ、ここまでのフェスへと成長したのである。

 さて、来たる9月19日から21日には『SUPERSONIC 2020』が開催される。出演アーティストには、昨年のサマソニに引き続きThe 1975が決まっているほか、ポスト・マローンやスクリレックス、リアム・ギャラガーらが名を連ねている。

「緊急事態宣言が解除されても、音楽産業は依然として厳しいままです。さすがに9月にはどこかが動き出さないと、音楽に携わる人たちはやっていけなくなるでしょう。9月にリアルイベントとしての音楽フェスが開催されるとなれば、音楽ファンも音楽関係者もそこを目標にがんばることができます」(清水直樹インタビュー『ダイヤモンド・オンライン』より)

 無事に開催されれば、コロナ後に開催される世界初の音楽フェスとなり、その注目度は高い。実現することを心から願って止まないが、何よりクラスターを発生させないことが次に繋げる上でとても大切だ。主催者によるガイドラインをよく守り、我々オーディエンスもこの『SUPERSONIC 2020』を一緒に成功させるつもりで臨みたい。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。ブログFacebookTwitter

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