イヤホンズ、「耳の中へ!!!」オリジナルバージョンと聴き比べ 大きな変更点と注目すべきポイント

イヤホンズ新録「耳の中へ!!!」原曲と聴き比べ

「ね?」「きゃっ」「ちゅ」

 そうした中で、最も注目すべきポイントは3人それぞれによる1音セリフ「ね?」「きゃっ」「ちゅ」だろう。アイドルポップスでは定番の“萌えゼリフパート”の一種と言えるが、シンガーとしてよりも声優としての力量がダイレクトに問われる、“瞬間的な芝居”と位置付けることができる。

 「ね?」を担当した高橋が原曲内で演じていたキャラクターは、一ノ瀬双葉という比較的地味な女性。「真面目な優等生キャラを演じながら萌えゼリフを言う」という、頓知で対応するほかないような無理難題を振られていたことになる。結果、可能な限り“ぶりっ子”にならないよう細心の注意が払われた中音域の「ね?」が録音され、どういう気持ちで聴くのが正解なのか即座には判断しかねる独特な味わいのトラックとなって世に放たれた。

 しかし新録を聴くと、もはや“正解”としか言いようのない「ね?」が収められている。もちろん「双葉を演じる必要がない」という条件面の違いはあるにせよ、それが些事に過ぎないと思えるほどの圧倒的な“正解”感だ。原曲での「ね?」が少ない手札の中で唯一勝てる虎の子のカードだったとすると、新録の「ね?」はエースだらけの豊富な手札から悠然と選ばれた最強の1枚、くらいの違いが感じられる。

 15歳の女子中学生・小花鈴を演じた高野の「きゃっ」と、ブリブリアイドル声優・萌咲いちごを演じた長久の「ちゅ」については、扮するキャラクターと求められる世界観にさほど乖離がなかったため、高橋パートほどの違和感はなかった。それでも新録における2人の“正解”に触れた後で原曲を聴き直すと、実は完成度が低かったのだという事実に気づかされてしまう。逆説的に大きな進歩を感じ取れる部分であると言えよう。

オルタナ感を醸し出すリハモ

 新アレンジの聴きどころについても触れておこう。とくに注目したいのは、リハーモナイズ(和声の再構築)だ。歌メロ部分は基本的に原曲のままだが、楽曲の世界観を損なわない程度に要所要所で巧妙なリハモが施されている。

 まずはイントロ。シンセによる特徴的なシーケンスフレーズは原曲に忠実ながらも、コード進行が大幅に変更された。原曲ではベースラインが下降していく王道進行を基調とした細かいコードチェンジが繰り返されているが、新録では主に2コードで押し切るシンプルなアレンジを採用。しかし、シンプルながらもオーギュメントと呼ばれる特殊な和音(基本的なドミソ和音のうち、ソを半音上げたもの。不穏な響きが特徴)を挟むことで、原曲とはまったく異なるオルタナティブな風合いを付加している。

 また、間奏〜Dメロ部分にも大々的にメスが入れられた。間奏前半はほぼ原曲を踏襲しているものの、後半部分が異なる。執拗なシンコペーションや代理コードなどによって、オルタナ感のみならず洗練さも上乗せ。とくに秀逸なのがDメロ部分で、比較的オーソドックスに作られていた原曲から一転、格段に特別感のあるフックパートに変貌を遂げている。具体的には、分数コードを利用したペダルノート(持続音)や代理コードを駆使することで、本来音程が跳躍していくはずのベースラインを直線的な下降音階に矯正。凡庸さを排除しつつ、適度なエレガンスといい意味での違和感をまとわせた。

 来月リリースのニューアルバムには新曲のみならず、このように大胆かつ丁寧にリアレンジされた既存曲も収録される。先日ラジオで解禁された多重コーラスアレンジ版「わがままなアレゴリー!!!」をチェック済みのファンも多いことだろう。ユニット5周年を祝うにふさわしい記念碑的な作品だけに、大いに期待して待ちたいところだ。

■リリース情報
「耳の中へ!!!」
配信はこちら

アルバム『Theory of evolution』
発売:2020年7月22日(水)
【初回限定 進化の過程盤(CD+CD)】
価格:¥4,000(税抜)
<CD1>
・わがままなアレゴリー!!!
・チュラタ チュラハ
・耳の中へ!!!
ほか、曲数未定(通常盤同様)

<CD2>
進化の過程CD収録予定
・わがままなアレゴリー
・耳の中へ
ほか、曲数未定

【通常盤(CD)】
価格;¥2,500(税抜)

<CD>
・わがままなアレゴリー!!!
・チュラタ チュラハ
・耳の中へ!!!
ほか、曲数未定

法人別オリジナル特典
・アニメイト : 缶バッジ(56mm)
・楽天ブックス : アクリルキーホルダー
・とらのあな : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・ゲーマーズ : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・Amazon.co.jp : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・HMV(一部店舗除く)/HMV&BOOKS online : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・TOWER RECORDS(オンライン含む/一部店舗除く) : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・玉光堂・バンダレコード/ライオン堂 : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・セブンネット : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・TSUTAYA RECORDS : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
・KING e-shop : L判ブロマイド(サイン&コメント入り)
※特典は先着となり、無くなり次第終了。
※サイン&コメントは直筆でなく複製。

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■関連リンク
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