ZOC 藍染カレンは、たくさんの人の心を焼いていくーー「他者を連れ出したい」と願うアイドルとしての信念

ZOC 藍染カレン、キャラクター分析

 しかし、彼女は確かにアイドルだった。なぜならミスiDの自己紹介PRにおける「あなたにとってのアイドル」という項目に「画面向こうのあの子とわたし」と答えているからだ。「わたし」をアイドルだとしていることで、先に引用した発言との矛盾を覚える向きもあるかもしれないが、これはあくまで「藍染カレンにとってのアイドル」である。彼女以外の存在はそこに含まれず、故に、彼女の孤城に「画面」と「藍染カレン」しか存在していなかったことがひしと伝わってくるのだ。

 冒頭に戻る。「他者を連れ出したい」と願ったことで、藍染カレンの、藍染カレンによる、藍染カレンのためのアイドルは棄却された。ひたすら内に刺さっていたベクトルは外へ向き、枝分かれし、たくさんの人の心を焼いている。彼女は、自らのクオリアをどこまで伝えることが出来るのだろう。私たちは、どこまで彼女の見ている紅を共有出来るのだろう。きっとこれからもその規模は広がってゆく。だって藍染カレンは今、わたしたちにとってのアイドルなのだから。

■清家咲乃
1996年生まれ。青山学院卒。BURRN!編集部を経て現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。ヘヴィミュージックを中心に、ルーツロックからヒップホップまで幅広く好む。『エクストリーム・メタル ディスク・ガイド』などに寄稿。

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