back number、ロックバンドとしての矜持 ライブハウスの熱気のなかで培われたもの

 多くのロックバンドと同じく、back numberもライブハウスで活動をスタート。地元の群馬県伊勢崎市、前橋市のライブハウスで経験を重ね、バンドとしての下地を作ってきた。メジャーデビュー後の2011年〜2012年もライブハウスツアーを開催。2013年9月の日本武道館公演からは横浜アリーナ(2014年)、幕張メッセイベントホール(2015年)とキャパを上げ、2017年には全国アリーナツアー、2018年にはドームツアーを成功させたが、どれだけ会場が大きくなっても、まるでライブハウスで演奏しているような生々しさは失われることはなかった。2018年8月の東京ドーム公演のレポートでも書かせてもらったが、レーザーや映像などドームならではの演出を施しながらも、“stay with you”というツアータイトル通り、観客と向き合う姿勢はあくまでも1対1。

 エンターテインメント性のみに頼ることなく、自分たちの飾らない姿をそのまま見せる(アリーナやドームの公演でも彼らは、自らの弱さや葛藤などを含め、驚くほど率直に話をする)ステージからは、まさに生身のback numberが伝わってきた。そのスタンスは言うまでもなく、ライブハウスの熱気のなかで培われたものであり、今もなおback numberの核になっているのだ。

 昨年3月にリリースされた6thアルバム『MAGIC』に関するインタビューで清水は、「どれだけいい曲を書いていても、表現がよくても、自分たちを削ってることが伝わってこないのはよくない」という趣旨の話をしていた。リアルな自分たちを全身全霊で表現することがロックバンドの矜持であるーーその思いはback numberの根本を支え続けているのだと思う。ライブハウスツアーは中止になったが、「クリスマスソング」「高嶺の花子さん」「わたがし」のパラデータ(楽器ごとの音源)を期間限定で無料公開するなど、新しい試みを続けているback number。彼らの原点であるライブハウスで、その生々しい音楽を体感できる日を心待ちにしていたい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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