ZOC 巫まろ、イノセントでなくてもアイドルになれることを証明したメンバーに 大森靖子に共鳴する“因子”とは?

ZOC 巫まろ、キャラクター分析

 「因子」は他にもある――巫の持つ屈折だ。例えば「シンデレラの生まれ変わり」を自称し続けていることや、初作詞曲「わたし」で歌う肩書きを懐疑的に見る姿勢などが挙げられるのだが、ファンの間で印象深いのはインタビュー動画で本人の口からも語られている、自身の容姿に対する劣等感ではないだろうか。

巫まろ -ZOC Member interview 私がZOCになるまで- episode3

 これは巫が歌いだしを務める「ヒアルロンリーガール」の〈お姫様何人?待って 比べちゃってきりがない〉というフレーズに集約されている。以前の活動の中でも度々口にされてきたこのしこりは、どちらかといえば気丈なキャラクターの彼女をひどく脆く映らせる。それでも時に涙し、時にいじらしいナルシシズムに昇華しながらアイドルを戦い抜いてきた。そんな彼女にとって“女の子はみんながかわいい生き物である”という大森靖子のポリシーは一歩を踏み出すための命綱であり、嵐の夜をともに乗り切る毛布のようなものだったのだろうと思える。多くの女の子にとってそうであるように。一度ふつうの女の子に戻った巫まろは、彼女たちにより寄り添える視点を獲得してステージに戻ってきた。願わくは、このお姫様があたたかなピンクのなかで微睡んでいられますように。彼女の行方に全員刮目だ。

■清家咲乃
1996年生まれ。青山学院卒。BURRN!編集部を経て現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。ヘヴィミュージックを中心に、ルーツロックからヒップホップまで幅広く好む。『エクストリーム・メタル ディスク・ガイド』などに寄稿。

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