『Black Lives Matter』プレイリスト楽曲がチャート浮上 チャイルディッシュ・ガンビーノ「This Is America」などから考察

 ここで今週(6月4日公開)の各国のバイラルチャートを見てみると、同じくプレイリスト『Black Lives Matter』収録の楽曲が多数ランクインしており、「This Is America」はアメリカで45位、イギリスで50位、グローバルチャートでは43位を記録している。特にアメリカでは、ポエトリー調の歌唱で〈革命はテレビに映らない〉と歌った1971年のギル・スコット・ヘロン「The Revolution Will Not Be Televised」が6位に、差別事件の現場を叫びながら訴え、銃を突きつけられたジャケット写真が印象的な2018位のJAG「Kapernick Effect」が7位に、若き日のディアンジェロとブライアン・マックナイトが手がけた1994年のアンセム、B.M.U.「U Will Know - Extended version」が14位に、“黒人としての誇りを高らかに叫べ”と歌って公民権運動の象徴にもなった1968年のジェームス・ブラウン「Say It Loud – I'm Black and I'm Proud」が38位にランクインするなど、戦後のアメリカ史において「Black Lives Matter」に共鳴してきた幅広い年代の楽曲が改めて聴かれている印象だ。対する日本でも、80年代以降高い人気を誇るPublic Enemy「Fight The Power」が23位に、事件後に感動的なスピーチを通してレイシズムの撤廃を訴えたキラー・マイクによる「Don't Die」が24位に入るなど、プレイリストから計9曲がトップ50にランクインしている。

 今週のバイラルチャートから浮かび上がってくるのは、“時代を超えた連帯の意識”が世界中で高まっているということだ。どんなに新型コロナウイルスが未知の脅威であったとはいえ、貧困の割合が高い黒人層から重症化していったり、仕事を失ったりしていくという、人種差別が作り上げてきた構造的な問題の根本は変わっていない。そんな最中に起きた今回の事件は、本当に悲しく辛い出来事だが、現代に生きる我々一人一人が重く受け止め、生き方を律して、自分には何ができるかを改めて考え直す機会にしていかなければならない。

 プレイリスト『Black Lives Matter』はアグレッシブな楽曲が並ぶが、決してそれは攻撃ではなく、「自由と居場所を獲得するために、愛と誇りを持て」と歌い続けてきた偉大なる先人たちの歴史なのだ。それらを教訓にしつつも、自分たちのやり方でどう時代を切り拓くかが問われている2020年だが、『Black Lives Matter』に並ぶ楽曲をシェアするだけでも、自らの意志を表明することができるし、立場が違う人々同士でも音楽を通じたユニティを作ることができる。音楽は常に時代と社会と隣り合わせにあるものだからこそ、本当の意味で人々が立ち上がる時に力になってくれる。それが改めて証明されたような今週のバイラルチャートだった。

『Black Lives Matter』

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