Gottz & MUD、KANDYTOWN発のタッグが押し上げるクルーの表現スケール 「Nice Booty」「Cook Good」を聴いて

 また、ファッションの観点でも、彼らはクルーのなかで目立った存在である。というのは、KANDYTOWNが昨年11月に開催したワンマンライブにおいて、他のメンバーがハイブランドのジャケットなどで着飾っていた一方、Gottzは海外サッカークラブ「インテル・ミラノ」のユニフォーム、MUDはNIKEのトラックスーツで頭にバンダナを巻いていたのだ。まさに一目瞭然で“この2人は何かが別格だ”と、当時の参加者には伝わったに違いない(個人的なMVPは、クルーのキングことYUSHIの姉である紅蘭のグラフィックTシャツを着ていたKIKUMARUだったが)。

 そもそも「KANDYTOWN」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。ラッパーやトラックメイカー、俳優からモデルまで様々な“顔”を持つ彼らだが、そこに集団としての統一感を見出すとすれば、世田谷を拠点に、洒落た音楽センスを持ち合わせる品性。さらにローカルな視点で言えば、渋谷や駒沢を結ぶ国道246号線を、ソウルやブーンバップといった音楽を流しながら、愛車のベンツなどで駆け抜けるビジョンが近いのかもしれない。

 だからこそ、彼らが昨年10月にリリースした2ndアルバム『ADVISORY』にて、トラップビートを主軸に切り替えたことが、多少なりとも賛否両論となったのはあながち納得がいく。そしてその背景にあったのは、2016年11月のメジャー1stアルバム『KANDYTOWN』リリース以降に主軸を置くようになった、メンバー自身による様々な音楽ジャンルのエッセンスを取り入れたソロ活動。それこそ彼らは「ソロ作もKANDY作品だ」という旨をたびたび口にしてきたが、ソロ活動がクルーの音楽に新規性をもたらす点で、GottzやMUDだけがその例外になるはずもないだろう。

 幼馴染や地元の先輩後輩で結成されたKANDYTOWN。彼らが『ADVISORY』などの最新モードで放っているアグレッシブなラップからは、クルーとしての“次の次元”にブレイクスルーしていく気概をまざまざと感じさせられる。その上で、今回のGottzとMUDによる新名義でのリリースは、KANDYTOWNの表現スケールをさらに押し広げていくためには自然な流れだろう。彼らが精力的に開拓する音楽が、クルーが考える今後の活動方針にイコールで直結するわけではないにせよ、ポジティブな方向へと導いてくれるのは間違いないはずだ。

 そうなれば、KANDYTOWNが代表するような世田谷における既存のフッドスター像にも、これまでにないイメージが上書きされることと思われる。GottzとMUDの強力タッグが導く先には、東急線や小田急線をいくら乗り継いでも辿り着けない、今の世田谷の先にある景色が広がっているのかもしれない。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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