『バンドリ!』『ヒプマイ』……性別を超えて盛り上がるキャラクターコンテンツ 声優シーンの行方はどうなる?

“男女混合ありき”ではなく、“作品ファースト”“アーティストファースト”が絶対条件

Argonavis『星がはじまる』

 また、性別によってキャラクターの魅力の立たせ方や、そのためのストーリーの構成にも差異は存在するもの。そういった部分をクリアできずに無理矢理混合させてしまうと、元来の魅力をも消してしまいかねない。なので逆に、作品コンセプトや登場キャラクターをより活かすためあえて切り分けを行なう作品もある。前述した『アルゴナビス from BanG Dream!』もそのひとつであり、「ガールズバンドプロジェクトとは交わらせるつもりはない」と明言されている。

 だからこそ、冒頭で紹介した『ヒプマイ』の新ユニット・中王区は、今後のキャラクタープロジェクトの広がり方を左右する試金石でもあると言えるのではないだろうか。すでに『MAD TRIGGER CREW -Before The 2nd D.R.B-』のドラマトラックにはメンバーのひとり・碧棺合歓(CV:山本希望)が登場し、ラップバトルも披露済。演じる山本自身のラップへの造詣の深さもあり、早くもスタイリッシュなフロウを披露してくれている。9月発売予定のファンブックに収録されるユニットとしての初音源やさらなるストーリー展開、ライブでのパフォーマンスに期待しつつ、作品にどう溶け込んでいくのか見守りたい。

 一方で、そのキャラクターを演じる声優のアーティスト活動についてはどうだろうか。こちらもやはりファン側の性別の“壁”はすでにないに等しく、同性のアイドルからラブコールを送られる女性声優アーティストも多々みられるほどである。

 しかしユニット活動となると、男性のみ・女性のみのものばかり。実は1990年代には、日髙のり子・山寺宏一・関俊彦によるバナナフリッターズ(2016年より活動再開)や、置鮎龍太郎や川上とも子らによるZMAP、小森まなみ・高橋直純によるAsRといった、男女混合で音楽活動を行なう声優ユニットが複数存在していたのだが、近年ではそういったユニットはほぼみられない。

 そんななか、水樹奈々は2018年のシングル『WONDER QUEST EP』にて、“水樹奈々 feat. 宮野真守”として宮野真守とともに歌唱した「結界」を発表。声優アーティストのトップランナー同士が魂の歌声をぶつけ合ったこの曲は話題を呼び、“才能の掛け算”という形で性別を超えたコラボレーションを実現させるという“選択肢”をシーンに与えた。

 もちろんそれもキャラクタープロジェクトと同様に、コラボレートする双方のファンやアニソンリスナーが喜んで受け入れられるものであることが大前提。だが、ファンに歓迎される形での新たな挑戦は次々と生まれていってほしいものである。その結果、従来のキャラクタープロジェクトや声優アーティストのシーンでは想像し得なかったようなイノベーションがもたらされ、さらなる盛り上がりが生まれることを心の底から願ってやまない。

■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。

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