ワルキューレ、NOW ON AIR、Run Girls, Run！……ポジティブなバイブス届ける女性声優ユニットの新作5選

　また、参加クリエイターの面白さという観点から見ても非常に興味深いのが、ももいろクローバーZなどで知られるスターダストプロモーション所属の声優ユニット・サンドリオンによるベストアルバム『SOUND OF BEST』です（リリース延期のため、発売情報は近日発表）。2017年に結成され、現在は黒木ほの香、小峯愛未、小山百代、汐入あすか、成海瑠奈の5人組として活動する彼女たち。これまでにミニアルバムやシングルなどのリリースを重ね、今年3月には活動3周年記念CDの第1弾として『SoundOrion Solo Collection』を発表。小山はミュージカルとアニメを連動させたメディアミックス作品『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』で主人公の愛城華恋役を務め、黒木と成海はアプリゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』にキャストとして参加するなど、各メンバー個人の声優活動を通してユニットの知名度も徐々に上昇しています。

　活動3周年記念CDの第2弾となる今回のベスト盤には、共にヒットメイカーである渡辺翔（作詞／作曲）とMONACAの田中秀和（編曲）の初タッグによる新曲「Familiar base」や、既発曲のリミックスやリアレンジバージョンなど初出となる楽曲を含む全13曲を収録。昨年末のライブで初披露された4s4ki（アサキ）提供による会場限定シングルの収録曲「キラーチューン」が、パソコン音楽クラブのリミックスでアシッドハウス調に生まれ変わっていたり、元カラスは真っ白のやぎぬまかな（作詞／作曲）とシンガーソングライターの辻林美穂（編曲）コンビによる「無重力ランデヴー」をハヤシベトモノリ（Plus-Tech Squeeze Box）が得意のカットアップを駆使した濃縮カートゥーンポップにリミックスしたりと、どこを切っても刺激的なポップサウンドに満ち溢れています。活動初期からの人気曲「がむしゃらリテイク」の辻林によるポスト渋谷系なリアレンジの多幸感も素晴らしく、声優ならではの声の良さを活かした歌を軸に据えつつ、日本産のポップス特有のユニークさが詰まった逸品となっています。

　最後は、内山悠里菜、稗田寧々、守屋亨香、緒方佑奈、鷹村彩花、宮原颯希、飯塚麻結、村上まなつの新人声優8人によるユニット、DIALOGUE+のニューシングル『あたりまえだから』をピックアップします。前回の記事（麻倉もも、DIALOGUE+、諸星すみれ……春らしい華やかなアニメ／声優ソングをピックアップ）でミニアルバム『DREAMY-LOGUE』を紹介したばかりですが、それから約2カ月でリリースされるこの新曲は、DIALOGUE+の音楽プロデュースを手がける田淵智也（UNISON SQUARE GARDEN）が急遽書き下ろしたもの。特にサビの〈当たり前を数えよう あやふやな未来だけど 楽しいことばっかりだ 大丈夫 お話は続くよ 太陽がみんな照らして笑い合うまで〉といったフレーズは、「当たり前」だと思っていた日常が覆されたコロナ禍の状況において、ダイレクトに心に響くメッセージとなっています。

　本楽曲は、『DREAMY-LOGUE』にも「ぼくらは素敵だ」のアレンジで参加していた広川恵一（MONACA）を編曲に迎え、オンラインで制作を進行。DIALOGUE+のメンバーがリモートで歌唱した音源・動画を合わせて、Twitter上で公開するなどしていました。今回のシングルには、そのフルサイズバージョンを新たに制作したものを収録。配信のほか、CDはきゃにめ（ポニーキャニオンのアニメ通販サイト）限定で、6月17日にリリースされます。さらに彼女たちは、6月20日に予定していた1stライブ『ぼくたちのかくめい！』の開催延期を受け、同日に無観客ライブの生配信『ぼくたちのかくめい！オンライン』を実施。こちらは電子チケット販売プラットフォームのZAIKOを用いた有料ライブ配信となります。先日、UNISON SQUARE GARDENも7月15日に有料の生配信ライブを行うことを発表して話題になりましたが、エンターテインメント業界の今後を考える意味では、DIALOGUE+の一連のアクションもまた、意義深い挑戦として注目に値するものではないでしょうか。

■北野　創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ！』『音楽ナタリー』などに寄稿。