嵐 大野智、俳優としての魅力は“役柄への考察力”にあり? 『鍵のかかった部屋特別編』放送を機に考える

 そしてこの“セカムズ”の撮影後、すぐに挑んだ映画『忍びの国』でも役者としての力量を大いに発揮した。『映画 怪物くん』以来、6年ぶりの単独主演映画となった同作で、大野が演じたのは伊賀最強の忍者・無門。ワイヤーアクションや激しい殺陣に加え、人を人とも思わない“虎狼の族”の忍びが最愛の妻を失うことで、人としての大切なことに気が付くという切なさと悲哀を描いた大作である。飄々としながら、戦いの場では高いスペックを見せる最強の忍び“無門”の姿は、バラエティでの穏やかな姿とライブで披露するキレキレのダンスとのギャップを持つ大野とどこか通ずる部分もある。

 大野は芝居に挑む際に「努力しました」「苦労しました」という直接的な表現を口にすることがほとんどない。時間的にも肉体的にもハードな毎日のなかであっても、しっかり準備を整え、高い身体能力と才能、考察力をもって現場で結果を出す。大野が演じるとき、そこに国民的アイドルグループ「嵐」の大野の姿はない。想像をはるかに超えた努力の末に完成した主人公をしなやかに纏った大野は、作品の中で鮮やかに動き出す。「嵐の大野くんの映画を見に来たはずなのに“無門”しかいなかった」と感じる人が多いのはそういった理由なのかもしれない。今回再放送となる『鍵のかかった部屋特別編』も、観る人はいつしかミステリアスな影を持つ榎本径の謎解きに引き込まれているはずだ。懐かしく観返す人も、初めて観るひとも楽しめる内容である。今回の再放送はもちろん、大野の高い演技力が存分に堪能できる他作品の再放送も心待ちにしたい。

■北村由起
ライター・エディター。出版社勤務、情報誌編集長を経てフリーに。情報誌、webマガジン、ムック等を中心に執筆。ジャニーズウオッチャー。

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