世界初の“オンラインジャズフェス”が伝えた音楽の豊かさと奥深さ 『JAZZ AUDITORIA ONLINE』を観て

Larry Carlton

 この後は、レジェンド級のアーティストが続々と登場。70年代から世界のフュージョンシーンを牽引し続けるギタリストLarry Carlton、ラテンジャズを代表するピアニストMichel Camilo、Fourplayでの活動でも知られる巨匠Bob James。“伝説”と称すべきミュージシャンばかりだが、今なお深みを増している演奏に強く心を揺さぶられた。特に印象的だったのは、Joyce Moreno。デビュー55年以上のキャリアを持つブラジリアンミュージックの女王は、ゆったりとリラックスした雰囲気のなか、ギターと歌だけで“ブラジル音楽の神髄”と呼ぶべきパフォーマンスを届けてくれた。後半に登場した夫・Tutty Moreno(Dr)とのセッションも最高。ラテン特有のグルーヴ、洗練されたコード構成、軽やかで豊かな歌をたっぷり味わえた30分だった。

Joyce Moreno

 深夜には須永辰緒、沖野修也(Kyoto Jazz Massive)などが“クラブミュージックとしてのジャズ”を選曲したDJタイムへ。また「2020#JazzDayAtHome Virtual Global Concert」では、Aretha Franklin、John McLaughlin、Marcus Miller、黒田卓也、Cecile Mclorin Salvant、Charlie Puthらの貴重なライブ映像を追体験できた。

 イベントの最後を飾ったのは、Chick Corea。1960年代後半から50年以上に渡って世界のジャズの潮流を生み出し続けているChickの演奏によって、この記念すべきイベントは幕を閉じた。

 レジェンド級から新進気鋭まで、ジャンル、年齢、国境を越えたアーティストたちが素晴らしい演奏を聴かせてくれた『JAZZ AUDITORIA ONLINE』。音楽の豊かさ、奥深さを実感できるとともに、“出来るだけ早く、この人たちの演奏を生で聴きたい”という気持ちがさらに強まる、きわめて意義深いイベントだったと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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