Age Factory 清水エイスケが語る、『EVERYNIGHT』の静かな熱量 原風景を通して描いた“新しい世代”のクリエイティビティ

Age Factory“静かな熱量”の感覚

「マジで新しいこと、自分たち独自のことをやりたい」

一一今語ってくれたことって、明確な歌詞にはなってないですよね。「CLOSE EYE」にあるように〈僕らはどうしたい〉と疑問形で語られる。

清水:うん。何かできそうで、できる気がするんだけど、やっぱ全然何もできないじゃないですか。何か作れそうだけど作るのってすげぇ難しい。ただ、俺らは絶対何かしたいんですよ。それがこの一節になってます。絶対になんかしたい。その生々しいエネルギーだけ感じさせたい。「CLOSE EYE」は無意味で軽い言葉ばっかり並べてるから、このワンフレーズがフックになると思って。

Age Factory "CLOSE EYE" (Official Music Video)

一一ちょっとゾクッとしますよ。ここに感応できる人たちが、エイスケくんの言う「新しい世代」なのかなとも思う。

清水:そうっすね。「なんか1から生み出そう、って自分で言える勇気とエネルギーある奴おんのか?」って感じですよ。そこに呼応がなさすぎる。マジで俺は新しいことやりたい。自分たち独自のこと。ほとんどのバンド、絶対そんなこと言わないじゃないですか。

一一いや、ほとんどのリスナーだって考えてないでしょう。〈僕らはどうしたい〉って歌ったところで「えー、答えないんですか?」みたいな話になると思う。そこで自分の頭で考えられるかどうか。

清水:ほんまそうですよね。「なんかできそう!」みたいな感覚になれる瞬間ってあるじゃないですか。それってただの虚勢ではあると思うけど、ただ、その瞬間に生まれる可能性みたいなものを粗末にしないで欲しい。それは俺らの世代に対しての言葉でもあるんですよね。

一一そこから「Kill Me」。最初に「You」じゃなくて「Me」だったと言いましたけど、攻撃の対象はあくまで内側にある。

清水:うん。家からスタジオに行く時、電車に乗るんですけど、奈良の電車の空気ってほんま終わってるんですよ。もう、無。誰も何も考えてない。その中で俺ひとりでイヤホンつけて、バンドのオケ聴きながら「これ聴く奴ら、どうやってブチ抜いたろうか」とか考えてる。そんな自分のことがむちゃくちゃしょうもなく思えてきて(笑)。「俺ほんまちっぽけやなぁ!」みたいな。ここまでちっぽけやと思わされるならもう殺してほしいと思った。それぐらいつまんないなここ、って、初めてそういう感覚になったんですよ。今までは「殺したろ」くらいの攻撃的な歌詞でしたけど、もう「俺がここから飛び立つ」っていう感覚になって。それは「Kill You」じゃなくて「Kill Me」やった。俺たぶんここから居なくなる、申し訳ないけど俺は違うところに行くよ、みたいな。

一一既存の何かとは完全に違う場所に行くっていう、さっきの話と通じますよね。あと、この曲の冒頭、〈延々と続けた 退屈しのぎが/終わらないや〉というのはバンド活動のことでもあるよね?

清水:そうっすね。これ正直、バンド界アンチソングでもあるんですよ。「みんな同じようなメンツ呼んで、マジいつまでやってんねん!」って。

Age Factory "Kill Me" (Official Audio)

一一いや、君らも今、そういうところに混じってない?

清水:そう、そこに俺らも入っちゃってるからアレなんですけど。

一一その苛立ちというのかな。バンドであることの根幹を疑ってたり、ロックバンドのスタイルを問い直すような感覚を、中盤に強く感じるんですよね。「Easy」のビート感覚も新しかったし。

清水:これはもうリスペクト・THE MAD CAPSULE MARKETS。でもそうですよね。この曲、ライブでクリックだけブーッと鳴らして俺がピンボーカルでもイケる曲だし、ベースとドラムだけ鳴らしてもいいし。その感覚も俺たちにとってはすげぇ新しい。ヒップホップ畑の人が見ても納得できるやろうし。そういうことを積極的にやれるバンド、最近身近にいっぱいいるから。

Age Factory "Easy" (Official Audio)

一一だから、ギターが好きになった原風景が入っていると同時に、ただバンドでギター鳴らしてりゃいいのか、普通のエイトビートで満足できるのか、みたいな問題提起もあるんじゃないかと。

清水:そうですね、まさに。だいたいギター、ベース、声、ドラムだけで曲作る必要ないですからね。ただ、Age Factoryが最初から持ってるアイデンティティのひとつがスリーピースっていう形態で。バンドとしての究極形態、最小の形でどんだけのことができるか。そのテーマは変えたくないんですね。で、最近は友達とYouTubeディグってるんですけど、だいたいヒップホップしか聴いてないんですよ。でも1回「逆にFinch聴くか!」みたいになって。それでFinch聴いたら、バンドのサウンドがとんでもなくカッコいいって改めて感じちゃって。そこも今回の原風景に繋がってますね。「次はAge Factoryにしか出せないエモを出そう!」っていうのはありました。

「カオスの中でも唯一みんなが抱けるものを共有したい」

一一ギラついた『GOLD』と原風景や内省のある『EVERYNIGHT』は、対になってますよね。次に行くためにも2枚必要だったんだろうなって。

清水:そうです。第1章、第2章みたいな感じで。第1章から考えてもすげぇ進化できたと思うんです。やっぱ『GOLD』作り終えて次を考えたら、もっかい『GOLD』みたいなアルバム作ろうとは思わなかったですね。

一一だから、アルバムの後半もわかりやすくは突き抜けない。さらなる郷愁や喪失感があって、ラストが「nothing anymore」なのも印象的。

清水:はい。これ、バラードじゃなくてアンセムやと思ってるんですよ。みんなで歌う曲やし、みんなの曲でもあるから。

一一ゴールは最後まで提示されないですよね。〈この日々の出口は〉っていう一言で途切れてしまうのは、切なくなります。未来があるのか、ないのか。

清水:俺にもわかんないっす......わかってる人、いるんですかね? っていうくらい今の世の中カオスじゃないですか。じゃあ俺は、そこで無理にゴールを見出すんじゃなくて、カオスの中でも唯一みんなが抱けるものを共有したいと思う。それが寂しさや儚さだったし、共有できた瞬間には本当にエモーショナルなものが見えるんじゃないかと思ってる。Cメロ展開のところで俺の個人的な思い出を羅列してますけど、ここでひとつの景色、匂いとか体温を感じない人はいないだろうし。その感覚こそ、俺たちの世代で唯一感じ合えるリアルやと思うんですね。エネルギーを生み出せる理由になるっていうか。

Age Factory "nothing anymore" (Official Music Video)

一一なぜ、唯一のリアルがノスタルジーなんでしょう。

清水:たぶん、周りに感じれるものが少ないんやと思います。ライブってそういう意味ではほんま特別で。ロックバンドのライブってすげぇエネルギーがあって。それを全員がアンセムとして歌うって、凄い景色ですよね。

一一それくらい解放できる瞬間がない? 「Peace」の中に〈何かに繋がれてる〉とありますけど、この感覚はエイスケくんにもあるんですか。

清水:ありますね。なんか……「なんでこいつらはこんなに上手いこと行ってんねやろ?」みたいな感覚に近い。嫉妬してしまう自分へのコンプレックスというか。誰かと比べてしまうし、誰とも比べられてしまうから。なんかに繋がれてるなぁって思う。歌詞は俺たちの世代が選ぶ言葉、見てる感覚をリアルに入れたいなと思ったんですよね。瞬間的に選んだワードですけど、でき上がった後に自分で歌詞見てびっくりする曲が多かった。

Age Factory "Peace" (Official Audio)

一一あぁ、歌詞は確かに今回が一番深いんだと思う。ごめんなさい、最初に物足りなかったって言ったけど、それに対しては何かあります?

清水:んー、物足りなかったら、物足りてた時の作品聴けばいいんじゃね? って。俺はずっと俺であり続けてるだけで、アルバムはバンドのその瞬間パッケージであり、歴史の連なりであるわけで。ひとつ前の盤を好むならそれを聴き続ければいい。俺だってそんなバンドいっぱいあるし。ただ、それを踏まえた上で『EVERYNIGHT』が理解できないってこと、俺はないと思いますよ。「1ミリも理解できんわ」って言われたら正直話すことは何もないけど(笑)、ちょっと物足りないって感覚なら、俺としては「今作はそうやったかもしれないですね、次回お会いしましょう」って感じです。

一一えぇ。でも今日の話を聞いてすごく腑に落ちました。攻撃だけがAge Factoryじゃないし、言葉を味わいながら何度も聴けるのはこのアルバム。

清水:そうですね。一番素直やと思うし、俺的にはこれもオフェンスやし。あとは、アートワークとかミュージックビデオも含めて、自分たちのオリジナリティをどんどん高めていくだけ。それが今したいことやし、この時代に生まれてきたロックバンドが目指すべきことやなと思ってますね。

Age Factory『EVERYNIGHT』

■リリース情報
Age Factory『EVERYNIGHT』
4月29日(水)発売 ¥2,500(税別)
※Tシャツ付初回限定盤【M/XLサイズ】は¥3,800(税別)

<収録曲>
1. Dance all night my friends
2. HIGH WAY BEACH
3. Merry go round
4. Peace
5. CLOSE EYE
6. Kill Me
7. Easy
8. Everynight
9. 1994
10. nothing anymore

<Tシャツ付初回限定盤>
・Tシャツ付【Mサイズ】初回限定盤
Tシャツサイズ:着丈74cm/身幅51cm/裄丈45cm
価格:3,800円(税別)

・Tシャツ付【XLサイズ】初回限定盤
Tシャツサイズ:着丈79cm/身幅61cm/裄丈53cm
価格:3,800円(税別)
※ 初回限定盤は数量限定

■ツアー情報
『Age Factory “EVERYNIGHT” RELEASE TOUR』
6月2日(火)千葉LOOK w / SPARK!!SOUND!!SHOW!!
6月3日(水)高崎club FLEEZ w / SPARK!!SOUND!!SHOW!!
6月8日(月)松本ALECX w / SPARK!!SOUND!!SHOW!!
6月14日(日)徳島club GRINDHOUSE w / w.o.d.
6月15日(月)岡山CRAZYMAMA KINGDOM w / w.o.d.
6月18日(木)福岡CB w / ENTH
6月19日(金)広島Live space Reed w / ENTH
6月26日(金)水戸LIGHT HOUSE w / TENDOUJI
6月29日(月)横浜F.A.D w / TENDOUJI
7月2日(木)名古屋CLUB UPSET w / TBA
7月7日(火)金沢vanvanV4 w / TBA
7月8日(水)新潟CLUB RIVERST w / TBA
7月11日(土)札幌KLUB COUNTER ACTION w / TBA
7月16日(木)高知 X-pt. w / TBA
7月17日(金)高松DIME w / TBA
7月21日(火)郡山 CLUB #9 w / TBA
7月22日(水)仙台MACANA w / TBA
7月24日(金)盛岡CLUB CHANGE WAVE w / TBA
7月25日(土)酒田hope w / TBA
8月1日(土)奈良EVANS CASTLE HALL w / TBA

※7月以降の公演の公演対バンは後日発表
※新型コロナウイルス感染拡大状況に応じて、ツアー日程が変動する際には随時オフィシャルHPでお知らせ

■7インチリリース情報
Age Factory『CLOSE EYE / HIGH WAY BEACH / nothing anymore』
4月22日(水)発売
価格:¥1,500(税抜)
Label:FLAKE SOUNDS

<収録曲>
A-Side
1.CLOSE EYE
2.HIGH WAY BEACH
B-Side
1.nothing anymore

■関連リンク
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