Ryu☆×プロゲーマー DOLCE.が語り合う、それぞれの20年と音楽ゲームの広がり 『beatmania』ならではの面白さも

Ryu☆×プロゲーマーDOLCE.対談

DOLCE.「(Ryu☆さんは)“ゲームを盛り上げるのが上手だな”と思います」

――音ゲーの場合、いい曲であることはもちろんのこと、プレイして楽しいことなど、様々な要素を考えると思うのですが、Ryu☆さんの場合はどんなことを意識していますか?

Ryu☆:自分の場合は、キャッチーなメロディがあって、そのうえで、「何か発明があるといいな」と思っていますね。「これは聴いたことないな」と思ってくれるような、右斜め上の発想でありつつも、「いいね」と思ってもらえるものを考えていくというか。

DOLCE.:実際、Ryu☆さんの曲は、楽曲もそうですし、新たな譜面のバリエーションを開拓している曲が多い印象です。「Go Beyond!!」や「3y3s」など、当時ではなかなか無いタイプの譜面が多かったのかな、という印象で。今挙げた2曲は、難易度的にも楽曲的にも衝撃を受けました。

――『starmine 2020 : Mare Nectaris』をまとめる際にも、考えていたことはありますか?

Ryu☆:今回は「starmine」から20周年ということで、基本的には「starmine」の新バージョンを中心に考えたんですけど、アルバムとしては、自分がこれまで内包していた「ひとり『Dancemania』」、つまり「ひとりでつくるダンスコンピレーション」という裏テーマを「2020年にやるなら」と考えていきました。今回のアルバムはBPMの幅もあると思いますし、1曲1曲がそれぞれ強烈なものになるようにもしたいと思っていました。そのうえで、どの曲も「今に合わせる」ことを意識しています。最近、Spotifyのようなストリーミングサービスで音楽を聴く人が増えていますが、そこでのトレンドとして、1曲の長さが短くなっていますよね。これはkors kともよく話すんですけど、「世の中が音ゲーみたいになってきたぞ」と(笑)。僕も今回、できるだけ無駄な要素を省いて、濃いものを届けたいと思っていました。ロングミックスなので3分ありますが、濃い3分にできたらな、と。

――「starmine」の頃と比べると、やはりRyu☆さんの音楽性の幅も広がっていますよね。

Ryu☆:特に最近はそうで、『beatmania』への楽曲提供をはじめて僕も20年になるので、コナミさんからのディレクションにも幅が出てきているんです。「平出し曲」と呼ばれる、新しいバージョンの最初からある曲の場合は、最近は自分が得意なキャッチーな四つ打ちではない曲を求められたりします。それがあって、振れ幅も出てきたのかな、と思います。

 
DOLCE.:確かに、Ryu☆さんは最近特に多ジャンルな印象です。

Ryu☆:たとえば、今回のアルバムの5曲目「O/D*20」の場合は、「テクノをつくってほしい」というオーダーで。Beatportでテクノチャートの楽曲を聴いて、その魅力を分析するところからはじめていきました。

DOLCE.:そこから、「OVERDOSER」(『beatmania』にテクノが加わるきっかけになった楽曲)をインスピレーション源にした曲になったんですね。

Ryu☆:「O/D*20」を作った当時の『beatmania』は、5鍵盤から20年だったんですね。僕は5鍵の初日から『beatmania』をプレイしてきたので、何かできないかと思って。それで、ユーザー目線で「テクノで20周年……」と考えたときに、「『OVERDOSER』じゃん!」と思いついて。それをアレンジ的に入れたところ、みなさんにも喜んでいただいて嬉しかったですね。特に尊敬しているHiroshi Watanabeさんの「OVERDOSER(DrivingDubMix)」のパーツを大量に入れてつくるというのは、とても楽しい経験でした。

DOLCE.:あとは、僕は今回のアルバムの中だと、「Beautiful Harmony」も印象的でした。この曲はたぶん、Ryu☆さんの中でも「Harmony and Lovely」の系譜にある曲なのかな、と思っていて。

Ryu☆:そうそう。そうですね。

DOLCE.:『beatmania IIDX 27 HEROIC VERSE』にショートバージョンで入っていた曲ですけど、アルバムの中ではBPMが遅めで、通して聴いた時のアクセントにもなっていて、「いいなぁ」と改めて思いました。

Ryu☆:ジャンル的にはプログレッシブハウスというよりは、だいぶトランス寄りのものになっていますが。プログレッシブハウスは自分としては、一番好きなジャンルなんです。ただ、『beatmania』的には難しいジャンルでもあって……DOLCE.くんに喜んでもらえたなら、作って本当によかった。

DOLCE.:(笑)。ゲーム的にも、「Harmony and Lovely」の譜面を思わせるところがあって、曲の緩急が譜面にも表れている曲にもなっていますよね。ブレイク明けで盛り上がって譜面が難しくなって、後は16分で気持ちよく叩けるので、僕としてもかなり好きな曲です。

Ryu☆:あと、(「starmine」とともに今回のもうひとつのタイトル曲になっている)「Mare Nectaris」は、DOLCE.くんはどうでしたか?(笑)。

DOLCE.:まず、この曲は、第一印象ではRyu☆さんの曲じゃないと思っていたんです。

――「Mare Nectaris」は神楽名義での楽曲で、今回アルバムの情報解禁に際して正体が明かされたので、それまでは「誰なんだろう?」と様々な予測が繰り広げられていましたね。

DOLCE.:なので、僕もアルバムの告知があったときに「Ryu☆さんなんだ?!」と驚いたんですよ。でも、そう言われてみれば「そうかも」と思える要素もあって、そこで初めて納得しました。そういう隠し方、発表の仕方も含めて、「ゲームを盛り上げるのが上手だな」と思います。

Ryu☆:ヒット曲の要素のひとつに「ミステリアスである」というのがあると思いますけど、この曲は大ボス曲ですし、これまでの歴代の大ボス曲も変名義が多かったので。この曲はそんな雰囲気でありつつ、今までにない新しさを加えようと思っていました。そこで名義を隠して、BPM256の32分という枠を決めて。できるだけ「ビックリしてもらおう」と楽曲を構成しました。『IIDX』の場合、「冥」がずっと大ボス曲として君臨していて、なかなかそれを超えられない状況だったので、ひとつ風穴を開けられたらいいな、と思っていたんです。「冥」を超えようと思っていたわけではないですけど、別のベクトルで「何だこれ?!」というものができたらいいな、と。ゲームをやってくれる人にとっても、譜面を作る人にとっても、もうひとつアクセルを踏める曲にしたいと思っていたんですよ。

DOLCE.:確かに、ここまでぶっ飛んだ、とがったものは、今までなかなかなかったかもしれないですね。僕自身、「Mare Nectaris」が出たときは、もうブチぎれちゃいそうなほど難しい譜面が来た印象で……(笑)。でも、改めて考えてみると、それが空気を入れ替える魅力になっていたと思いますし、実際にプレイする人も多かったですよね。

Ryu☆:今までの大ボス曲もそうだと思うんですけど、どんなに難しい曲が出ても、DOLCE.くんのようなスーパープレイヤーの人たちが、絶対にそれを乗り越えてくれるんです。しかも、「人って面白いな」と思うんですけど、ひとりが乗り越えると、それに続いて次々に乗り越えるようになっていくというか。そういう意味では、「Mare Nectaris」のときも安心していました。最初は「何だこれ?!」と思ったとしても、1日~2日ぐらいで誰かクリアしてくれる人が現われて、そこにみんなが続いてくれるんじゃないか、と思っていました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる