神宿、“楽曲視点”で振り返る5年間の成長 デビュー曲「KMYD」から新曲「在ルモノシラズ」に至る音楽性の拡大

神宿、楽曲視点で成長を分析

 そして、神宿の“今”がぎっしり詰め込まれた『kamiyado complete best 2018-2019』では、『kamiyado complete best 2014-2015』や『kamiyado complete best 2016-2017』とは異なる領域にまで到達。BPMをグッと抑え一気におしゃれさが増したクラブライクな4つ打ちナンバー「ボクハプラチナ」を筆頭に、ストレートなロックナンバー「はじまりの合図」、ラップ調ボーカルを前面に打ち出した「全身全霊ラプソディ」、軽やかなポップソング「好きといわせてもらってもいいですか?」など、従来の王道アイドル路線を残しつつも表現の幅をさらに拡大させることに成功している。

 そういった楽曲群を手がけるのが、これまでさまざまな形でアイドルシーンを盛り上げてきた人気作家たちだ。でんぱ組.incやゆるめるモ!、クマリデパートなど数多くのアイドルへ楽曲提供してきたWiennersの玉屋2060%は、「はじまりの合図」「CONVERSATION FANCY」「春風Ambitious」「お控えなすって神宿でござる」「それから」を書き下ろし。TEAM SHACHIや虹のコンキスタドールなどで知られる浅野尚志は「全身全霊ラプソディ」を、乃木坂46や22/7の楽曲制作に携わった経験を持つ田上陽一は「タフ♡ラブ」をそれぞれ提供。さらに、かの清 竜人も「グリズリーに襲われたら♡」でその奇才ぶりを遺憾なく発揮している。

 この時期になると、メンバーの歌唱力/表現力も非常に安定し、「それから」のような歌を聴かせることに主軸を置いた楽曲や、「ボクハプラチナ」で聴かせる声に表情を付ける歌い方など、初期には見られなかったカラーも至るところから感じられる。また、全メンバーが20代に突入したことも、こういった表現の変化や音楽性の拡大に少なからず影響を与えているのだろう。と同時に、アイドルシーンで表現される音楽性も5年前と比べて、さらに拡散方向へと進んでいることもあり、こういったシーンの動向も神宿の音楽性の変化に作用していると思われる。

 そういった状況を踏まえて最新ナンバー「在ルモノシラズ」を聴くと、この大人びたサウンドへのシフトは必然と言える。新境地を開拓した「ボクハプラチナ」で得た手応えが確実に反映された「在ルモノシラズ」では、メンバーの塩見きらが作詞に参加したことでも話題となっているが、メンバーの生の言葉を交えることで歌に込める思いもより強くなるのではないだろうか。

 塩見の加入でグループ第2章に突入した神宿だが、音楽面でも昨年から今年にかけての成熟ぶりで本格的な第2章がスタートしたように思う。果たしてこの先、どんな楽曲で、どんなサウンドで、そしてどんな歌で我々を魅了してくれるのか、今から楽しみでならない。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■リリース情報

神宿 New Single「在ルモノシラズ」
2020年4月16日(木)配信リリース
配信はこちら
ティザー映像

OTOTOY 
ハイレゾ(24bit/48kHz)
ロスレス(16bit/44.1kHz)

■関連リンク
Official web site
YouTube Channel
Official Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる