東京事変、JUJU……エッジの効いたポップネス×優れた表現力によるケミストリー 新譜5作をピックアップ

the peggies『アネモネEP』(通常盤)

 大切な人との別れを経験した女の子の、“君”がいない日常をリリカルに綴った表題曲「アネモネ」がとにかく素晴らしい。特にグッときたのは、〈「ねぇ昨日面白い映画を見てさ」 君に電話しようとして手を止めた〉というライン。具体的なエピソードを使い、誰もが共感できる喪失感を描き出すこの一節は、ソングライターとしての北澤ゆうほのポテンシャルの高さを改めて証明していると思う。生々しいバンドサウンドとクラシカルなストリングスを融合させた島田昌典のアレンジも絶品だ。その他、ソウルフルなグルーヴとエレポップ的なキラメキを併せ持った「weekend」、自分自身を信じて生きていくことに対する葛藤をストレートに歌った「いきてる -弾き語り-」など、生命力と愛に溢れた楽曲を収録。

the peggies 『アネモネ』Music Video
ナナヲアカリ『マンガみたいな恋人がほしい』(通常盤「冴えない主人公が現実にいたら普通に友達になりたい」盤)

 ニコニコ動画にオリジナル楽曲のMVを投稿し、瞬く間に注目を集めた“ネットカルチャー発の女性シンガー”ナナヲアカリが、初めてラブソングをテーマに据えたミニアルバム『マンガみたいな恋人がほしい』。歌い手のSouをフィーチャーしたカラフル&アッパーな「チューリングラブ feat.Sou」、DECO*27が作詞作曲、TeddyLoidが編曲を手がけたエレクトロポップ「もしも信者」など、鋭利な音楽性と“生まれながらのポップネス”と呼ぶべきボーカルの特徴が絶妙なバランスで融合している。〈大好きが欲しかった〉というフレーズを響かせるロックチューン「MISFIT」、離れ離れになった“あなた”への切ない思いを綴った「note:」は、彼女自身が作詞・作曲を担当。ソングライターとしての成長ぶりも実感できる。

チューリングラブ feat.Sou / ナナヲアカリ

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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