ギタリスト 西田修大が明かす、中村佳穂や君島大空との邂逅 そして今後の展望も

西田修大ロングインタビュー【後編】

「自分が新しいと思えるものを作りたい」

――今ってDTMで音楽を作る人が増えて、それこそギターを使わなくても、いろんな音色やフレーズを作れるわけじゃないですか。そういう時代における、ギターをはじめとした楽器の役割、可能性みたいなことについてはどうお考えですか?

西田:すごくいろんな側面があって、制作の話においては、例えば高品位なサンプル音源に前よりアクセスしやすくなって、前だったら「どうやって作ったの?」ってクオリティのものも作れるようになってますよね。でも、そういう中に自分で演奏した生の楽器が入ってないと、奥行きって出づらいと思うんです。きれいに加工された音と、加工されてない、録ったままの音を組み合わせたときに、初めて見える奥行きがある。そういうことは生の楽器だからこそ達成しやすいと思うんですよね。

――たしかに。

西田:あとは、「右から2番目のネジだけ45度緩めると音が変わる」みたいな話ってあって(笑)。「録音ブースに水晶玉を置くとちょっとノイズが減ります」とか、「何なんそれ?」って話なんですけど(笑)、でも本人が「そうだ!」って思ってるのって、結構大事だなって。プレイしてる人が「今こんな最高のものができてる」ってテンションになることで、内容って変わるから、楽器自体にそう思わせる力があると思う。前はそういうことにちょっと懐疑的だったけど、でもテンションと音楽はめちゃくちゃ連動するから、生の楽器を使う一番の意味って、そこだったりするのかなって。

――では最後に、今後の音楽活動の展望についてお伺いしたいです。

西田:ここまで名前が出た友達と実際に言葉にして話したわけじゃないんですけど、彼らとは大きな約束みたいなものだけあると思ってて。「想像つく限りこのまま一緒に音楽をやっていきたいけど、でも違う方向を向いたときはしっかりそれぞれの道を」みたいな、ホントにでっかい約束だけあって、それってすごく自然に感じるし幸せなことで。「死ぬまで一緒にやろう」とかもないし、逆に「ちょっとでもミスったらやめてもらいます」とかももちろんない(笑)。でかい信頼関係だけあって、観てくれてる人ともそんな感じな気がするんです。具体的にやりとりをしたわけじゃないけど、何となく「面白いものを見せてくれる」と思ってくれてると思う。そういう人たちに対して何か応えたいというか、自分なりの返事を出したいと思っていて……なので、いまは自分の作品を作ろうと思ってます。

――そう、そこをどう考えているかを最後に聞きたかったんです。

西田:「自分の内から湧きあがる衝動を形にしたい」みたいなのは思いつけなくて、さっきも言った通り、大好きなやつらと大好きな音楽をやってるのが最高の喜びだから、「自分を出せてない」みたいなことも全然思ったことなくて。だから、「俺がソロを作るモチベーションって何なんだ?」ってことは何年も思ってたんですよね。でも今って周りから「自分は今こんなことを考えてる」っていうのを受け取ってるばかりで、俺はそれに返事ができてない感覚があるから、それをホント手紙みたいに渡したいと思ったんです。それは見てくれてる人たちに対してもそうですし。

――なるほど。

西田:あとは、自分がこれからも音楽を続けていく中で、そのときどんなことを思っていたか、振り返れるものがあったら面白いなって。これもエゴイスティックな考え方ですけど、これまで自分が関わってきた作品って、自分の作品だとも思ってる部分があるんです。自分の手柄とは思えないけど、誇りにはできる。でも、完全に自分のジャッジしかない状態でものを作ったことが俺はまだないんで、そういうことをやりたいっていうのは、いまの大きなモチベーションですね。今日名前が出たような友達からは「自分の作品出さないの?」って、必ず言われたことがあるんですよ。あいつらにそう言ってもらえるのはすごく嬉しいけど、「うーん」っていうのがずっとあって、でもそろそろだなって、今は思ってます。

――ソロ作品のヒントになるかどうかはわからないけど、ネルス・クライン以降のヒーロー、今自分が理想だと思うギタリストって、誰か名前挙がりますか?

西田:憧れる人はたくさんいるんですけど、理想となると難しくて。何ならそれが去年の年末くらいからの自分の悩みであり、最近の目標でもあるというか。ちょっと話ずれますけど、去年は結構夢が叶った年だったんです。例えば吉田ヨウヘイgroupでルーキーに出たとき以来、5年ぶりにフジロックに出たこと。しかも佳穂BANDでフィールドオブヘブン、君島とルーキー、あと角さん(角銅真実)と木道亭にも出て、駿と出会った頃によく「フジに3バンドくらい出て暴れようぜ」みたいに言ってたことが叶った。みんなが夢の舞台まで連れて行ってくれたんです。もちろん、その先にも夢は広がって、フジで言えばホワイト、グリーン……さらには世界!とかあるんですけど、ちょっと想像するものが延長になってきちゃってた。そうなったときに、今の自分の目標設定として、自分が新しいと思えるものを作りたいと思うようになったんです。

――これまではギターヒーローに憧れてきたけど、「誰かのような」じゃなくて、自分なりの新しいものを作りたいと。

西田:自分が常にワクワクできるっていう基準における「新しさ」ですね。自分が本気でそう思えたら、そう思ってくれる人はいるはずだって、そこは信じてやるしかないなって。前は「俺は新しいものを作る」とかって、「何舐めたこと言ってんの?俺!」って感じだったけど(笑)、でも今はホントに、そういう気持ちが自分のモチベーションになってますね。

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