DPR LIVE、Sik-K、Swings……“年間ベスト級”の韓国ヒップホップ新作アルバム5選

BLNK『FLAME』

BLNK『FLAME』

 2013年の登場以降、着実に作品リリースを重ねてきたクルー・legit goonsは5年間で韓国ヒップホップシーンで自身だけの領域を黙々と開拓してきた。余裕溢れるムードとハングリー精神の格好良さを感じさせるラッパーたちの個性的なキャラクター、自主制作されるプロダクションからビデオ、グッズなどの高いクオリティが全般的にクルーのカラーを明確にしてきた。実際にlegit goonsは、韓国ヒップホップアワーズで「今年のヒップホップアルバム」に選ばれた『Junk Drunk Love』を含めて4年間で3枚のコンピレーションアルバムをリリースし、クルーとしての活動を活発に広げてきた。また、メンバーのBassagongは韓国大衆音楽賞を受賞し、Code Kunstは<AOMG>と契約して、新メンバーのJaeDalは3枚のEPをリリースするなどそれぞれもキャリアを展開させたが、2012年にクルーを立ち上げた張本人のBLNKは5年間アルバムリリースが全くなかった。いよいよリリースされたBLNKの2ndアルバム『FLAME』のプロダクションはジャズ、ブルース、ファンクをも合わせたローファイなテクスチャーで、legit goonsのムードをつなげるような愉快で余裕溢れるバイブスを与える。それに、BLNKはユニークなボイストーンを生かして自在にラップスキルを披露する。アルバムの前半ではBLNKが抱える悩みと人生の屈曲と問題を率直に告白し、後半には問題を克服する方法を試していく様が描かれる。BLNKが今の率直な姿を描いた素晴らしい2ndアルバムだ。

BLNK - Love is (Prod. Hukky shibaseki) MV

 Don Malik『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』

Don Malik『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』

 Don Malikはブームバップをルーツとする若いラッパーである。彼は2014年にミックステープ『Hashtag[#]』でシーンに登場した。また、2015年に韓国ブームバップの代表格でもあるベテランプロデューサー・Mild BeatsとのコラボEP『탯줄(へその緒)』をリリースし、2016年に新鋭プロデューサー・KimaとのコラボEP『Tribeast』をリリースした。メインストリームの流行には全く捉われない彼の音楽色は確かなものだった。2019年にJUSTHISとIllinitのクルー・DOPPELGÄNGEMに合流して活動を再開した彼は、今年念願の1stフルアルバム『仙人掌花: MALIK THE CACTUS FLOWER』リリースした。アルバムにはリスナーが彼に期待する鈍いブームバップのビートにスキルフルなラップ、高いレベルのリリシズムがふんだんに取り入れられている。また、韓国アンダーグラウンドヒップホップの初期をリードしたGARIONのプロデューサーだったJ-Uがプロデューサーとして参加したことも注目を集めた。J-Uは相変わらず最高のサンプリングセンスでジャジーなバイブスのトラックを提供している。加えて、このアルバムには90年代のゴールデンエイジヒップホップや韓国の2000年前後のアンダーグラウンドヒップホップへのオマージュが込められているのも興味深い。Souls Of Mischiefの「93 'Til Infinity」を想起させる「伝染 (Til Infinity)」がその代表と言えるだろう。90年代生まれのラッパーが表現する90年代のヒップホップをぜひチェックしてみてほしい。

DON MALIK (던말릭) - 같은 옷 (Gott-N-Ott) MV
RealSound_ReleaseCuration@limasul_0329

■limasul
日韓の大衆音楽事情を専門とするライター。歌詞・記事の翻訳や音源の流通、キュレーションなどの職業を経て、今は日韓の音楽シーンの架け橋となるべく活動中。
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