IDOLiSH7 七瀬陸、“絶対的センター”である理由 音楽面を支えるボーカル力から分析

 七瀬個人の魅力ついては、シンプルに語ることができない。ほんわりとしたかわいらしい発言をしたかと思えば、ドキッとするような雄々しい表情を見せることもある。明るく楽しいキャラクターの裏に、どこか達観したような大人な面を感じさせることもある。これはいわゆる“ギャップ”や“二面性”というよりも、“複雑さ”という方が正確かもしれない。七瀬個人のファンの中には、そんな部分に魅力を感じている人も多いのではないだろうか? (このあたりはソロ曲「SEPTET for...」を聴くとわかりやすい。仲間を想う爽やかな歌詞とメロディの中に、彼の深い内面を感じさせる味わい深い一曲だ。グループやユニットでの歌唱曲とは少し趣の違う、彼自身を強く投影した楽曲と言えるだろう。)

IDOLiSH7「SEPTET for...」

 そんな七瀬がセンターたる所以は、明るいキャラクターや優れた見た目、パフォーマンスの華やかさや、歌のうまさだけではない。切実さのようなものを秘めた心に響く繊細な歌声こそ、彼の最大の魅力でありセンターである一番の理由だ。「RESTART POiNTER」で〈キミと笑いあえたなら どんな今日も変えられるさ〉と歌い出す彼の声は、奇妙な説得力を持っている。

IDOLiSH7「RESTART POiNTER」

 歌詞の内容がそのまま現実になっていく様を実感させ、胸を打つ。「Sakura Message」や「ハツコイリズム」といったバラードは、七瀬のパートに入ると特に、胸を締め付けるようなリアルな切なさを感じさせる。前向きで希望に満ちたIDOLiSH7の楽曲を聴いていると勇気が湧いてくるのは、七瀬のボーカルが中心にあり、そんな彼に並んでもまったく輝きを失わない6人の個性が彩りを鮮やかにしているからに他ならない。

IDOLiSH7「Sakura Message」
IDOLiSH7「ハツコイリズム」

 また、彼らがアイドルながらどこか身近に感じるのは7人の持つ親しみやすさだけではなく、センターである七瀬の歌声が真に迫りリスナーの胸に入り込んでくることも、ひとつの要因なのかもしれない。アイドルの魅力とは、見た目や実力の優劣だけではなく、滲み出る人間性や個性にあらわれるものであり、そういった意味でアイドルグループに“特別なセンター”が必ずしも必要とは限らない。だが今この時点においては、IDOLiSH7がIDOLiSH7らしくあるために、“センター・七瀬陸”はあまりにも絶対的である。

 人気アイドルグループの座を得た彼らは今後、表現の形をどう模索していくのだろうか。彼らが多くの経験を経てさらなる成長を見せた時、七瀬の歌声は我々の心にどのように響き、どんな感情をもたらすのだろう。未知数の可能性を持ったセンター・七瀬陸から、ますます目が離せない。

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