ももすももす、1stアルバム『彗星吟遊』に収めた“音楽”という記録「曲を書いた時の気持ちが残っているのは自分にとって尊い」

ももすももす『彗星吟遊』インタビュー

ジャン・コクトーの詩集を枕の横に置いて寝たら良い夢が見れた

ーーももすももすさんは、詞曲を同時に作るタイプなのでしょうか。

ももすももす:はい。ギター、ドラムとベースも打ち込みながら作っています。

ーーアレンジへのこだわり、楽曲のストーリーテリングを演出するサウンドメイクも進化していますよね。たとえば、4曲目の「saboten」でのコーラスワークのサイレンめいたエフェクティブなテイストとか。

ももすももす:そうですね。「saboten」のコーラス、こだわって録りました。

ーーコーラスワークはどんな形で生まれていったのですか?

ももすももす:編曲の時に情景を音で表したくて。たとえばドラムの音を木のざわめきみたいにしてみようとか考えたり。それと同じようにコーラスも、目に見えてるものを目に見えなくしてみようと思うことがあります。レコーディングは楽しいですね。職人の気持ちでやってます。

ーー5曲目の「桜の刺繍」はいかがでしょうか。

ももすももす:この楽曲は、この間台湾の台北にミュージックビデオを撮りに行ったんです。台湾は日本よりも桜の開花が早くて、もう2月上旬に咲いていて。日本で桜がまだ咲いていなかったのと、私が海外に行きたかったので……(笑)。

ももすももす「桜の刺繍」(Sakura No Shishu) music video

ーー初海外だったんですね。台湾、いかがでしたか?

ももすももす:楽しかったです! 桜の下でも歌ったり、あと九份で雨の中歌いました。私、すぐに忘れちゃうので動画が記憶のメモリーになっています。本当に、楽しかったなぁ。

ーー今回『彗星吟遊』というアルバムタイトルが物語性のある言葉になっています。タイトルのように彗星に乗って旅をしてるイメージで制作されたのでしょうか?

ももすももす:心の中にたくさんいろんな星が浮いていて、私はひとつの場所に止まっていることができないので、必然的に吟遊しながら、それを音楽という記録に残したアルバムだと思っています。でも、満足感はなくて、今朝も自分の昔作ったデモを聴いて、次にどんなアルバムを作ろうかな、次はこれを入れたいなぁとかって考えていました。

ーーどんどん表現欲求が広がっているんですね。やれることも技術的にも日々進化していそうです。

ももすももす:そうですね。でも、アルバム作ったら、次CDを出すまで時間が空いちゃうじゃないですか。だから、またしばらくの間レコーディングできなくなるんだと思ったら寂しかったです。

ーー今回のアートワークは、ももすももすさんのフェイスイラストで印象的なんですが、どんな方と制作されたのでしょうか?

ももすももす:このアルバムは芸術的な作品にしたかったので、ペン画家の川口絵里衣さんにお願いしました。 

ーー芸術的でありながら、アイコンとしてキャッチーでフックが強いですよね。

ももすももす:今までのジャケットは実写しかなくて、いつもの作品だったらそれでも良かったんですが、このアルバムが象徴するのは、自分の実体ではなく、人に描いてもらった絵であったり、繊細な星だったりするのかなと思ったので、お願いできて良かったです。

ーーももすももすさんの作品を見ていると、とても言葉を大事にされているのを感じます。詩人や文学、作家からインスピレーションを受けることはあるのでしょうか。

ももすももす:今はジャン・コクトーの詩集が大好きです。実は昨日の晩、ジャン・コクトーの詩集を枕の横に置いて寝たんです。そしたら、良い夢が見れました。そういえば、朝起きて「ああ、詩でも読んでから動こうかな」と思って、ぱって開いたらジャン・コクトーの「ギター」っていう詩で、「はっ、なんてところを開いてしまったんだ!」って思いました。

ーー今回のアルバムを制作する上でインスパイアされた文学作品や言葉はありますか?

ももすももす:詩集はもちろんなんですけど、吾妻ひでおさんの漫画にもインスパイア受けています。あと直接影響は無いと思うのですが、映画もよく観ています。最近は、『私の知らないわたしの素顔』という作品を観ました。フランス映画なんですけど、女性の生き方というか、年齢を重ねることについて描かれていて、それが刺さりました。あと『ジョジョ・ラビット』も面白かったです。

ーーライブ活動も着実にステップアップしていますよね。ご自身の中でライブに対してはどのように捉えているのでしょうか。

ももすももす:CDって、プラスチックの中に入ってるじゃないですか? でも、ライブハウスは建物の中に音楽が入っているので、パッケージが違うんだなって思います。

ーーなるほど。やってることは同じ感覚でしょうか?

ももすももす:はい。でも保存状態によって中身って全然変わってくると思うから、ライブはやっぱりCDとは違って独特だなと思います。

ーーそうですね。前回のワンマンライブ『~HUEは鳴き続ける。~』でも、ステージに光り輝く月のオブジェを置かれていましたね。(参照:ももすももすのユニークな歌詞の世界観を感じた夜ーーワンマンライブ『~HUEは鳴き続ける。~』を観て

ももすももす:はい、大きな月を置いていました。でも、開演前にスタッフに下げられてしまって。悲しかったです(苦笑)

ーー月であったり星であったり、彗星など、メタファーとしての宇宙観は大事な要素なのでしょうか?

ももすももす:自分の本当の居場所だったり、実感ができるものを地球上に感じたことがなくて。「じゃあ私は一体どこに帰ればいいんだろう?」ってよく思ってるんです。その流れで、宇宙のことは考えたりしますね。

ーーそういえばワンマンライブでは、バンド時代の曲、メランコリック写楽の楽曲を演奏されていて、オーディエンスも盛り上がっていました。あの楽曲は、これからもライブでやっていくのでしょうか?

ももすももす:みんなが忘れた頃にね。人をびっくりさせようっていう了見です。

ーーははは(笑)、見事にびっくりさせられました。では、最後にあらためて全12曲の中で、今日の時点でももすさんにとって3曲あげるとしたら?

ももすももす:3曲ですか……。ちょっと難しいので、軍艦巻きに近い曲とかでもいいですか?

ーー軍艦巻きって、食べ物の?

ももすももす:はい、回転寿司屋さんの3つ乗ってる軍艦巻きみたいなイメージで選出しようと思います。「火星よ、こんにちは」と「桜の刺繍」、あとは「ハネムーン」かな。「ハネムーン」は、一番俯瞰して書けた曲だと思います。自分を俯瞰したというよりは、自分が遠い星に行って、そこで住んでいる人たちのことを俯瞰して書いたみたいな。だからこそ「火星よ、こんにちは」に戻れる曲なんです。ぜひ、最後まで聴いたら、もう一度、1曲目からリピートしてほしいアルバムですね。

 

■リリース情報
ももすももす『彗星吟遊』
リリース日:3月3日(火)
初回限定盤(CD+DVD):COZP-1633〜4 ¥4,100+税
通常盤(CD):COCP-41092 ¥2,700+税
<CD収録楽曲>
1. 火星よ、こんにちは
2. アネクドット
3. 木馬
4. saboten
5. 桜の刺繍
6. シャボン
7. 隕石
8. Confession
9. シクラメン
10. プルシアンブルー
11. うさぎの耳
12. ハネムーン

作詞・作曲:ももすももす
編曲:
ももすももす(M-1,2,4,5,9,10,11)
白井良明,ももすももす(M-3,8)
本田優一郎,ももすももす(M-6,12)
本田優一郎(M-7)

<DVD収録内容>
1. うさぎの耳(demo) music video
2. Confession music video
3. 木馬 music video
4. プルシアンブルー music video
5. アネクドット music video
6. シクラメン music video
7. 隕石 music video

■出演情報
WEBラジオ『ももすももすの豚バラジオ…zzz』
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■関連リンク
Official HP(白亜紀ver)恐竜の背中
Nippon Columbia HP
twitter:@momo_shara
instagram:@mo_mosu

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