鬼頭明里がソロ音楽活動で表現するものとは? デビューから最新シングルまでを考察

変幻自在にジャンルを超える醍醐味

鬼頭明里『Desire Again』

 デビューシングルから約4カ月を経て、2月26日にリリースされた2ndシングル『Desire Again』は、「Swinging Heart」とは一転、ソリッドなギターロックに乗せて、クールなボーカルを効かせている。印象的なギターフレージングを始め、メリハリの効いた展開や高音に飛ぶキャッチーなサビメロなど、ネット世代にフィットしそうな要素が満載だ。

 作曲のmonoは、アニメ『ひとりぼっちの○○生活』のオープニングテーマ「ひとりぼっちのモノローグ」を作曲した田之上護の別名義で、同曲は鬼頭も他キャストと共に歌っていたという縁もある。作詞は、キャラクターソングの他に田所あずさ、井上苑子、水瀬いのりなどの作曲や編曲を担当している新田目駿(HANO)で、作詞のみの提供はこれが初とのこと。何かに押しつぶされそうになってもがきながら、明日をつかみ取ろうとする力強く前向きなスピリットが歌われている。〈目の前のドアを開けてみよう その両手で〉という歌詞に背中を押されるファンもきっと多いだろう。またMVでは、夜のビル群の合間を物憂げに彷徨うシーンがあり、ストリート系の私服風衣装が新鮮だ。荒廃した場所に横たわりながら光を掴もうと手を伸ばすシーンもあり、何かを決意したような鋭い眼差しが実に印象的だ。

鬼頭明里 2月26日(水)発売 2ndシングル「Desire Again」試聴動画

 カップリングには、鬼頭自身がヒロインの八尋寧々役で出演するTVアニメ『地縛少年花子くん』EDテーマ「Tiny Light」と、ピコピコとした打ち込みからブラスなど、様々な音が出て来る洋楽ガールズポップ調の「Closer」を収録。「Tiny Light」は、美しいピアノとボーカルから始まり、途中からビートが入ってどんどん音が分厚くなっていく構成がドラマチック。作詞作曲編曲を、藍井エイルなどを手がけて知られるSakuが担当。

鬼頭明里「Tiny Light」

 鬼頭はファルセット気味の浮遊感のある歌声を聴かせ、細かいニュアンスが今にも泣き出しそうな切ない想いを表現している。そして「Closer」は、数多くのアニソンを手がけるshiloが作詞作曲を担当。グルービーなロックをベースに、様々な楽器が入り交じった遊び心たっぷりの楽曲で、ジャンルの垣根を跳び越えたものになった。英語と日本語が入り交じった歌詞を、鬼頭は時に色っぽく時にワイルドに多彩な歌声を聴かせていて、ラストのハイトーンのフェイクも聴き応えがある。今まで誰も聴いたことのなかった新しい鬼頭明里に、ファンはきっと驚いただろう。

鬼頭明里「Closer」

 キャラクターとしてアイドルソングを歌い、ソロではロック、バラード、洋楽テイストなど、変幻自在に様々な楽曲を歌えるのは声優であればこそ。キャラソンでは見せたことのない表情を見せることが出来るのもソロ活動の醍醐味であり、キャラソンとのギャップが良い相乗効果を生んでいるようだ。また今後は、自身による作詞にも期待が寄せられており、どんなジャンルの楽曲に挑戦しどんな新しい歌声を聴かせてくれるのか、鬼頭明里のソロ活動に注目が集まっている。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、インタビュー本数は延べ4,000本。現在は日本工学院で講師も務める

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