Sexy Zone、『POP×STEP!?』が初登場1位に “東京から発信するポップソング”の意匠を読む

 一方、そんなアルバムの中に、Kai Takahashiが手掛けた「Blessed」のように音数が少なめの「今っぽい」楽曲も違和感なく収まっているあたり、単に「いろんな作り手を呼んできました」で済まさないトータルなディレクションの妙がある。ウォームでやわらかな質感のビートと物憂げな湿り気を持ったボーカルが、Sexy Zoneのメンバーたちが持つ魅力と実力を引き出している。挙げればきりがないのだが、一曲前の「タイムトラベル」も、サビで聴けるメンバーたちのファルセットに思わずうっとりしてしまう。CHOKKAKUのアレンジによるR&Bマナーのセクシーな4つ打ちも素晴らしい。

 ちなみに、収録曲中、作詞・作曲・編曲までを一挙に担っているのは、「Blessed」のKai Takahashiのほかは「MELODY」のtofubeatsのみ。参加したミュージシャンの中でも最も若い部類に入るふたりにおまかせしてしまう大胆さにも驚く。「MELODY」は歌メロから各パートのフレージング、そしてオートチューンづかいでtofubeatsのカラーをかなり押し出している。

 なるほどたしかに、2020年のいま東京から発信するJ-POPアルバムとして申し分ない出来と言える。しかし、このアルバムを東京からどこへ発信するのか? と考えると、ちょっと疑問は残る。多彩さと散漫さは紙一重でもあるし、アレンジはともかくとしてもミックスやマスタリングの面でJ-POPのマナーに忠実すぎるようにも思える。

 入手手段がほぼCDに限られるというのも解せない。東京から「日本全国に」発信ということなのだろうか。リード曲で「極東」と(欧米を中心に見た限りでの)グローバルな日本の立ち位置に言及しつつ結局はドメスティックにとどまるというのは、J-POP誕生以来の悪しき「J」の再生産では? 嵐が胸を張って「J-POP」のラベルを背負って(少なくともインターネットでの展開というかたちを取ることで)世界に対してアピールしたのにね。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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