ジャスティン・ビーバー、21世紀最大のポップアイコンが4年ぶりのアルバム『Changes』で見せた“変化”とは?

ジャスティン・ビーバー、最新作の変化

前作で得た自信を踏まえた、自身のルーツ=R&Bへの“再挑戦”

 この復活をきっかけに、ジャスティンは自身のクリエイティビティを最も発揮できる、最も自分らしくいられる場所であるスタジオに戻ってきた。そこで彼は、自身の音楽のルーツであるR&Bに改めて向き合うことを選択する。自身のInstagramでも「R&BIEBER」とポストし、来るアルバムがR&Bへ重きを置いた内容となることを宣言した。

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 実は、ジャスティンがR&Bと正面から向き合うのは、今作が初めてではない。『Believe』(2012年)でのツアー中に制作された楽曲を集めた『Journals』(2013年)では、R&Bのプロデューサーを多数招集し、リスペクトしてやまないアッシャーやクリス・ブラウン、さらに当時のR&Bサウンドを更新したThe Weekndやフランク・オーシャンなどを彷彿とさせる楽曲に取り組んでいる。しかし、当時はポップアイドルとしてのイメージが強く、またあくまでサイドプロジェクトという位置付けもあり、本人の望むような評価を得ることは出来なかった。

 しかし、ジャスティンは音楽性の探求を続け、『Purpose』以降はプロデューサー主導の楽曲制作から距離を置き、より自身のクリエイティビティを反映した制作プロセスに取り組んできた。同作の成功によって得られた自信と、理想的な制作環境を手に入れた今だからこそ、彼は『Journals』のリベンジをすることを決めたのではないだろうか。『Journals』のサウンドの中心を担っていたプー・ベアを今作のメインプロデューサーに起用していることからも、今作における気合いが伝わってくる。

現代におけるポップアイコンの在り方を改めて定義する『Changes』

 この原稿を書いている時点で公開されている『Changes』の楽曲を聴いてみると、どれも単なるルーツの再現ではなく、『Purpose』同様にしっかりと今の現行トレンドを踏まえた“最新型のポップミュージック”に仕上がっている。昨年末にリードシングルとして公開された「Yummy」では宣言どおりR&Bを基調としつつも、トラップビートを取り入れ、エモーショナルに歌い上げながらもきっちりとフロウを乗りこなすという離れ業を見せている。

Justin Bieber - Yummy (Official Video)

 客演においてもケラーニやサマー・ウォーカーといった同世代の若手R&Bシンガーの起用が目立ち、先輩ミュージシャンを多く起用した『Journals』とは異なり、あくまで自分達の世代としてのR&Bアルバムを創り上げようという意図が伝わってくる。実際に、「Get Me」ではどこまでも沈み込むようなサウンドの中で囁くように歌うジャスティンとエモーショナルに力強く歌うケラーニのコントラストが印象的な、実に素晴らしい1曲になっている。トラックリストにはポスト・マローンやトラヴィス・スコットといった同世代ラッパーの名前もあり、共にトレンドを更新するアーティスト同士、どのようなサウンドを創り上げるかに注目したい。

Justin Bieber - Yummy (Summer Walker remix)
Justin Bieber - Get Me (feat. Kehlani)(Audio)

 今のジャスティン・ビーバーは、互いに支え合える理想的なパートナーであるヘイリーと結婚し、長年にわたって作品を創り上げてきた信頼出来るチームの中で、自身のクリエイティビティを存分に発揮出来るという、キャリア史上初めて理想的な環境に辿り着くことが出来た。これまで自分のために音楽を作ってきたと語る彼だが、今はその想いを伝えたい相手がいる。それはヘイリーであり、サポートしてくれた人々であり、そして何よりもこれまでずっと彼を支持してきたファンである。暗闇から抜け出した彼には、今は語るべき言葉がある。

「朝ベッドから起き上がる事が簡単なことだと思う人たちもいるだろう。でも俺にとっては大変なことなんだ。俺と同じ問題を抱えている人たちに伝えたいんだ。君は一人じゃない」(『Justin Bieber : Seasons』より)

 ヘイリーはジャスティンについて、「彼にはストーリーがある。だからみんな惹かれるの」と語っている。

 ポップカルチャーの醍醐味は、アーティストの創り上げるパーソナルなストーリーに共感し、まるで自分がその一部であるように感じることにあるのではないだろうか。様々な問題に囲まれながら生きる現代のリスナーにとって、そのストーリーはさらに大切なものになっている。『Changes』はこれまでのジャスティン・ビーバーのキャリアにおいて最もパーソナルで、かつ挑戦的な1作となるだろう。2020年のポップカルチャーにおける最重要作とも言える本作を聴いて、是非21世紀最大のポップアイコンに訪れた「変化」を確かめていただきたい。

Justin Bieber『Changes』

■リリース情報
Justin Bieber『Changes』
収録曲:
01. All Around Me
02. Habitual
03. Come Around Me
04. Intentions (feat. Quavo)
05. Yummy
06. Available
07. Forever (feat. Post Malone & Clever)
08. Running Over (feat. Lil Dicky)
09. Take It Out On Me
10. Second Emotion (feat. Travis Scott)
11. Get Me (feat. Kehlani)
12. ETA
13. Changes
14. Confirmation
15. That’s What Love Is
16. At Least For Now
17. Yummy (Summer Walker Remix) ★
日本盤及びデジタル・アルバム用ボーナストラック

<日本盤CD>
全17曲
※日本盤ボーナス・トラック1曲

<通常盤(CD)>
価格:¥2,500(税抜)
<デラックス盤(CD+DVD)>
価格:¥3,000(税抜)
・生産限定盤
・DVD収録内容:Yummy (Official Video)、Yummy (Lyric Video)

<輸入盤>
全16曲
発売:2月14日(金)※日本時間

<デジタル>
全17曲
発売:2月14日(金)※日本時間

ジャスティン・ビーバー『チェンジズ』
試聴はこちら

■ドキュメンタリー・シリーズ
「Justin Bieber: Seasons」

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