King Gnu、『CEREMONY』が2週目もヒット継続 歌詞の変遷に表れたブレイクの要因

 そこから1年。『CEREMONY』の開かれ方はすごい。ベタを恐れなくなったというのか、オッと思う歌謡曲的な言葉がいくつも耳に飛び込んできます。〈どこかの街で/また出逢えたら/僕の名前を/覚えていますか?〉(「白日」)〈最終列車はもう行ってしまったけれど/この真夜中を一緒に歩いてくれるかい?〉(「壇上」)。

King Gnu「白日」
King Gnu「壇上」

 これはもう、どこの都市である必要もない、誰もが知っている“この町”の歌ですね。往年の昭和歌謡にあったような名フレーズと言ってもいいですが、スッと胸に飛び込んできて、まるで我がことのように胸を締め付けてくる普遍性。そんな歌詞を堂々と受け止め、あえて二枚目ではないキャラクターを押し出していった井口理の変化も大きいのですが、もはやKing GnuはラグジュアリーなTOKYOのバンドではなくなりました。誰がどこで口ずさんでもいい名曲揃いのバンド。その結果が、このセールスです。

 そして、最初からサブスク解禁のアーティストでありながら、一定数のリスナーは必ず現物のCDを求めます。今週のランキングと同時に発表されたのは、「オリコン週間ストリーミングランキング」でシングル「白日」の再生数が1億回を突破したというニュースでしたが、ストリーミングで聴けば聴くほどCDが欲しくなる、いよいよフィジカルの所有欲が高まるのかもしれません。1億回も再生されるヒットがそうそう出るとは思えないけれど、まずはサブスクでドーンと広め、それと並行しながらアルバムをリリースすることには、まだ十分な意味がある。そんな答えをKing Gnuがはっきり提示してくれました。うーん、やることなすことカッコいい、本当に新しいバンドだなぁ。痺れます。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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