LOVEBITES、Sons Of Apollo、BMTH……2020年もメタル/ラウドシーンの盛り上がりを期待させる新作8選

Bring Me The Horizon『Music to listen to~dance to~blaze to~pray to~feed to~sleep to~talk to~grind to~trip to~breathe to~help to~hurt to~scroll to~roll to~love to~hate to~learn Too~plot to~play to~be to~feel to~breed to~sweat to~dream to~hide to~live to~die to~GO TO』

 ここまでは正統派HR/HMを中心に紹介してきましたが、次からの3枚はメタルというよりはハードコアやラウドロックなどの範疇に含まれるエクストリームミュージックの注目作を紹介します。まずは、昨年12月末に突如配信リリースとなったBring Me The Horizon(以下、BMTH)の最新EP『Music to listen to~dance to~blaze to~pray to~feed to~sleep to~talk to~grind to~trip to~breathe to~help to~hurt to~scroll to~roll to~love to~hate to~learn Too~plot to~play to~be to~feel to~breed to~sweat to~dream to~hide to~live to~die to~GO TO』です。BMTHは2019年1月に最新アルバム『amo』をリリースしたばかり。同作を携え、8月と11月の2度にわたる来日公演も実現しています。また、11月にはPlayStation 4用ゲーム『DEATH STRANDING』のサウンドトラックにトラップ調の新曲「Ludens」を提供し、突然の新曲発表でファンを驚かせました。

 そこから2カ月足らずで届けられた今作は、EPながらも新曲8曲で構成された75分超の大作。その中身も、ラウドロックやメタルの枠から飛び抜けた『amo』をさらに進化させたもので、各曲にはホールジーやベクシー、Lotus Easter、Happyalone.、Toriel、Yonakaと多ジャンルにわたるアーティストをフィーチャー。ヒップホップ以降のモダンなトラックをベースにしたニミマムなサウンドが展開されており、中には25分にもわたるコラージュ調の楽曲も含まれています。もはやHR/HMやラウドロックどころではなく、ロックであることすら放棄したような先鋭的なサウンドは、2020年のエクストリームミュージックを語る上で今後重要な指針になるかもしれません。

Bring Me The Horizon - ~GO TO~ ft. BEXEY, Halsey, Happyalone., Toriel, YONAKA, Lotus Eater
Higher Power『24 Miles Underwater』

 続いては、1月末にリリースされたばかりのHigher Powerの新作『24 Miles Underwater』です。Higher Powerは2014年に結成されたイングランドはリーズ出身の5人組バンドで、オールドスクールなハードコアにポストハードコアやメロディックパンク、エモ、グランジ、スラッシュメタルなどをミックスしたクロスオーバーサウンドが特徴。2017年には1stアルバム『Soul Structure』を発表。翌2018年には『Download Festival UK』のステージも立っています。

 新たにメタル/ヘヴィロックの老舗レーベル<Roadrunner Records>と契約し発表された2ndアルバムは、PixiesやFoo Fightersの諸作で知られるギル・ノートンをプロデューサーに迎え、ゴリゴリのハードコアサウンドの中に浮かび上がるメロウでセンチメンタルなメロディが耳に残る良作に仕上げられています。その作風は2000年代のDeftones、あるいは1990年代後半のRefusedにも通ずるものがあるほか、同年代前半のグランジ/オルタナティヴロックからの影響も随所から感じ取れるはずです。HelmetやAlice In Chains、Jane's Addiction、初期のTherapy?などにピンときた方なら、間違いなくハマる1枚だと思います。

Higher Power - Seamless [OFFICIAL VIDEO]
Bad Omens『Finding God Before God Finds Me (Deluxe Reissue)』

 最後に紹介するのはBad Omensのアルバム『Finding God Before God Finds Me (Deluxe Reissue)』です。こちらは2019年8月に発売された彼らの2ndアルバム『Finding God Before God Finds Me』に新録楽曲3曲を追加したリパッケージ盤で、今年1月中旬に配信限定リリースされています。

 Bad OmensはBMTHフォロワーという触れ込みでデビューしたアメリカのメタルコアバンドですが、この新作ではフォロワー枠から抜け出し、ハードコアなヘヴィさとモダンポップにも通ずるキャッチーさ、そして宗教世界を思わせる重厚な世界観をミックスした独自性が顔を覗かせており、個人的にも2019年のベストアルバム10作の候補にあがった1枚でもありました。

 新たに追加された新録曲もその延長線上にある作風で、『Finding God Before God Finds Me』を気に入ったリスナーならすんなりと受け入れられるはず。この中にはDuran Duranのヒット曲「Come Undone」(1993年)のカバーも含まれており、その豪快なアレンジは一聴の価値ありです。純粋な新作ではないかもしれませんが、スルーするには惜しい力作なので、今回こういう形でピックアップしました。

Bad Omens - Limits (Lyrics)
RealSound_Best2019@Tomokazu Nishibiro

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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