Superflyが10年以上リスナーを魅了する理由 バンマス・八橋義幸に聞く、越智志帆が纏う“穏やかな空気”とミュージシャンシップ

八橋義幸に聞く、Superflyの変化と魅力

音楽的変化に繋がった“ジャズ”への接近

 もう一つの音楽的な変化は、彼女が活動休止中に聴いていたという“ジャズ”への接近だ。アリーナツアーでは「恋する瞳は美しい」をジャズアレンジで披露。やはりジャズのテイストを取り入れた「Fall」を続けることで、ライブ全体の大きなポイントとなっていた。

「ファンクラブツアーでも、五十嵐誠くん(Tb)が中心になって、何曲かビッグバンドジャズにリアレンジしたんです。アリーナツアーでも、『ジャズにアレンジした2曲が、”0“ツアーのはじまり』と言っていた人もいました。志帆ちゃんはセロニアス・モンクが好きらしくて、その雰囲気は『氷に閉じこめて』のピアノにも出てるかもしれないですね」

 アルバム『0』に収録された「Lilyの祈り」は、一木けいの小説『愛を知らない』にインスパイアされ、“愛されたい”という感情を描いたバラードナンバー。八橋氏がアレンジを参加し、バンドメンバーがレコーディングした。

「志帆ちゃんからドラム、ピアノ、仮歌だけのデモを受け取って、そこからアレンジしました。キーワードは、熱く泣けるバラード。“アルバムのなかでも、いちばん声を張って歌える曲にしたい”という要望もありましたね。(デジタル音を使用せず)バンドの音だけで構成する難しさはありましたが、メンバーの顔を思い浮かべながらアレンジできたのはよかったですね」

 制作においては、志帆と細かいやりとりを行っていたという。最大のポイントは、楽曲全体の構成。八橋氏が提案した「ポップスの王道的な構成」に対して彼女は、かなり大胆なアイデアを戻してきたのだとか。

「志帆ちゃんの提案は、1番のサビの後さらに展開して、次のサビがなかなか出てこない構成だったんです。普通のポップスではあまりない構成だし、ちょっと抵抗したんですが、結局は彼女のアイデアを採用しました。志帆ちゃんは勘が良くて、迷ったときは彼女の意見に従ったほうが上手くいくことが多いんですよ。実際、『Lilyの祈り』も、アウトロからさらに広がる曲になって、それがすごく良かったので。おそらく他の楽曲でも、歌っている人としての直感、ビジョンをしっかり伝えていると思います。それをすべて音に表わすことはできませんが、楽曲の風景が見えていれば、アレンジしやすいんですよね」

越智志帆は“すごく優しい歌姫”

 ニューアルバム『0』は、11曲のうち10曲が彼女自身の作詞・作曲。八橋氏は本作について、「正直に、自分のなかにあるものを表現した記録でもある」と評する。

「職業作家的な作り方ではなくて、“モノを作るとは、どういうことか”“どんなやり方がいいんだろう?”と模索しながら、自分のペースで作り上げた作品ですよね。“0”という状態になれたのも良かったと思います。僕も曲を書きますが、狙うと失敗することが多いし、ゼロの状態、無の状態のときに降りてきたものを形にするほうが、良いものになるんですよね。もちろんアレンジや作曲のテクニックも必要ですが、最初の瞬間に何が降りてくるか? がいちばん大事なので」

 さらに八橋氏は、Superflyの楽曲制作の変化、そして、新たなスタイルを確立しつつあることを指摘する。

「初期の頃はオールドスタイルのロックンロールが中心だったし、特に(元メンバーの)多保孝一くんは、ルーツにある音楽に敬意を示しながら楽曲を作ることを意識していたと思うんです。いまはそのフォーマットではなくて、志帆ちゃんが感じたことが音楽になっているので、作り方がまったく違うんですよね。このアルバムは彼女自身も“これがデビューアルバム”くらいの勢いで気に入ってるようなので、良かったなと思います」

 今後の彼女に対して、「声の素晴らしさを僕らも味わいたいし、サウンド的にはいろんな組み合わせがあり得る。彼女のイメージ、直感力にも期待したいですね」と期待を寄せる八橋氏。最後に、越智志帆というシンガーが10年以上に渡って多くのリスナーに支持され、愛される理由について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「もちろん歌姫なんですが、すごく優しい歌姫なんですよ。常に礼儀正しくて、辛い顔、泣いてるところを人に見せず、僕らがバカなことをやってると笑ってくれて(笑)。こっちが困っていたら導いてくれるし、お客さんにもそういう彼女の性格や人間性が伝わっているから、ずっと付いてきてくれるんじゃないかな。僕自身もそうですからね。ミュージシャンって、基本的にまじめな人が多いんですよ。志帆ちゃんも“練習しすぎだよ”と思うくらいまじめだし、ミュージシャンシップがすごくある。音楽家として共感できるんですよね」

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

ライブ写真=『Superfly Arena Tour 2019 “0” 2019.12.8 マリンメッセ福岡』撮影:神藤剛/カワベミサキ

Superfly 6th ALBUM『0』(ゼロ)

■リリース情報
Superfly  6th ALBUM『0』(ゼロ)
2020年1月15日 発売
予約受付はこちら

<アルバム収録楽曲>全11曲
1. Ambitious (TBS系 火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』主題歌)
2. フレア (NHK連続テレビ小説『スカーレット』主題歌)
3. Gemstone
4. 覚醒 (映画『プロメア』主題歌)
5. ハッピーデイ (花王 フレア フレグランス CMソング)
6. Fall (TBS系 金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』主題歌)
7. Lilyの祈り
8. 氷に閉じこめて (映画『プロメア』エンディング主題歌)
9. Bloom (ゼクシィ25周年テーマソング)
10. サンディ (キレートレモンCMソング)
11. Gifts (第85回NHK 全国学校音楽コンクール 中学校の部課題曲)

収録内容:全形態共通CD:全11曲収録

通常盤
CDのみ ¥3,000(+税)
初回限定盤A (アリーナツアー映像盤)
CD+DVD ¥4,200(+税)
CD+Blu-ray ¥5,200(+税)

<初回特典DVD/Blu-ray収録内容>
『Superfly Arena Tour 2019 “0”」(2019.10.27 Saitama Super Arena)
・Wildflower ・やさしい気持ちで ・Beautiful ・恋する瞳は美しい・My Best Of My Life・覚醒・タマシイレボリューション ・Alright!! ・99 ・愛をこめて花束を

初回限定盤B(夏フェス映像+MV集盤)
CD+DVD ¥4,500(+税)
CD+Blu-ray  ¥5,500(+税)

<初回特典DVD/Blu-ray収録内容>
FM802 30PARTY MEET THE WORLD BEAT 2019ライブ映像(2019.7.21)
・ハロー・ハロー(Short ver.) ・Beautiful ・タマシイレボリューション・Gifts ・愛をこめて花束を ・Ambitious

Music Video集 (全17曲)

・Starting Over ・Always ・Bi-Li-Li Emotion ・Live ・愛をからだに吹き込んで ・White Light・On Your Side ・Beautiful ・黒い雫 ・Good-bye ・心の鎧 ・愛に抱かれて ・Bloom ・Fall ・Gifts ・Ambitious・フレア

■イベント情報
Superfly New Album『0』リリース記念イベント
都内某所のライブハウスでのライブ&トークイベント
2020年1月15日(水)19:00開演  20:30終演予定(時間は前後する可能性がございます)
開催場所:都内某所
入場方法:後日発表
※本イベントは撮影・収録が行われます。
※お問い合わせ:[問]H.I.P. TEL: 03-3475-9999(平日10:00~18:00)

■関連リンク
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