辰巳ゆうと×歌広場淳 特別対談:演歌とヴィジュアル系に関する本音トーク 表現の仕方に共通点も発見?

辰巳ゆうと×歌広場淳 特別対談

“V”と“E”の共通点や、学生生活と音楽活動の両立を語る


歌広場:あと、たとえばヴィジュアル系には“コテ系”というのがあるんです。黒いエナメルのボンテージ服に真っ黒な口紅とか、コテコテだからコテ系。それとオサレ系というのがあって、カジュアルでお洒落な感じ。そういう系統がいっぱいあって、歌の内容も系統によって違うんです。コテ系は絶望しか歌わないとか(笑)。演歌にも〇〇系みたいなものがあったりしますか。

辰巳:そんなにはっきり分かれてはいないですけど、歌う曲で言うと、僕は昔ながらのド演歌が多いのですが、純烈さんのように演歌に馴染みのない方でも聴きやすいムード歌謡に近い演歌を歌う方もいらっしゃいますね。言われてみると、若い方でアイドル系の方がいらっしゃったり、トークが面白かったり、昭和の雰囲気に溢れる演歌を歌っていたり、曲の中に語りが入ったり、いろんな路線があるのかなという気はします。

歌広場:演歌は演歌だと思っていたので、知らないこともたくさんあるんですね。もしかしたら「あなたに合う演歌もあると思いますよ」という切り口で、演歌を広める人があまりいないのかもしれないですね。僕はヴィジュアル系の音楽が好きなので、ソムリエ的にいろいろ紹介できると思うんですよ。演歌でも、「今失恋して切ないので、元気になれるような演歌はありますか」とか言ったら、「この曲はいかがですか」と紹介してくれる人がいたら、演歌を聴きたいと思う方がもっと増えるかもしれないですね。

辰巳:確かにそうですね。演歌が好きな方はいらっしゃっても、演歌ソムリエのように「演歌を広めたい」「紹介したい」という方は少ないかもしれないです。

歌広場:今、「演歌ソムリエ」という新しい用語が生まれましたね(笑)。では。アルバムのお話も聞かせてください。1stアルバムとなる『辰巳ゆうとファーストアルバム -力いっぱい、歌いました!-』は、演歌とポップスを2枚のCDに分けて収録しているんですよね。ポップス盤のほうで歌われている村下孝蔵さんの「初恋」は僕がとても好きな曲なんです。選曲はどのようにされたんですか。

辰巳:スタッフさんからたくさんアイデアをいただいて、その中から厳選していきました。オリジナルで新たに作っていただいた曲もあって、「星空のMerry Christmas」というクリスマスソングは演歌っぽさはなくて、J-POPの雰囲気になっています。

歌広場:演歌とポップスをどちらも歌ってみて、いかがでしたか?

辰巳:ずっと演歌しか歌ってこなかったぶん、楽しかったですね。時代の流れもあり、演歌歌手も最近はいろんな歌番組に出演させてもらう機会が増えました。番組では、演歌以外の曲を歌ってくださいと言っていただく機会も多いんです。今回のアルバムでもポップス盤は自分にとって新しい挑戦だったし、歌の幅も広がりました。今後ももっといろんな曲を歌ってみたいと思うようになりました。

歌広場:僕、レコーディングがどういうものか一切知らないんですが(笑)。レコーディングに特に時間がかかった曲はありますか? 

辰巳:演歌は1曲あたり1時間ほどでだいたいはレコーディングを終えるんですが、今回ポップス盤の収録曲は苦労しましたね。「星空のMerry Christmas」は3日間ほどかけて、何度もも録り直しました。

歌広場:それは、気を付けないとコブシが出ちゃう、とか?

辰巳:それはあります(笑)。あと、演歌の場合はある程度曲構成の流れが決まっていて、そのパートに合わせて歌い方がパッと出てくるんですけど、J-POPの曲はどうやって歌うのが正解なんだろう? と、J-POPの歌い方の引き出しがないので悩みました。

歌広場:普通に歌っても演歌っぽくなってしまうんですね。実は僕も同じなんですよ。カラオケに行って、J-POPを歌っても「なんかヴィジュアル系っぽいね」と言われる。その時いつも言うのが「いやあ、Vの血が流れてるからさ」と(笑)。演歌の場合は、「Eの血が流れてる」なのかな。

辰巳:Eの血! そうかもしれないです(笑)。

歌広場:では、一番早く録り終えた曲は?

辰巳:「惚れて千両・無法松」は、たぶん2、3回しか歌ってないです。1時間もかかっていないと思います。

歌広場:〈酒と喧嘩は度胸と意地で〉という歌いだしですけど、酒と喧嘩に無縁そう!(笑)

辰巳:(笑)。でも、演歌は本当にこういう歌詞が多いんです。それを主人公になりきって歌うということかもしれないです。演じる歌とも書きますし。

歌広場:本当だ! その感覚はヴィジュアル系も似てますね。「普段は地味なんです。でもメイクをすると派手に演じれるんです」みたいなのがゴールデンボンバーなんです。それまでのヴィジュアル系は、「普段から薔薇の風呂に入ってます」みたいなテンションだったんですけど(笑)。そういうふうに見せてますけど「実はコンビニでバイトしてるんですよ」って、正直に言っちゃおうというのがゴールデンボンバーで、そこがうけたんですよね。演歌もそれと同じで、「酒と喧嘩」に明け暮れたこともないし、〈祇園太鼓をやぐらの上で〉叩いたことがなくても、説得力を持ってみなさんにお届けしたいので、「今の僕にしかできない演歌を聴いてください」というスタンスが、今の辰巳さんのポジションなんだろうなと、勝手に今思っちゃいました。

辰巳:はい。その通りだと思います。

歌広場:VとEの共通点が見えてきました。そして今、辰巳さんは演歌歌手でありながら、現役の大学生でもあるわけですね。絶対モテモテでしょう!

辰巳:いえ、全然(笑)。

歌広場:僕がゴールデンボンバーに入ったのは大学3年生の時だったんですけど、人生で一度だけのすごく楽しい忘れられない思い出は、ライブに出るためにテストを受けられなくて単位を落としたこと。これは勲章だと思ってます。それで半期留年してさんざんな目にあったんですけど……。大学の友達もきっと皆辰巳さんの活躍に注目していますよね。

辰巳:でも、めっちゃいじられますよ。この前『めざましテレビ』を見てくれた友達がLINEをたくさんくれたんですが、「普段と違うな〜」と言われました。僕は大阪出身なんで、普段は関西弁だし普通の大学生なので、友達とわちゃわちゃしているんですよ。

歌広場:全然想像できない(笑)。

辰巳:素を知ってる友達からしたら「格好つけてんな〜」って感じですよね。淳さんも、大学生とゴールデンボンバーさんを両立されていたんですね。

歌広場:僕はヴィジュアル系なんかを…いや「なんか」って言葉をあえて使いますけど、ヴィジュアル系なんかを好きなので、大多数の人と同じような穏やかで調和のとれた人生を一回捨ててるんですね。それで就活のタイミングでゴールデンボンバーに入ったんですけど……当然、周りは大反対しますよね。僕は自分ではわかっていて、バンドなんて、売れるか売れないかの二つに一つで、売れないほうが圧倒的に多い。でもゴールデンボンバーには「売れる」「売れない」の他に第三の道があるなと思ったんです。もしかしたら武道館でライブをすることはできないけど、ほかには代わりがいない特殊なバンドなので、月に2回、500人ぐらいのライブハウスだったら埋められるんじゃないか?と。つまり、商業的な価値は出なくても、希少価値は生まれると思ったわけです。なので「普通だったら二分の一のところを、ゴールデンボンバーなら三分の二の確率で価値が生まれるので、やらせてください!」と親に言って、バンドに入ったんですよ。厳密に言えば全然理屈になってないんですけど、「ゴールデンボンバーは三分の二、生活できるんです!」とか言って、無理やり説得して(笑)。辰巳さんは、演歌という自分の進路の方向性を早くから決めていたということですよね。

辰巳:でも僕も、本当に歌手になれるのか、わからなくて迷っていた時期はありました。大学生になって、大阪から上京してくる時には、デビューできるという約束も何もなかったので、もしもダメだったら英語の教師になろうと思っていたんです。だけど上京してからストリートライブを始めて、僕が歌うと誰かが足を止めて聴いてくれたり、喜んでくれたり、泣いてくれたりするのを見て、歌ってすごい力があるんだなと。そういう仕事は、誰でもできることじゃないじゃないですか。この仕事はすごく誇りのある仕事で、演歌が好きなことをずっと隠してきた自分が、逆に恥ずかしくなったんです。あと、自分が演歌歌手を目指してることを知って、「どうせ売れないよ」なんて言われたりするじゃないですか。

歌広場:僕も死ぬほど言われました。

辰巳:それでいざデビューして、日本レコード大賞の最優秀新人賞(2018年)を頂いた時には、いい意味で見返したという気持ちがありました。だから、今は演歌歌手であることを誇りに思っていますし、この道に進むことを決めて良かったなと思います。Eの道に(笑)。

歌広場:かっこいい! 演歌の様々な側面を楽しく紹介していただいて、演歌の素晴らしさを広めていく人がもしもいるとすれば、僕みたいな演歌を全然知らない人も耳を傾けようと思うのは、辰巳さんのような方だと思うんです。ぜひ演歌ソムリエになっていただきたい。

辰巳:はい! 今までそういう感覚はなかったんですけど、やってみたいと思います。

歌広場:辰巳さんは、演歌歌手というプレイヤーでありながら、演歌のサポーターでもあると思うんです。これからもたくさん語っていただいて、僕はそれを受け取りたいなと思います。これからも、お互いの道を進んで行きましょう。そしてどこかでまた交わりますように。本日はありがとうございました。

辰巳:こちらこそ、ありがとうございました!

(取材・文=宮本英夫/写真=池村隆司)

■辰巳ゆうと リリース情報
『辰巳ゆうとファーストアルバム -力いっぱい、歌いました!-』
発売:12月25日(水)
DISC1 【演歌&歌謡曲盤】
1.惚れて千両・無法松(オリジナル新曲)
作詩:久仁京介 作曲:影山時則 編曲:工藤恭彦
2.おとこの純情(セカンドシングル)
作詩:久仁京介 作曲:徳久広司 編曲:南郷達也
3.アメリカ橋(オリジナル:山川 豊)
作詩:山口洋子 作曲:平尾昌晃 編曲:周防泰臣
4.夢芝居(オリジナル:梅沢富美男)
作詩・作曲:小椋 佳 編曲:周防泰臣
5.鶴が舞う(オリジナル新曲)
作詩:水樹恵也 作曲:桧原さとし 編曲:中島慶久
6.下町純情(ファーストシングル)
作詩:久仁京介 作曲:徳久広司 編曲:南郷達也

DISC2 【ポップス&ニューミュージック盤】
1.私鉄沿線(オリジナル:野口五郎)
作詩:山上路夫 作曲:佐藤 寛 編曲:阿部靖広
2.青春II(オリジナル:松山千春)
作詩・作曲:松山千春 編曲:工藤恭彦
3.初恋(オリジナル:村下孝蔵)
作詩・作曲:村下孝蔵 編曲:多田三洋
4.桜坂(オリジナル:福山雅治)
作詩・作曲:福山雅治 編曲:阿部靖広
5.ペガサスの朝(オリジナル:五十嵐浩晃)
作詩:ちあき哲也 作曲:五十嵐浩晃 編曲:阿部靖広
6.星空のMerry Christmas(オリジナル新曲)
作詩・作曲:武田城以 編曲:鈴木 豪

■ゴールデンボンバー リリース情報
アルバム『もう紅白に出してくれない』
発売:2019年12月28日(土)
<CD+DVD>
価格:¥3,300(税抜)
<CDのみ>
価格:¥2,700(税抜)
CD収録曲:
01. 令和
02. 首が痛い
03. ガガガガガガガ
04. LINEのBGMにしてるとモテる曲
05. かまってちょうだい///
06. ぼくの世界を守って
07. 振動
08. タツオ…嫁を俺にくれ
09. 私すっぴんブスだから
10. 君のスカートが短くて
11. つよいぞ!ロボヒップ
12. 暴れ曲
13. 犬じゃあるまいし
14. ぺしみずむ
15. さらば
おまけトラック:
タツオ…嫁を俺にくれ(鬼龍院翔 Vocal ver.)
DVD収録内容:
01. 祝!紅白落選
イイ波乗りてぇ!人工波でサーフィンに挑戦!
02. やったことないことやってみようシリーズ
催眠術ってホントにかかんのか!?「ザ・催眠」
詳細ページ

DVD『ゴールデンボンバークリスマスライブ ~聖夜の再陀魔~at 大宮ソニックシティ
 2019.12.24』
発売:2019年12月25日(水)
価格:¥2,500(税抜)
詳細ページ

Blu-ray、DVD
『ゴールデンボンバー全国ツアー2019「地方民について本気出して考えてみた~4
年以上行ってない県ツアー~』、神戸ワールド記念ホール公演、横浜アリーナ公演、無人島公演
発売:2020年3月5日(木)
詳細ページ

■ライブ情報
ゴールデンボンバー全国ツアー2020 開催
詳細ページ

辰巳ゆうと HP
ゴールデンボンバー HP

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