欅坂46、「月曜日の朝、スカートを切られた」で表現した“ディストピア”とは? 『FNS歌謡祭』ステージから見えたこだわり

欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』(通常盤)

 惜しむらくは、テレビサイズでの披露となったため2番をカットして間奏に移った点である。これによりセンター平手を見て嘲笑っていた集団が、急に苦しみだすという突然の飛躍が起きてしまった。曲の設定上は問題ないと思われるが、少々違和感の残る場面になってしまっている。時間の都合上、止むを得ないことは承知の上で、やはり演劇的な要素の強い作品ゆえに、ぜひフル尺でのパフォーマンスが見たかったというのが正直なところだ。

 しかしそれと同時に、番組側の強いこだわりが伝わってきたのも事実である。今回の番組セットを手掛けたという制作部が「床のタイルをわざと無特定化して、切り裂かれたイメージ」「尖らせずに彼女らの若さを維持させるように」とツイートしているように、楽曲やグループ性を理解した上で舞台セットを用意していたのが確認できる(参照)。カメラワークも秀逸だった。ステージで何が起きているのかという全体像を捉えるような俯瞰位置や、絵画のワンシーンかのようなメンバーを引き摺る場面での斜めからのカットなど、パフォーマンスを引き立てる立体的なカメラワークだと感じた。そして何よりも照明である。前半の薄暗く青い照明から、静寂に包まれた瞬間はモノクロの世界、そしてダイナミックなダンスで畳み掛ける終盤はグループカラーでもある緑色……と、ストーリー性のあるライティング。加えて、この曲の最も重要な箇所である最後の〈私は悲鳴なんか上げない〉から、全員がフォーメーションを組むまでの一連の流れにおける照明の演出とカメラワークは見事と言うより他ない(カメラが中央3人にフォーカスした際の光加減たるや!)。彼女たちの”世界観をより的確に伝えるため”という姿勢が番組スタッフとシンクロした瞬間だったと言えるのではないだろうか。

 さて、同番組「第1夜」のクリスマスメドレーではアイドルらしい笑顔を見せていた彼女たちだが、このように「第2夜」では一転してグループのらしさを発揮。番組終盤の堂本剛FUNK同好会ではしっかりとコーラス役に徹する姿も見受けられ、『FNS歌謡祭』全体を通して与えられた役目を全うした欅坂46。今年は披露曲を限定せずに様々な面を見せている彼女たちなだけに、『NHK紅白歌合戦』まで残りの期間をどんな楽曲で攻めていくのかにも注目だ。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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