ChouCho、『naked garden』で表現するアニソンとアコースティックサウンドの魅力「素の歌を届けたい」

ChouCho、『naked garden』で表現する素の歌

μ’s、メロキュアにリスペクトを込めてカバー

ーー今作は、新曲の「リコリス」を除いて、アコースティックライブで評判の良かった楽曲を選曲して制作。アコースティックアルバムをリリースするアイデアは、いつから考えていたんですか?

ChouCho:2015年にアコースティックシングル『transient blue』を出したことがあって、それは3曲入りでライブ会場限定発売だったので、アコースティックライブを始めた時から、いずれは出そうと思っていました。次が10回という区切りでもあるので、記念的な意味も含めて今回満を持してお届けしよう、と。

ーーまず新曲の「リコリス」は、歌から始まる切ない楽曲。ピアノとカルテットのサウンドで、ドラマチックに展開します。タイトルの「リコリス」は彼岸花のことで、とても悲しい事に直面した時に書いた曲だそうですね。

ChouCho:聴いていただいた通り、私が深い悲しみに直面した時に溢れ出た思いを歌詞にして、そこにメロディを乗せて作っていきました。ある出来事の直後に作った曲で、今聴いても涙が出ますし、歌詞を書いた時もずっと泣いていました。初めて歌詞先行で作った曲で、こんなにも自分の感情をそのまま表現したのも初めてのことです。

ーー生々しい感じがありますね。

ChouCho:そうですね。でも、書かなきゃ自分が前に進めないと思ったんです。だから自分が前に進むための決意の意味もあります。ただ自分の感情ではあるんですけど、決して独りよがりにはしたくないという気持ちもあって、どんな人が聴いてもその人の経験に当てはまるように、言葉を選んで書いています。悲しい曲ですけど、最終的には希望を感じてもらえるものにしたいと思って作りました。

ーーアカペラで始まるところから、グッと引き込まれます。

ChouCho:最初はピアノと歌で始まる想定だったんですけど、レコーディングしている途中でアカペラが良いんじゃないかというアイデアが出て。それで急遽、冒頭はアカペラで歌うことになりました。

ーー自分の経験を歌にしたことで、自分の中でそれが消化された感じですか? 整理を付けることができたと言うか。

ChouCho:消化や整理ができたかと言えば、そうではないのですが……。ただ、自分の経験を言葉ではなく歌で語ることができたのは、歌手になったからであって、私はそういうことがしたいから曲を作っているのだと改めて思いました。ここまで深い部分を飾らない言葉で曲にしたのは初めてで苦しかったんですけど、今回で終わりではなくて、これからもそういう曲をもっと作っていきたいと思いました。

ーー今作には、カバーを3曲収録。まず「Snow halation」は、『ラブライブ!』のμ’sが歌った曲で、今の時期にもぴったりの選曲。

ChouCho:アンケートでもリクエストが多くて、アコースティックライブでも歌ったことがあります。原曲はすごくアップテンポでキラキラとした曲ですけど、私はグッとテンポを落としてカバーしました。アコースティックアレンジにしてもメロディのきれいさは変わらずで、むしろ新たな魅力を発見することができました。アニメファンの支持率の高さの理由を改めて納得しました。

ーーテンポをゆっくりにしたことで、“大人の「スノハレ」”になったという印象でした。

ChouCho:確かにそうかもしれませんね。このテンポは、アレンジの村山☆潤さんとスタジオに入って、テンポを替えながら何度も歌って決めていったんです。遅くすることで歌詞の言葉一つ一つが聴く人により伝わると思ったので、ひと言ひと言を噛みしめるような気持ちで歌いました。『ラブライブ!』のファンの方にもぜひ聴いていただいて、「Snow halation」の可能性を感じてほしいです。

ーーアニソンの新旧の名曲2曲が揃っているのもポイントで、アニメ『円盤皇女ワるきゅーレ』の挿入歌「Agape」のカバーも収録。こちらは、パーカッションも入ったアコースティックバンドのセットで、テンポ感はあまり変わらず速いままですね。

ChouCho:私がメジャーデビューする前、ニコニコ動画で「歌い手」として活動をしていた時に、イベントで他の歌い手さんとデュエットしたことがあって。その時に「すごく良い曲だ!」と、改めて気づいたんです。アコースティックライブをやる時にはぜひこの曲をやろうと思っていて、今回のアルバムにも収録したいと思いました。ただすごく難しい曲で、サビメロは息継ぎする隙間がないほどです。

ーーメロキュアが歌った伝説の曲です。2002年の曲で、90年代のJ-POPのエッセンスが残っていて、そこも魅力ですね。

ChouCho:とても病みつきになる魅力がありますね。一度聴くと、ずっと頭の中でぐるぐるしているくらい耳に残るメロディと、ベースラインが印象的です。「スノハレ」もそうですが、カバーをやる時は楽曲の良さを絶対に殺したくはなくて、楽曲に対するリスペクトの気持ちを大事にして録りました。

ーーそしてJ-POPのカバーとして、スターダスト☆レビューの名曲「木蘭の涙」も収録しています。

ChouCho:この曲もアコースティックライブで歌ったことがあるのですが、スターダスト☆レビューさんの曲は、父親が好きで子どもの頃から慣れ親しんでいました。でも大人になって改めて歌詞を読んで、こんなに切ない内容だったんだと驚きました。

ーー歌詞の根底にあるものが、「リコリス」と同じなんですよね。

ChouCho:はい。スターダスト☆レビューさんがこの曲を歌っているライブ映像も観たんですけど、曲と歌詞の素晴らしさはもちろん、歌声も本当に素晴らしいので、それにもすごく感動しました。「良い」なんていう言葉では表現しきれないほどで、本当に切ないし。それで、ぜひ私も歌ってみたいと思いました。

ーーアニソンではないですけど。

ChouCho:アコースティックライブで披露した時に、アンケートの「今日良かった曲は?」という質問の答えで、「木蘭の涙」を書いてくださった方がすごく多かったんです。私がこの曲から感じた思いが、聴いてくださった方にも届いたんだなと実感しました。だからアニソンではないけど、アルバムにもぜひ入れたいと思いました。

ーーファンにこういう曲があることを知ってほしい気持ちもあるでしょうね。

ChouCho:そうですね。若い方はきっとご存じないでしょうけど、良い曲はどんなアレンジでも魅力を損なわないのと同じで、良い曲はアニソンとかJ-POPとかジャンルに関係なく、良いと思ってもらえるものだと思っています。今作に洋楽は入っていませんが、ライブではマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」やOasisの「Wonderwall」など洋楽カバーも歌って好評なので、いつか私のルーツと呼べるいろんなジャンルの楽曲を一堂にカバーしたアルバムも出せたらいいなと思っています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる