メトロノームが語る、“再起動”を経た21年目への自信「僕らが一緒にいることは初めから決まってたこと」

メトロノームが語る、活動21年目への自信

20年もひとつのバンドとして存在できる確率はそうとう低い 

ーー最新作『確率論≠paradox』は本当にメトロノームの新たな可能性がたっぷり詰まった作品だと思います。制作はどのように進んでいったんですか?

フクスケ:3人で持ち寄った楽曲の中からまずメイン曲を決めて、後は各々の楽曲から入れたいものを自己申告していく流れですね。制作の途中で全体を見ながら差し替える場合もあったりはしますけど。

ーー基本の持ち枠は3曲とのことですが、各自それ以上の楽曲を持ち寄るんですか?

フクスケ:リウは立派な大人なので多めに持ってきますね。で、僕とシャラクの同級生チームはちょっと少なめなタイプ。たまに3曲に到達しないときもあるんですけど(笑)、今回はどうだったかな?

リウ:シャラクくんは5曲、フクスケくんも4曲あったから、いちおうノルマはクリアしてたよね(笑)。ちなみに僕は6曲出しました。

フクスケ:リウは作ってくる数も多いし、それぞれのデモをガッツリ仕上げてくるからえらいんですよ。シャラクにいたっては、たまに「これ鼻歌か?」みたいな状態のときもあるんで(笑)。

シャラク:ドラムとベースのルートだけ入れて、あとは「♪ナナナナ~」みたいなことがありますね。それがなぜか採用されることもあるんですけど(笑)。

フクスケ:シャラクは昔からそういうデモをよく作ってくるんですけど、シャラクが作ったならなんとかなるだろうみたいなところがあるからね。僕の場合は作りこむものと作りこまないものの差が激しいんで、リウとシャラクの中間くらいだと思います(笑)。

ーー今回収録されているご自身の楽曲に対しては、どんな傾向があると思いますか?

リウ:アルバムの制作前に、マスタリングエンジニアさんやキングの担当の方たちと“サビの抜け感”について話す機会があって。それを忘れないようにメモしておいたんですよ。なので今回は“サビの抜け感”を第一に考えてひたすら曲を書いたので、いつもよりもポップというか、歌がスッと入ってくる曲になっているような気がしますね。

ーー「憂国の空」はすごくいい曲ですよね。

リウ:ありがとうございます。今回作った6曲は全部ジャンル的に違ったもので、どれも自信作ではあったんですけど、この「憂国の空」はちょっとメロディアスすぎるからうまくまとまるかなっていう若干の不安もあって。でもシャラクくんの歌に絶対合うと思ったし、オートチューンがかかることでサビがすごくきれいになるだろうなっていうイメージは明確にあったんです。結果、すごくいい仕上がりになったので良かったですね。

フクスケ:僕は今回の曲で言うと、「脳内消去」に尽きる感じですね。今回のアルバムを作るにあたって、衣装をちょっとスタイリッシュにしたりとか、おしゃれテクノっぽい曲を入れたいなっていうイメージを提案したんですけど、実際そういう曲を自分ではなかなか作ることができなくって。で、制作期間のギリギリ最後にできたのが「脳内消去」だったんです。「あー、やっとできた!」っていう気持ちでしたね。

ーーせつない恋心を描いた歌詞もいい雰囲気です。

フクスケ:今回、僕が作った曲には「脳内消去」と「忘れん坊」っていう“忘れる”曲がふたつあって(笑)。「忘れん坊」は勝手に忘れていく曲なんですけど、「脳内消去」は自分から忘れていく曲なのでちょっとせつないっていう。個人的な趣味としては「忘れん坊」のようなちょっとふざけた歌詞が好きなんですけど、作詞をしていて楽しいのは「脳内消去」のようなタイプではありますね。

ーーシャラクさんはどうですか?

シャラク:再起動してから前作の『廿奇譚AHEAD』までは、みんなが思うメトロノームらしさを意識していたんですけど、去年の暮れあたりから「自分がただただやりたいことをやってもいいんじゃないかな」と思うようになって。そこでできたのが「Catch me if you can?」と「テンションゲーム」だったんです。だから、この2曲に関してはメトロノームらしさというよりは、いちロックバンドみたいな感覚で、バンドキッズがコピーしたら楽しいような曲になったと思います。で、さっき話に出た、「よくこんなデモを出したな」っていう状態だったのが11曲目の「まだ見ぬ世界」で。

ーーこれが鼻歌デモだったんですね。仕上がりはものすごくキラキラした雰囲気で、アルバムのエンディングにふさわしい1曲になっていると思います。

シャラク:はい。デモの段階でなんとくこんな曲になりますっていう説明はしたんですけど、結果的にはまったく違った感じで完成しました(笑)。

フクスケ:かなり変わったよね。この曲はギターが入ってないので、リウがミックスし終えた段階で初めて聴いたんですけど、「あれ、こんな曲あったっけ?」って思いましたから(笑)。

リウ:あははは。

シャラク:デモのAメロでは「ヴォーヴォー」みたいな感じでガナって歌ってますアピールをしていたんですけど、全然普通にメロディに変わってましたね(笑)。

ーー牧歌的な雰囲気の「そうだ手紙を書こう」も僕はすごく好きで。「みんなのうた」で使われてもおかしくない雰囲気だから、ぜひ子供にもおすすめしたい。

シャラク:元々、別の曲をアルバムに入れる予定だったんですけど、急にこの曲がパッとできて。自分的に「こっちのほうがいいな」と思ったので変えさせてもらいました。これはとにかくシンプルなサウンドで、明るいんだけどちょっとせつない感じが出せたらいいなと。最近、メトロノーム以外の活動の中で、大先輩と弾き語りでライブをする機会がけっこう多いんですよ。そういった経験を通して、ギターと歌だけで成り立つような曲を作れる人になりたいなって思ったのが、これを作ったきっかけではありますね。

ーーまた、リウさん作曲、シャラクさん作詞による「とある事象」が本作のリード曲になっています。先行シングルだった「Catch me if you can?」とは違ったタイプの曲をリードにすることで、今のメトロノームの懐の深さが伝わってくるなと。

フクスケ:どれをリードにするかは基本的に多数決なんですけど……。

リウ:自分の曲ながら、マニアックな曲が選ばれたなと思いました(笑)。まあでもシャラクくんの歌詞が乗ることですごくいい雰囲気にもなったし、MVになって映像で見るとすごく映えるので、選ばれて良かったですね。

メトロノーム/「とある事象」Music Video(full version)

ーーではアルバムタイトルに込めた思いも教えてください。

フクスケ:去年20周年を迎えたときに思ったんですよ。これだけ地球上に人間がいる中で、20年もひとつのバンドとして存在できる確率はそうとう低いことなんだろうなって。その奇跡みたいなことに僕はすごく感動したんです。でも、21年目からもっと勢いを増して進んでいくには、その20年が確率ではなく初めから決まっていたことなんだって思ったほうがいいよなって気づいて。メンバーも、お客さんたちも、僕らが一緒にいることは初めから決まってたことなんだよっていう、そんな可能性を信じて「確率論≠paradox」というタイトルに決めました。

ーーそんな思いを込めて作り上げた本作を引っ提げたツアー『醍醐味カルチベート』も間もなくスタートしますね。

フクスケ:“カルチベート”には“耕す”とか“才能を高めていく”みたいな意味があるので、このツアーを通してメンバーそれぞれの色や、メトロノームの持つ醍醐味をしっかり育てていけたらいいなと思っています。

シャラク:僕らにとって21年目っていうのはすごく大事な時期だと思うんです。なので、その締めくくりとなるツアーは絶対いいものにしようと思ってます。空気が乾燥するこの時期、僕はすぐ喉をやられてしまうので、そこに気をつけながら頑張ります。

リウ:激しいとか勢いがあるとかそういう部分だけじゃなく、ライブ映えする、画が見えるアルバムを作ることができたので、それをライブという場でもしっかり表現できたらなと。VJさんの力を借りつつ、最高のショーをお見せしたいと思います。

ーー20年を超えるキャリアを持ちつつも、今のメトロノームには新人バンドのような痛快な勢いがあるように思います。これからの活動も楽しみにしていますね。

フクスケ:活動休止していた7年間でやれることも増えたし、メトロノームとしてやりたいこともまだまだありますからね。まだまだいけますよ(笑)。

(取材・文=もりひでゆき)

■リリース情報
『確率論≠paradox』
発売:2019年11月20日(水)
【初回生産限定メト箱(CD+DVD)】¥5,000(税抜)
【通常盤(CD)】¥3,000(税抜)

■ライブ情報
『冬季巡礼「醍醐味カルチベート」』
12月7日(土)umeda TRAD
12月8日(日)名古屋CLUB QUATTRO
12月14日(土)福岡DRUM Be-1
12月15日(日)広島SECOND CRUTCH
12月22日(日)川崎CLUB CITTA'

『メトロノームpresents COUNTDOWN≠paradox→2020』
12月31日(火)品川インターシティホール

オフィシャルサイト

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