嵐、『ベストアーティスト』で見えたグループの“現在”と“これから” 「君のうた」「Turning Up」のパフォーマンスを振り返る

 対して、その後披露された「Turning Up」から色濃く感じられたのは、“これからの嵐のテーマソング”であること。同曲では、ミクスチャーなアプローチが効いたチルなサウンドと、それに相反するテクニカルで歯切れの良い振り付けが目を引く。

ARASHI - Turning Up [Official Music Video]

 注目すべきは、振り付け自体はキャッチーさはないものの、5人が踊ることによって唯一無二の華やかさと印象深さが感じられる絶妙な仕上がりになっている点だ。ヒップホップの音感が指の先まで染みついているかのようなリズム感と豪快さが光る櫻井。ダイナミックながらも不思議な優雅さを感じられるしなやかな所作が印象的な相葉。曲線的な振り付けが一際セクシーに決まる松本。時にハンサムに、時に可愛らしさすら感じられる豊かな表情が魅力的な二宮和也。そして指の先まで洗練された無駄のない動きで魅了する大野智。5人それぞれの個性を媒介することによって、振り付けの魅力、楽曲の魅力がより一層引き立てられる。

 のびのびと、全力でパフォーマンスする5人の姿からは、20年間アイドルとして最前線を駆け抜けてきた国民的グループとは思えないほどの瑞々しさと、20年の年月で培われた大人のアイドルとしての余裕が感じられた。日本のアイドル楽曲としては良い意味で異彩を放つサウンドの力や、〈世界中に放て Turning up with the J-pop!〉のワンフレーズからは国境を軽やかに越え、世界中にJ-POPを広めていこうという新たな決意がひしひしと伝わってくる(サビ部分が比較的真似しやすい振り付けになっているのも、そうした意識によるものであるように思える)。

 パフォーマンス前に、司会の羽鳥慎一からSNSを使いこなせているかどうか質問された相葉が「正直、ついていけません!」と照れくさそうな表情で答えていたのも印象深い。決して器用なエリートタイプではない嵐のなかでも一際不器用で実直なイメージの相葉から飛び出した素直な言葉は、新しい方法でのファン/リスナーとのコミュニケーションの方法を模索し、恐れずに挑戦を続けていこうという心意気を感じるさせた。

 同放送で、YouTubeではリーチしきれなかった層にも「Turning Up」が浸透したのは間違いないだろう。国内外を問わず「嵐」という扉からJ-POPに触れ、その奥深さを知っていくリスナーは、今後どんどん増加していくはずだ。“J-POPの入り口”としての役割に誇りを持ち、積極的に世界と繋がろうと歩みを進める嵐の、まるでデビュー曲を披露するかのような決意と自信に満ちた姿に胸が熱くなるパフォーマンスだった。

■五十嵐文章(いがらし ふみあき)
音楽ライター。主に邦楽ロックについて関心が強く、「rockinon. com」「UtaTen」などの音楽情報メディアにレビュー/ライブレポート/コラムなどを掲載。noteにて個人の趣味全開のエッセイなども執筆中。ジャニーズでは嵐が好き。
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