赤い公園は“決まった型”にはまらないーー『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』で見せる挑戦的なスタイル

赤い公園がライブで見せる挑戦的なスタイル


 そのことをより強く感じさせたのが、『消えない - EP』の収録曲を披露した際。収録曲5曲のうち、今回のツアータイトルにもなっている「Yo-Ho」以外は前回のツアーでも披露されていた。音源と比べてみても、今回のツアーへ向けての細かなライブアレンジが見られる。中でも驚いたのが、メロウなビートが乗るヒップホップ「Yo-Ho」。赤い公園としても初の試みの楽曲であるだけに、ライブアレンジも決まった型にはまらない、はまろうとしない、バンドのスタンスが垣間見える。『消えない - EP』のアートワークは、担当したskydiving magazineが「消えない」にインスピレーションを受け、“周囲に同化しないカメレオン”を描いたというが、その思いは4人も一緒のはずだ。

 『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』では、赤い公園の既存曲、『消えない - EP』収録曲、そしてさらなる未発表曲が披露された。セトリに組まれた新曲を聴いて感じたのが、キャッチーな曲調とメッセージ性の強さ。一度聞いただけで、帰り道で口ずさめるほどにポップでありながらも、どこか変態性も孕んでいる、津野の記名性が光る楽曲が並ぶ。

〈こんな所で消えない/消さない〉(「消えない」)

〈片道切符で僕ら未来へ行こう〉(「HEISEI」)

 この2曲は、赤い公園のこれまでとこれからを歌った楽曲だ。今の赤い公園は運命のような巡り合わせをした奇跡のバンド。『消えない - EP』がたくさんある新曲の一部であるように、今見ている赤い公園もさらに進化していく前の形なのかもしれない。そう期待させる勢いと可能性を彼女たちは身に纏っている。以前、津野はパーソナリティを務める『赤い公園 津野米咲のKOIKIなPOP ROCKパラダイス』(NHK-FM)にて、赤い公園として目指す場所を“大きな景色”と明言していた。満員となったEX THEATER ROPPONGIの光景を見て、赤い公園について行けば、“大きな景色”を見せてくれるのだと、強く確信した。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

赤い公園 オフィシャルサイト

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