Baby kiy、SNS時代に求められる本質的な美しさ 全国ツアー最終日に感じたアイコンとしての魅力

 多彩な魅力でファンの心を掴んで離さないBaby kiy だが、そのポテンシャルを一番発揮させたのは「Rainbow」ではないだろうか。10代の頃、人生で最初に作ったという曲は、あまりにも繊細で力強い。一つひとつの言葉を手渡すように歌う姿が印象的で、誠心誠意の思いを歌に詰める彼女に会場中が吸い込まれていった。

 アップテンポなバンドインストを挟み、Baby kiy はオフホワイトのワンピースに衣装チェンジ。クリーントーンのギターソロが涙を誘う「Your eyes」を歌い上げ、後半戦のアクセルをグッと踏み込んだ。その後も「To The Paradise」「Kiss goodbye」と、多彩な表現を展開。サーフボードで波を乗りこなすように、音楽の大海原も華麗に浮かんでみせた。

 「All About You」をインストで奏でると、その流れに乗っ取って「Lazy Boy」へ。アルバム発売前とはいえ、音源と同じ流れを生演奏で聴かせるのは粋な演出である。「新曲を聴いてください」と告げ導かれたのは、「GIRL FRIEND」。抑揚が鮮やかについた王道ポップスに仕上がっており、女性特有の凛とした強さを感じさせた。過去の日々を懐かしむように「Hummingbird〜キセツハズレノハナビ〜」を声で紡ぐと、いよいよライブも終盤。ラストソングとなったのは、Baby kiyを語るうえで欠かせない1曲の「Stay Together」だ。この曲だけは撮影OKということで多くのレンズが彼女に向けられたのだが、その全てに楽しそうな表情を向ける姿が印象的だった。その様子はBaby kiyというシンガーが、“ファンと常に一対一で向き合ってきた証明のひとつ”と言っても過言ではないのではないだろう。アンコールでは「Don’t Let Me Go」で会場を盛り上げ尽くし、ツアーファイナルを締めくくった。

 必要以上に眩しいものに、現代は溢れている。だからこそ、ナチュラルで体の芯から美しさが溢れているBaby kiyのような存在が、時代を柔らかく灯してくれるのではないだろうか。『All About You』を発売し、新たな魅力を開花させた彼女から今後も目が離せない。

(取材・文=坂井彩花)

Baby kiy 公式サイト

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