土岐麻子やCharaの音楽性はなぜアップデートし続けるのか? 近作の傾向から探る

 2004年にソロデビューしてから15年。通算10枚目のアルバムにして「シティポップ」の新たなるスタンダードを確立させた土岐麻子。キャリアを重ねながらも作品ごとにアップデートを繰り返し続けているのは、彼女が自分より下の世代のミュージシャンやクリエイターと、積極的に交流を重ねていることも理由の一つとして考えられるのではないだろうか。

 そういう意味では、昨年『Baby Bump』をリリースしたCharaも同様。サウンド的には彼女のルーツであるソウルやファンクに立ち返りながら、LUCKY TAPESのKai Takahashiや、TENDREこと河原太朗、mabanuaといった新進気鋭のアーティストを迎えることで、現在進行形のサウンドプロダクションを構築していた。最近のツアーでも、CRCK/LCKSの小西遼(Sax)をバンドマスターに迎え、同じくCRCK/LCKSから越智俊介(Ba)、松本ジュン(Key)ら若手ミュージシャンを呼び寄せるなど、新しいものへの嗅覚は相変わらず鋭い。常に好奇心を持って新しいことにチャレンジし変化し続けていった結果、今のチーム〜交友関係が形成されていったということなのだろう。

 一度築き上げたスタイルに拘泥したり、現状維持に甘んじたりすることなく、常に新たな挑戦をし続けアップデートを繰り返している土岐麻子とChara。彼女たちが今後、どのような景色を私たちに見せてくれるのか。今から楽しみでならない。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。ブログFacebookTwitter

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