サポートミュージシャンが広げる可能性:高井息吹、吉澤嘉代子ら作品でも発揮される君島大空の手腕

 高井と坂口の2人以外にも、7月には「プログレポップピアノ弾き語り」を自称する川﨑レオンの配信シングル『MUSIC / Nikko』に参加し、ここではギター以外に録音、ミックス、マスタリングまでを担当。また、9月に発表されたTAMTAMのボーカリストであるkuroの初のソロアルバム『JUST SAYING HI』では、R&B/ヒップホップ系のトラックメイカーに混ざって、「虹彩」のプロデュースを担当し、作品の重要なアクセントに。さらには、『7RULES』(フジテレビ系)のために書き下ろされた吉澤嘉代子の楽曲にも編曲で参加。2人は8月にライブでも共演を果たしていて、今後のさらなるコラボレーションに期待が募る。

 このように、君島はまだソロとしてのキャリアこそ浅いものの、すでに数多くの女性シンガーソングライターの作品に関わり、音楽家としての確かな手腕を発揮している。その分、自身は歌の力で勝負するシンガーソングライターに対するある種のコンプレックスも感じていたようだが、それでも現在の君島は替えの効かない自らの声と、自らの音を組み合わせることで、「個」としての表現を世に問おうとしている。11月には初の合奏形態でのツアー『君島大空合奏形態 夜会ツアー“叙景#1”』が開催され、石若と新井とともにフジロックに参加し、最近では中村佳穂バンドのメンバーとしても知られる西田修大と、やはり君島が作品に関わっているシンガーソングライターのタグチハナをコーラスに迎えた編成でライブが行われる模様。さらなる表舞台へと歩みを進める、その大きな一歩となるはずだ。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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