デーモン閣下が語る、劇団☆新感線との関係性 25年前と現在の感性が交差した『うた髑髏』

デーモン閣下と劇団☆新感線の関係性

ぜひ見出しで「新たに2番を書いた曲がたくさん!」と(笑)。

ーー閣下が劇中曲の歌詞を書く時に、一番意識することは何ですか?

デーモン閣下:その場面を壊してはいけないということかな。どういう場面なのか、むしろその場面がより強調されるものであること。主人公や歌っている人が切ない心情であれば、そういう歌詞でなければいけないし、「さあ行くぞ!」と鼓舞しているような場面であれば、そういう歌詞でなければいけない。岡崎氏が曲を発注される時も、演出のいのうえ氏がそういう発注をしているので、吾輩が頼まれる時も同じで、「曲はこれとこれで場面はこうで、歌うのはこの人だからこういう心情が込められていたらいいですね」みたいなリクエストがある。

ーーそのシーンにおける役の心情と、演じる役者さんのことをイメージして書いていく。

デーモン閣下:その通り。だから非常に作りやすい。単なるオリジナル曲を作る時は、曲が先に出来たとして、その曲からどんなイメージの言葉を紡ぎ出すか、ゼロから世界観を考えなければいけない。主人公が誰で、どういう目線で何を観ているかとか。だけど演劇の中の歌を書く時は、それらを最初から提示してくれているので、こんなにも作りやすいものはない。むしろありがたい!

 それもあって特にバラードは、自分のアルバムで曲を書くとしたらほぼ使わない語彙にあふれている。例えば「いきる」とか「きみ死に給うことなかれ」みたいな曲は、ゼロから自分のアルバムを作る時には、絶対書かない歌詞。だって〈人間が~〉って歌っていて。悪魔だから人間じゃないし(笑)。それを今作では吾輩が歌っているのは、ギャップがかなり面白いんじゃないかな。

ーー最新の『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』では極楽太夫を演じた天海祐希さんが主人公でしたが、女性がメインになるというところでは何か変わったりしましたか?

デーモン閣下:太夫の心情を歌った歌では、もちろん「女心」を意識したから作るときも新鮮であった。ただ必ずしも主人公の歌ばかりを書いているわけではないから。その他大勢の曲もあるし、天魔王は歌ってないけど天魔王のテーマソングみたいなものも作ったし。それこそ「Season月」の時は、極楽太夫が主人公ではなかったけど、極楽太夫の歌も書いた。だから作詞をする上での感覚としては、劇作家の感覚と近いかもしれないね。劇作家は、全部の役の視点を持っているわけだから。

ーー役者さんが歌う場合には、事前に閣下がディレクションみたいなことをされるんですか?

デーモン閣下:いや吾輩はやらない。歌唱指導の人……新感線では右近健一君がいて。彼の指導で「こっちの譜割のほうが歌いやすい」となれば、吾輩がいないところでどんどん変わっていく。歌唱指導というのは歌唱の演出だから、吾輩が口を出すようなことではないし。だから芝居を観に行って、そこで初めて「あれ?」ってなる時が多々あって(笑)。実はそういう譜割の違いも、『うた髑髏』の聴きどころの一つ。『うた髑髏』では、芝居の中で役者が実際に歌った譜割とは違う、吾輩が最初にもらったメロディに当てはめた譜割で歌っている。だから劇団☆新感線の役者が歌ったものと聴き比べると、違うところがけっこうあるんじゃないかな。

ーー映画のディレクターズカット版のような?

デーモン閣下:そうとも言えるかもしれないけど、吾輩は芝居のディレクターじゃないから、“作詞家’Sカット版”かな(笑)。たまにあるじゃない? 原作者のスティーブン・キングが自ら監督を務める映画とか、そういう感じ。

ーー同じ曲でも舞台版とは違うものが、『うた髑髏』にはたくさんあるというところで、舞台では短かかった曲の、フル尺版が多数収録されているのも聴きどころですね。

デーモン閣下:そう。劇中では概ねワンコーラスしか使われなかったが今作では多くの曲で2番以降を書き足した。今作をリリースするにあたっては、表だった宣伝文句でそのことにはあまり触れていなかったんだけど……。特典DVD用に、いのうえ氏、古田氏と座談会をやった時に、「劇団☆新感線のファンは、2番以降が増えていることを知ったら、絶対喜びますよ!」と言ってくれて。だからここは、あえて大きな声で言っておこうかな(笑)。

ぜひ見出しで、「新たに2番を書いた曲がたくさん!」と(笑)。

ーー(笑)。でも何年も前に書いた歌詞に対して、新たに2番以降を書くのは大変ではなかったですか?

デーモン閣下:そこなんだ! 去年書いたものの2番を書くのは、物語や場面をまだ覚えているから、それほど苦労はないんだけど……。でも古いものだと約25年前の曲だから、25年も前に書いた1番の歌詞に対して今年2番を書くというのは、実に面白い体験だった。25年前の自分の感性と、現在の自分の感性がコラボレーションするわけだから。

ーーどうせなら1番から全部書き直したい! と思ったりしませんでしたか?

デーモン閣下:それは無かった。それをやってしまうと「劇中曲」ではなくなってしまうから。ただ25年も経てば作詞能力もそのぶん向上しているわけで、当時の歌詞は今の自分からは稚拙に感じる部分もあったし、英語の文法が間違っていたところもいくつか見つかって。

ーータイトルが変わったものもありますね。

デーモン閣下:「Get The Planet’s Power!」という曲は、当時は「Get The Highland Power」だった。それだと意味がおかしいと、いつも英語の監修をしてもらっている吾輩の配下にいるアメリカ人スタッフから指摘されて。「Rock Age」も今回「The Rock Age」になっているんだけど、Theが付かないと、単なる「石の時代」という意味になってしまうらしくて。

 いつもは必ず配下のアメリカ人スタッフがチェックしていて、英語の歌詞に文法的な間違いはほぼない。でも『星の忍者』の時は、芝居の稽古と並行して書いていたから、チェックしてもらっている時間がなかったり、「CDに残るものじゃないから」とたかをくくって、正しい手順を飛ばしてしまっていたのだ。25年が経って、そのリヴェンジをするチャンスがやってきたわけだ。

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