Perfume、次なる野望はどこへ向かう? 『Reframe』で新たなスタンダード確立するか

『Reframe』の「常設公演」への道

 今年公開された海外メディアでのインタビューで、Perfumeは自分たちのここまでの活動について「アイドルがロックフェスに出るという道を開いた」「自分たち以降アイドルが武道館を目指すようになった」という旨の発言をしていた(参照)。そういう点では、多くのフェスでメインステージの常連となり、来年にはドームツアーも控えているという今の状況は「女性グループが目指すべきこととして言われることを全て体現してしまっている状況」とも言える。

 一方で、「キャリアを総括するベスト盤の後のドームツアー」という区切りとしてはあまりにもちょうどよいタイミングを迎えることになっても、周囲からのそんな声を笑い飛ばしながら活動を続けていく意思を強く持っていることは各種インタビューからも伝わってくる。

 道半ばである海外戦略に対して、国内ではトップアーティストとしての地位を名実ともに確固たるものにしているPerfume。この先、日本でやるべきことは残されているのだろうか?

 現在彼女たちがひとつの野望として掲げているのが、まもなく2回目の開催を控えているコンサートプログラム『Reframe』の「常設公演」である。

 昨年3月に2デイズで開催された『Reframe』は、最新テクノロジーを織り込んだパフォーマンスをMCなしで披露するこのステージで、タイトルの通りステージエンターテインメントのあり方を大きく再定義するようなものになっていた。その『Reframe』が今度は場所をLINE CUBE SHIBUYAに移して、同会場のこけら落とし公演として計8日間開催される。

 この『Reframe』を2日間、もしくは8日間やる、というのではなく、「いつでもやっている」「ふらっと立ち寄れば見れる」というような状況に近づけたいというのが「常設公演」のイメージのようである。これがどうやら「ちょっとした思い付き」ではなさそうなのは、『音楽と人』10月号のインタビューや9月21日に放送された『SONGS』(NHK総合)での森山未來とのっちの対談など多くの人の目に触れるメディアでこの話が積極的に発信されていることからもうかがえる。

 実際にこのプランを実現に移そうとした場合、越えないといけないハードルが多数存在するだろう。おそらく活動の軸足自体をそちらに寄せる必要も出てくるはずだし、その際の海外戦略との折り合いも問題になってくる。また、そもそも会場の確保という課題をクリアしない限りこの話は先に進まない。

 ただ、このチャレンジは日本の音楽業界にとっても非常に重要なものになるはずである。「音楽ビジネスはライブが大事」という言説がすっかり定着した昨今だが、その内実は大規模会場に多数人を集めることでグッズの販売と合わせて収益をあげるといういわば「お祭りで人をさばく」ことにフォーカスしたものという側面もある。限定されたキャパシティの会場で同じ公演を繰り返し行うという取り組みはそんなトレンドと逆行するのものだが、「クオリティの高いステージを多くの人が見やすい形で行うこと」、つまりは「一発の“お祭り”ではなくて、“日常”として最先端のステージを体感できる環境を作ること」を目指すというのは、ライブビジネスをよりサステナブルなものとして進化させるために大きな意味を持つことになるのではないだろうか。

 これまでの活動において、何度も「前人未到」を実現してきたのがPerfumeである。規模拡大ではなく居を据えて自らの表現を磨き上げる、そんな新たなスタンダードの確立こそが次に彼女たちが成し遂げる「前人未到の取り組み」なのかもしれない。今回の『Reframe』シリーズと来年のドームツアーを経て、今度はどんなビジョンが打ち出されるのか今から楽しみである。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題になり、2013年春から外部媒体への寄稿を開始。2017年12月に初の単著『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』を上梓。Twitter(@regista13)

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