安室奈美恵、三浦大知……Nao'ymtがR&Bの土壌に起こした革命とJ-POPシーンにおける功績

 先述の通り、Nao’ymtがJineなるボーカルグループを結成したのは1998年のこと。メンバーは中高の同級生だったJun、そしてのちに合流したEijiの計3名。BoyzⅡMenやJodeciなどに代表されるアカデミックな先人たちの流儀を踏襲し、2000年に初めてアルバムをリリースしてからというもの、折に触れて卓越したR&Bで音楽ファンを圧倒してきた。Nao’ymt自身のボーカルは声量でゴリ押すようなタイプではなく、ハスキーな声質を生かした柔らかい節回しが特徴なのだが、ここぞというタイミングで繰り出される咆哮さながらのフェイクなど、エモーショナルな振り切りがとにかく巧い。Jun、Eijiとの息の合ったコンビネーションが前提としてあるため、尚のこと胸を打ってやまないのだ。

 そして、2013年末からはソロシンガーとして、自身の本名を冠した「矢的直明」プロジェクトの作品を一年がかりでシリーズ化。自らを取り巻く生の感触と記憶を楽曲にして歌う、という原始的かつパーソナルなコンセプトで、こちらもJineの活動同様、Nao’ymtのクリエイターとしての人格が色濃く投影された貴重なライフワークである。押韻を重視したリリック、侘び・寂びを伝える和風情の音使い……Nao’ymtお得意の手法に一度でも心を射抜かれた経験があるなら、これらの活動も注意深く追ってみることをお薦めする(彼の芸術的思想や穏やかな人柄が垣間見えるInstagramも必見!)。

 作り手と歌い手ーー強烈な個性からしばしば誤解されがちだが、Nao'ymtほどどちらの立場も尊重出来るフレキシブルなクリエイターはいないと確信している。時にメロウに、時にポップに振れるその非凡なセンスを、今回めでたく誕生した専用プレイリストも駆使しながらぜひ嗜んでみてほしい。気高く奥深い“Nao'ymt沼”にどっぷり浸かる人が増えゆくことを、筆者としても切に願っている。

■白原ケンイチ
日本のR&B作品をはじめ、新旧問わず良質な歌ものが大好物の音楽ライター。当該ジャンルを取り上げるサイトの運営、コンピレーションCDのプロデュース、イベント主催の経験などを経て、現在はささやかに音楽ライフを満喫する日々。Twitter

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