三浦祐太朗の歌声が万国で支持される理由 山口百恵カバー「ありがとうあなた」中国でも反響

三浦祐太朗の歌声が万国で支持される理由

三浦祐太朗は、世代や国境を歌声で繋ぐ架け橋に

 三浦祐太朗のニューアルバム『Blooming Hearts』は、母=山口百恵の偉大さを受け入れた、山口百恵のカバーアルバム『I’m HOME』、その経験を自分なりに昇華させたオリジナルアルバム『FLOWERS』を経て生まれた、山口百恵のDNAと三浦祐太朗のアイデンティティが融合した作品だ。

 「しなやかに歌って ―80年代に向って―」、「横須賀ストーリー」「ロックンロール・ウィドウ」といった山口百恵のカバーは、『I’m HOME』と同様に原曲の印象的なフレーズや展開をそのまま、現代的にアレンジされている。非常に肩の力が抜けた雰囲気で、伸び伸びと思うがまま歌っているといった印象だ。母親から受け継いだものを自分の魅力として、はっきりと認識しながら、その上で自分らしさと向き合っていると感じる。

 また、三浦が作詞を手がけたオリジナル曲「MELODY」と「RAINY SLUMBER」は、どこか昭和の香りを感じさせて秀逸だ。そう感じさせるのは、メロディとアレンジの組み方以上に歌詞の付け方にポイントがある。『I’m HOME』の制作において三浦は、山口百恵の原曲をたくさん聴き、「言葉とメロディがすごく密接に結びついている」ことに気づいたと話す。「このメロディには絶対この歌詞だよなと感じさせる何かがある。母親の曲だけではなく、昭和歌謡と呼ばれるもの全般に感じることで、それが最近のJ-POPとは違うところ。だからこそ普遍性があると思った」とコメントしている。

 例えば「RAINY SLUMBER」のサビが、まさしくそうではないだろうか。メロディの展開と言葉のハマり方が絶妙で、思わずハッとさせられる。シンセの音色など80年代のシティポップスといった雰囲気のアレンジによる妙もあるが、何も知らず山口百恵のカバーからの流れで聴いたら、これもカバーだと勘違いしそうなほどだ。

 一方で、「Tell Me Now」というバンドサウンドも収録している。同作には「横須賀ストーリー」「ロックンロール・ウィドウ」といった、山口百恵のロックナンバーも収録しており、これは山口百恵のロックンロールに対する三浦なりのアンサーと言えるだろう。大人の恋愛観や孤独な気持ち鋭く歌った山口百恵に対し、三浦の「Tell Me Now」は、共に一緒に歩んでいこうと明るく軽快に歌っている。母親の時代はそうだったかもしれないけれど、僕たちの世代が求めているのはこういうものなんだよ、と言っているようだ。

 山口百恵の数ある楽曲をカバーすることは、三浦にとって大きなチャレンジであり、そこには偉大なるミュージシャンを親に持つ子供たちが抱える特有の葛藤がある。三浦祐太朗は、『I’m HOME』と『FLOWERS』で、それを乗り越えようとした。そして出した一つの答えが、自分が“架け橋”になることなのだろう。山口百恵を聴いてきた世代に、今の世代の価値観や音楽観も知ってほしい。山口百恵を知らない世代に、彼女が残した昭和の名曲を知ってほしい。さらには、アジアをはじめ、世界中の人たちに素晴らしい楽曲を届けたい。三浦祐太朗は、『Blooming Hearts』をもって、世代や国境を繋ぐ架け橋としての第一歩を大きく踏み出そうとしている。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

三浦祐太朗『Blooming Hearts』

■リリース情報
『Blooming Hearts』
10月2日(水)発売
価格¥2,500+税
All New Recordings、全8曲収録

<収録曲>
Tell Me Now
しなやかに歌って ―80年代に向って―
横須賀ストーリー
小さな手(夢ハウス オリジナルソング)
RAINY SLUMBER
ロックンロール・ウィドウ
MELODY
ありがとうあなた

<配信>
「ありがとうあなた」日本語ver.
「ありがとうあなた」中国語ver.

■ツアー情報
『三浦祐太朗 Live Tour “47 MELODIES”』
※終了公演は割愛
9月14日(土)山形県・シェルターなんようホール【SOLD OUT】
9月16日(月祝)福井県・ハーモニーホールふくい 大ホール【SOLD OUT】
9月22日(日)北海道・道新ホール【SOLD OUT】
9月28日(土)福岡県・久留米市田主丸複合文化施設 そよ風ホール【SOLD OUT】
10月5日(土)東京都・西新井文化ホール【SOLD OUT】
10月6日(日)鳥取県・鳥取市民会館
10月12日(土)石川県・津幡町文化会館シグナス【SOLD OUT】
10月13日(日)長野県・塩尻レザンホール 大ホール【SOLD OUT】
10月19日(土)兵庫県・ライクスホール【チケットSOLD OUT】
10月26日(土)神奈川県・横須賀市文化会館 大ホール【SOLD OUT】
10月27日(日)奈良県・かしはら万葉ホール【SOLD OUT】
11月2日(土)埼玉県・上尾市文化センター【SOLD OUT】
11月10日(日)青森県・青森市民ホール(リンクモア平安閣市民ホール)
11月16日(土)群馬県・甘楽町文化会館【SOLD OUT】
11月24日(日)茨城県・つくばノバホール
11月30日(土)愛媛県・松前総合文化センター
12月1日(日)徳島県・阿波市交流防災拠点施設 アエルワホール
12月7日(土)和歌山県・紀の川市 粉川ふるさとセンター
12月14日(土)東京都・マイナビBLITZ赤坂(ファイナル)【SOLD OUT】
47都道府県・全49公演(東京都3公演)

三浦祐太朗 オフィシャルHP
三浦祐太朗 ユニバーサル ミュージックHP

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