欅坂46が東京ドームで「不協和音」を披露した意義 様々な思いが交差した圧巻のステージを見て

欅坂46、東京ドーム公演レポ

 終盤は「サイレントマジョリティー」から「危なっかしい計画」までキラーチューンを矢継ぎ早に繰り出し、ラストは「太陽は見上げる人を選ばない」で全メンバーが歌って本編終了。

 と同時に、アンコールの大合唱が起こる。会場の興奮冷めやらぬ熱気がさらに上がっていき、ついにピアノのイントロが流れ始めた。まさか、あの曲が……?

 だがここ最近、次曲が「不協和音」であることをほのめかすような演出が何度かあった。昨年7月の富士急ハイランド・コニファーフォレストでは、倒れる平手の俯瞰映像から「ガラスを割れ!」へと突入した。今年の5月の日本武道館では、真っ赤な彼岸花の敷き詰められた舞台で横たわる平手の映像から「黒い羊」がスタートした。いずれも、あたかも「不協和音」のMVの冒頭の再現かのような不穏な始まり方を匂わせつつ、その度に別の楽曲が披露されてきたのだった。

 しかし、この日は違った。

 ステージに照明が当たると「不協和音」の衣装を着たメンバーたちが姿を表す。突然の出来事に会場は驚きと悲鳴と歓声の入り混じる異様な雰囲気に。”あの夜”以来、封印されていたパワーを解放するかのように、ステージからエネルギーがビシバシと伝わってくる。スピーカーからは爆音を遮って悲鳴まで聞こえてくる。スクリーンには今まで見たことのない彼女たちの表情が映っていた。

 筆者は、平手のいる「不協和音」を生で3箇所で経験している。しかし、今までのどの会場よりもこの日の〈僕は嫌だ〉には心を揺さぶられた。否定や拒絶だけではない、痛々しい有り様を嘆くような絶望感があった。スクラップ工場をモチーフにしたというステージセットもまた、その叫びの悲痛さに拍車をかける。

 あるいは、卒業した長濱ねるに代わって抜擢された田村保乃が叫んだ〈僕は嫌だ〉は、この場所に私は立つんだという高らかな宣言にも聞こえた。

 最終日は、その後にダブルアンコールで平手のソロ曲「角を曲がる」(映画『響 -HIBIKI-』主題歌)が披露された。平手の華麗なダンスに会場全体が釘付けになる。最後に彼女は優しく「ありがとうございました」と述べ、深々とお辞儀をした。

 この感謝の言葉は、もちろんライブを観に来ていたファンへ向けてのものであるが、どこか、ここまでの活動を振り返って、離れずに付いてきてくれているすべてのファンへ向けた言葉に思えて、ライブが終わった後もこれについては色々と考えさせられてしまった。

 正直、筆者も長いことこのグループを追ってきたが、これまで道中で何度も心が折れそうになったのも事実である。しかしその度に、だからと言って自分の好みまで押し曲げることはできないなと思い、しぶとく静かに見守ってきたのだ。

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 「語るなら未来を…」のバキバキなダンスも、「エキセントリック」のまさに自分を言い当てられたかのような歌詞も、「制服と太陽」で静まる会場の雰囲気も、「もう森へ帰ろうか?」で見せる幻想的なステージングも、「避雷針」の危うい魅力も、どれも心から好きで、何があろうとそこに揺るぎはない。だからこそ東京ドームまで足を運んだのだ。

 同じようにこの会場に居合わせた数万人の”戦友”たちとともに、今回こうした素晴らしい体験をさせていただいたことを、筆者からもありがとうと伝えたい。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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