lecca、“アーティスト兼政治家”として目指す場所「音楽と政治の活動をもう少し繋げていきたい」

leccaの“異色のキャリア”

leccaの楽曲がアスリートに支持される理由

ーーサウンド面では、今回どのような音作りをめざしましたか?

lecca:AILIにトラックを作ってもらうときに、いくつかAILIと一緒に参考曲を出し合ったんです。ビートはこんな感じだけど、コードはこんな感じがいいとか。そのときにビートは前に向かってみんな一緒に揃って動いていく雰囲気が出るような力強いものがいいと注文しました。チーム感とか駆け出す強さ。あと、コードは世界が上向き、前向きに広がるようなものがいいとお願いしました。

ーー今回は応援歌ですが、テンポが遅いことが特徴だと思います。そこにもこだわりを感じました。

lecca:早過ぎないっていうのはちょっと意識したと思います。ただアゲればいいっていうことじゃないだろうと。苦しさだったり、苦しい中でも足を前に出す重厚さが欲しいと。

ーースクラムを組んで食いしばってる感じ。

lecca:まさに。スクラムを組んで踏ん張ってる時間って苦しいじゃないですか。押し戻されるし、前にばかり進めるわけじゃない。そのときにどうするか、どう反応するかって真価が問われるところでもあって。スピードだけじゃない、俊敏さだけじゃないスポーツなので、そこはサウンドも寄り添わないといけないなっていう思いはありました。

ーーあと、間奏でビートレスになりますよね。激しく体をぶつけ合うラグビーは試合中に脳しんとうなどで倒れる選手もいますが、あの展開は、そういうときの時間が一瞬止まるような場面を思い浮かべたんです。

lecca:私も映画のスローモーションになるような場面が浮かびました。あの間奏を聞いたときに「よくぞAILI、この部分を作ってくれたな」って思いました。おそらく試合でもそうだし、仕事でも、緩急の「緩」の時間って誰にでもあると思うんです。他人から見てると、たった3秒とか5秒とか10秒かもしれないけど、一瞬動きが止まって、その人の中で分岐点を迎えている瞬間があると思うんです。一度立ち止まって「自分が向かう道はここでいいんだろうか?」「自分はここですべて出し尽くしていいんだろうか?」って悩んでる時間、考えてる時間、そして決意をする時間っていうのが、あの間奏に詰まっていると思います。そのわずかな時間での反芻を通して、「やはりここだ」と自信を持つ。確かなものを見つける。そして足を踏み出す。その一拍があの間奏にあるんですよね。

ーー今回の「team try」はチームで頑張る人をエンパワーする歌ですし、過去の楽曲もたくさんのアスリートから支持を得てきました。leccaさんの曲がアスリートから支持される理由はどこにあると自己分析しますか? 

lecca:自分はもともと才能がある人間だとは思えないんです。自己評価もそんなに高くないですし、とにかく私は努力をしなければ人に曲を聞いてもらえるような立場にならなかった。その「とにかく努力をしなければ」っていう状況でやってきた自分の精神状態が、常に結果を出さなければならないところで闘っているアスリートの方たちにリンクしたのかなって思います。お会いしたアスリートのみなさんからお話を伺っていると、意外と自信ないのかなって思うところがあって。私の曲も自信家の曲ではないんですよ。ものすごく苦しい闘いをギリギリのところでして、どれも結局、「俺、最高」で終わっていなくて「マジ苦しい」で終わってるんです。

ーーハッピーエンディングな曲は確かにあまりないですね。

lecca:そう。でも、なんとか前を向いていくにはこうするしかないっていう。最後に残された選択になんとかしがみついてるっていう状況の曲が多いんです。サッカーの宇佐美(貴史)選手や野球の阿部(慎之助)選手に「聞いてます」って言われるのは意外だったんですけど、お話を伺うと、彼らは決して生まれながらの天才じゃないんだなって。みなさん、ものすごく努力していて、ひとりで闘っている。ひとつを得るために他のすべてを捨ててきたとか、犠牲にしてきたみたいな人生を選んできた人たちだと思うんです。そこに強さを見るところもあって、むしろ、私の曲を聞いてくれていることが自分の勇気になっていますね。

leccaと斉藤れいなが目指すところは違う場所ではない

ーー今年で40歳を迎えましたが、誰かを応援するという心の持ち方や、応援の仕方、メッセージの伝え方に変化はありますか?

lecca:そこに関しては変化しちゃいけないなと思ってます。というのは、30代のときからですけど、上から目線になろうと思えばいくらでもなれると思うんですよ。言い切り型、説教型、「これこれ、こうした方がいいんだから、こうしなさいよ」っていう言い方をすることはできるんですけど、そうじゃなくて、常に当事者の目線で歌ってきたので。今回の曲も特にサビのところは自分もその立場や状況にいる気持ちで歌ってるんです。そうすることで共感してもらえた方がいいと思っているので、そこは変えない方がいいというか、変えたくないと思っています。

ーー最後に「team try」というタイトルにかけて、今後トライしたいものはありますか?

lecca:これまでは音楽活動と議員活動をリンクさせることはタブーだと、なんとなく思っていたんです。なぜなら、私は音楽で自分の政治的な意見を発信してきたわけではないし、自分の音楽を聞くファンの方にはいろいろなイデオロギーを持つ方がいらっしゃるので。だけど、離党して自分の発信がより自由になっているところがあるし、leccaとしてめざしてきた社会と、自分が今、議員をやっている中でめざしている社会は決して離れていないんです。なので、leccaとしての音楽活動と、今やってる議員としての政治活動をもう少し繋げていきたいなと思ってるところが正直あります。

ーー端的に言えば、ポリティカルな意見を歌ってもいいんじゃないかと。

lecca:それもあるかもしれないし、たとえば先日、議員仲間とラグビー関連のイベントをやったのですが、そういうことは今の私にとってはすごくリンクしやすいんです。ラグビーの良さを教えてもらえたことを伝えたい、そこからもらえた勇気をみんなに知ってもらいたいと思って、今回の「team try」を作った流れもあるので、そのイベントにleccaとして参加させてもらったんです。

ーー斉藤れいなではなく、leccaとして参加することに意義がある。

lecca:そう。leccaがやっていることと斉藤れいながやっていることはまったく違うことなんだと思っている方もファンの中にはいらっしゃるんです。SNSなどで「政治家になっちゃったからファンがつきまとっちゃダメかな」っていうコメントが来たりとか。でも、leccaがめざすところと斉藤れいながめざしてるところは違う場所ではないので、何とかそこをわかっていただけたらなって。leccaファンの人に「選挙は行こうよ」「投票はしようよ」って言いたいですしね。任期前半は音楽活動と政治活動の間にバリアを張っていたところがあるんですが、それをなるべくなくしていくことに挑戦していきたいと思ってます。

(取材・文=猪又孝/写真=はぎひさこ)

lecca「team try」

■リリース情報
lecca「team try」
9月18日(水) 配信スタート
lecca オフィシャルサイト
lecca オフィシャルツイッター

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