DracoVirgoが語る、『FGO』テーマ曲以降に見出した“バンドの強み”と“ハイカラ時代からの変化”

DracoVirgo、『FGO』テーマ曲以降の変化

DracoVirgoの音楽は、あの頃にはできなかった音楽

ーーハイカラの頃と比べて、みなさんが変化を感じるのはどういうところなんでしょう?

MAAKIII:まず、スタンスはあの頃と何も変わっていないんだと思います。

mACKAz:ただ、ギターがいないというのは大きくて、その結果「ロックにとらわれないことができる」という部分は結構違うのかな、と感じますね。

ーーDracoVirgoでは、ディスコやニューウェイブ的な音楽の要素も前に出ていますよね。

mACKAz:そうですね。そういう要素もあって、同時にハイカラのときのようなギターロック的なものもあってーー。その二面性は大事にしていきたいと思っているんです。

SASSY:とはいえ、ハイカラの頃と比べると、「いい意味でエゴがなくなったのかな」とも思うんですよ。だから、DracoVirgoの音楽は、あの頃にはできなかった音楽なのかな、と僕は思っていて。それに、今は自分たち自身でも、昔よりは自分たちのことが分かってきたような感覚もあります。僕らは3人とも、音を聴けば分かる、パンチがあるタイプのミュージシャンだと思っていて、MAAKIIIの歌も聴けばすぐにMAAKIIIだと分かりますし、mACKAzのベースも、自分自身も、サポートでドラムを叩いたりする中で他の人と比べられる経験をして、その中で自分の色をより理解できるようになりました。そしてそういう部分って、やっぱりハイカラのときに形成してきたものだと思っていて。そういうメンバーが集まっているということは、昔は全然分かっていなかったので、自分たちのことがより分かってきたような気がしているんですよ。

ーーなるほど、そうやって徐々にみなさん自身も、DracoVirgoがどういうプロジェクトなのかということを、掴みつつあると。今回の「ハジメノウタ」はTVアニメ『ありふれた職業で世界最強』のED主題歌になっています。この作品にはどんな魅力を感じましたか?

mACKAz:『ありふれた職業で世界最強』は、出てくるキャラクターがみんな魅力的ですよね。でも、それだけではなく、物語がすごくしっかりしていて、回を重ねるごとに引き込まれていくようなタイプの作品だと思いました。

ーー異世界で裏切られてしまった主人公のハジメが、ユエや様々な登場人物と出会って、戦いに臨んでいく、成長していく姿が描かれている作品ですね。

SASSY:今回はお話をいただいた時点で、「バトルシーンにフィーチャーしないものがほしい」というオーダーがありました。僕らの場合、バトルに合う曲なら、候補になる曲もすでにあったんですけど、そうではないということで、今回はいちから書き下ろしていきました。まずはメンバーそれぞれにユエの気持ちに寄り添った曲を書いたんですけど、最終的にMAAKIIIの曲を仕上げていきました。「ハジメノウタ」は、デモの時点で歌詞も結構できていたんですけど、僕も聴いた瞬間に「これはユエの歌だ」と思いました。

MAAKIII:今回は「ユエのハジメに対する気持ちをフィーチャーしてほしい」というオーダーだったので、ユエの気持ちに寄り添っていきました。そのときに、物語の中で戦う日々があっても、それとは別に、戦いから帰ってきたときにはハジメとユエの日常があるんだろうな、という想像が膨らんで。「そのときならではの、ハジメに対するユエの気持ちもあるんだろうな」と思ったんです。……そういうことを考えながら、自分自身もお風呂に入って髪を乾かしていたときに、〈おはよう/おやすみ〉というフレーズが湧いてきました。そのフレーズが翌日になっても頭に残っていたので、スタジオの方に協力してもらってデモを形にして。そこから3人で仕上げました。そこまでが1週間ほどの出来事で、「物語の中のユエが語りかけてきてくれた」という感覚でした。私たちだけではなくて、ユエや、ユエを生み出してくれた原作の先生や制作のみなさんの愛情が詰まった曲になったように思います。

ーーmACKAzさんとSASSYさんは、アレンジ面でどんな工夫を加えていったんでしょう?

SASSY:僕らはそこから、アニメの制作サイドの意見も踏まえつつ、アレンジを変えていきました。実は最初、リズムはドラムンベースのような、もっと速いタイプのものだったんですよ。まずはそれをよりドラマティックな、曲の世界観が伝わるものにしていきました。

ーーよりハジメとユエの「日常」が感じられるものにしていった、ということですか。

MAAKIII:そうですね。実は私も、もともと完成形のテンポ感を想像していたんですけど、それだと2人の演奏が入るときに「どうなんだろう?」と思って。それで最初はドラムンベースのようなリズムにしたんです。でも、そこから制作サイドの方々とも話し合う中で「こっちの方がいい」という同意が取れたので、自信を持ってテンポもゆっくりにしました。

SASSY:ドラムのサウンドも、いつもよりローファイな、温かみの感じられるものにしたいと思って、いつもよりアタックがバチバチしないように意識して録音していきました。

ーーなるほど、そうやって演奏自体も曲の雰囲気に合うものにしていった、と。

mACKAz:僕の場合も、この曲ではメロディと歌詞がぴったり合っていたので、できるだけシンプルなベースにして、歌を引き立たせられるように考えました。歌のメロディの間に、僕がときおり顔を出すというか。その出しどころを考えていった感じでした。

MAAKIII:歌に関しては、割とストレートに歌った気がします。その方が、ピュアな気持ちが乗ると思ったので。でも、これは今思うとですけど、ユエは少女性が感じられるキャラクターだということもあって、今回はビブラートをあまり使わなかったかもしれないです。

ーーああ、なるほど。「ハジメノウタ」というタイトルはどんなふうに考えたのでしょう?

MAAKIII:まずひとつは、純粋に「ハジメに向けたラブソングだ」ということですね。でも、そのあと気づいたことなんですけど、実はユエが物語の中でハジメに曲をつくるシーンがあるんですよね。それで、「ユエも『ハジメノウタ』をつくってたんだ!?」って(笑)。不思議な縁を感じました。ユエはハジメに救われて、そこから本領を発揮してハジメを助けていきますし、ハジメはハジメで、最初は弱かったのにユエとともに強くなっていきます。その関係性はこの作品の魅力のひとつだと思ったので、今回はジャケットもオーダーを出させてもらって、お月様(ユエ)と、その近くで輝いている一番星(ハジメ)を登場させてもらいました。

 この2人の関係性は、色んな人達にも当てはまることですよね。仕事に行って、帰ってきて、そこで誰かが癒しをくれるかもしれませんし、自分自身で生み出す癒しがあるかもしれません。そういう意味でも、一日の終わりに作品を観ている人を癒せるような曲になったらいいな、と思っていました。本編で戦いが描かれたあと、夜の深い時間帯に最後に流れるED主題歌として、登場人物たちの戦いの傷を癒すだけではなく、アニメを観ているみなさんに「今日も一日お疲れさま。明日も頑張ろう」という気持ちが届いてほしい、と。

SASSY:あと、この曲は、アニメのオンエアに乗る部分だけではなく、フル尺で聴いてもユエの曲になっているので、その部分も聴いてもらえると嬉しいですね。

ーー確かに、アニメのタイアップ曲は「オンエアで流れる1番は作品に寄り添って、2番ではそのアーティスト自身のことを歌う」というものも多いですが、この曲は全編ユエの曲ですね。

MAAKIII:曲の中で、ユエとハジメの日常がループしていくものになったらいいな、と思っていたんです。ジャケットのモチーフになっている月と一番星も、「仮にハジメの身が滅んだとしてもなくならないもの=物理的なものを越えた愛」という意味で加えたものでした。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる