雨のパレード、バンドの開放的なモードを明確に印象付けたライブツアーを振り返る

雨パレ、ライブツアーで見せた開放的なモード

 ここまでの福永は、歌い方にしろ、全身を激しく揺らすパフォーマンスにしろ、とにかくエモーショナルで、先日の『SUMMER SONIC 2019』で観たThe 1975のマシュー・ヒーリーを連想したりも。「You」は「誰かを救う歌を書きたい」という想いで書かれたという楽曲だが、デジタルな社会の中における苦悩や不安を描き出し、そこからの解放を生々しいパフォーマンスで表現するという意味において、雨のパレードとThe 1975にはリンクがあることを改めて感じさせた。

 山﨑がビブラフォン風の音色で印象的なフレーズを加えた「Reason of Black Color」からの中盤では、薄暗い照明と映像演出を基調にディープな音世界を作り出し、「Hwyl」までを終えると、今度は一転アコースティックコーナーへ。レーベルの先輩である永積タカシのSUPER BUTTER DOG時代の名曲「サヨナラCOLOR」と、くじ引きで選ばれた「MARCH」が演奏されたが、〈サヨナラからはじまることがたくさんあるんだよ〉と歌う「サヨナラCOLOR」と、「卒業」をテーマに、〈また季節巡って ありふれた別れが訪れた〉と歌う「MARCH」が、新体制初のツアーで続けて演奏されるというのは、不思議な巡り合わせだったように思う。

 Dos Monosをゲストに迎えてパーティー感たっぷりに盛り上げた「Hometown」からの後半戦では、ボコーダーを交えて生まれ変わった「Dive」、「俺ら史上最高に踊れるソングかもしれない」と言って演奏された「Count me out」でダンスフロアを作り上げ、最後に披露されたのが7月に配信で発表された最新曲「Summer Time Magic」。BPM110ほどの雨パレ流トロピカルハウスでは大合唱が起こり、「Ahead Ahead」同様に、現在のバンドの開かれたモードを明確に印象付けていた。

 アンコールでは、9月25日に配信リリースが決定しているクワイア風のコーラスを取り入れたミディアムバラードの新曲「Story」が披露され、ラストは「Tokyo」でフィニッシュ。全編を通じて3人仕様にリモデルされた楽曲にワクワクさせられたが、アルバム一枚分の新曲が届けられる頃には、本当の意味で生まれ変わったバンドの姿が見れるはず。そんな手応えを感じさせる充実のライブだった。

(写真=八木咲)

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

雨のパレード オフィシャルサイト

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