ザ・なつやすみバンド 中川理沙とMC.sirafuが語る、『Terminal』に結実した信頼感と制作の喜び

ザ・なつやすみバンド インタビュー

作品を作る喜びに溢れている状況を手に入れてしまった(MC.sirafu)

――続く「水の戦記」もどこかエキゾチックでブラジルっぽさも感じられます。

MC.sirafu:かなりボーダレスミュージックであることを意識したのと、ツインギター編成がポイントです。今回、僕も中川もエレキギターを弾いているんですけど、ようやくこれで普通のバンド編成ができたというか。普通のバンドが最初に感じるであろうロックの初期衝動みたいなものを、今になってやっと味わえました(笑)。

中川理沙:私もエレキギターを演奏してレコーディングしたのが初めてだったので、そこはサウンド的にもいつもと違うところですね。

MC.sirafu:ロック特有の言葉にできないグルーブも、今回は出せたかなとも思います。

――たしかに、今回のアルバムはこれまで以上に躍動感を感じます。

中川理沙:たしかに、今までとはちょっと違う雰囲気があると思います。こういうのもできるんだなっていう。

MC.sirafu:まさにそれがロックなんですよ。今更ですが(笑)。

――あとコーラスがすごく印象的ですね。「旅のしおり」とか。

中川理沙:この曲のコーラスはアントニオ・カルロス・ジョビンの女性コーラスのようなものを入れたいなって思って作りました。アルバム全体的に、隙間があればコーラスを詰め込むっていうくらい入れまくりました(笑)。

――かと思えば「星の日(STAR DAYS)」はチェロが入っていて、室内楽風のアレンジが印象に残りました。

MC.sirafu:実はこの曲は、アレンジはノープランで作り始めました。途中のエモーショナルな展開のところはチェロが入るといいなと思ったんですけれど、曲全体にどう組み込むのかはまったくイメージしていなくて。でも、いつもサポートしてくれている関口(将史)くんならうまくやってくれるだろうってことで、彼に丸投げしました。

――それは意外ですね。事前にきっちりアレンジしたのかと思いました。

MC.sirafu:今回はそういうことがしたかったんですよ。関口くんだけでなく、フルートの池田若菜やパーカッションのチャーベ(松田“CHABE”岳二)さんもそうなんですけれど、基本的に丸投げです。サポートメンバーのダビングは合宿ではなく東京で行ったのですが、その部分の受け皿を敢えて残して、小淵沢での作業を終えたという感じでしたね。

――アルバムが仕上がって、どういう作品になったと感じますか。

中川理沙:実は3部作にしようと考えているんです。だから、毎年1枚ミニアルバムを作っていく計画です。『Terminal』というタイトルも、3部作でザ・なつやすみバンドの頭文字の「T・N・B」になるように「T」で始まる言葉を探したんです。

MC.sirafu:これまでのアルバム制作は作らなきゃいけないという感覚もあって、しかもフルアルバムってめちゃくちゃエネルギーを使うんです。でも、今回はミニアルバムというサイズだったので楽しいという感覚しかなかった。だからもう、早く次の作品を作りたい。作品を作る喜びに溢れている状況を手に入れてしまったので、本当に幸せですよ(笑)。ミニアルバムだと何をやっても自由なわけだし、もしかしたら1曲30分のみという作品を作るかもしれない。それくらい未来が見えないことが、楽しくてしょうがないですね。

中川理沙:合宿も初めてだったし、ワイワイと楽しく、それこそ夏休みの自由研究をみんなでやったという感覚です。それでバンドがまた仲良くなったという感じもあって。バンドも10年続けるといろんなことがあるし、ぴりぴりしていた時期も実際にあったんですけれど、今はすごくまとまっていますね。それも今回のレコーディングの大きな成果だったと思います。

――ツアーも始まりますが、『Terminal』での成果は生かされそうですか。

中川理沙:合宿でみんなちょっとずつ上手くなった気はします(笑)。あとはやはり、バンドの状態の良さが、きっとライヴでも感じられるんじゃないかと思います。

MC.sirafu:今回の制作を経て楽曲の幅がかなり広がった感覚があるので、セットリストもずいぶん変わってくるんじゃないかな。あと、ビルボードライブ東京の1stセットはデビュー作の『TNB!』をメインに演奏するという企画なのですが、再現ではなく今のモードで演奏することになると思います。古い曲や今まであまりやっていなかった曲も新鮮な感覚でできることがとても楽しみですね。

(取材・文=栗本斉)

ザ・なつやすみバンド『Terminal』

■リリース情報
『Terminal』
1. 雨
lyric&music 中川理沙
2. 赤いワンピース
lyric&music 中川理沙
3. 水の戦記
lyric&music MC.sirafu
4. 黒い犬
lyric&music 中川理沙
5. 旅のしおり
lyric&music MC.sirafu
6. 星の日(STAR DAYS)
lyric&music 中川理沙、MC.sirafu
7. ネバーエンディング通り
lyric&music MC.sirafu

価格:¥2,500(税抜)
※ツアー会場限定特典写真集付き

『TNB!』
12inch LP
価格:¥2,700(税抜)
9月16日 ツアー会場先行販売開始
10月2日 一般発売

■ツアー情報
『ザ・なつやすみバンド『Terminal』リリース記念
夏のしおりツアー2019』
9月16日(月・祝)
<大阪公演>
大阪十三 246 LIVE HOUSE GABU
17:30開場/18:00開演
前売:3,500円(税別)/当日:4,000円(税別)※共に1ドリンク別

9月17日(火)
<名古屋公演>
TOKUZO
18:30開場/19:30開演
前売:3,500円(税込)/当日:4,000円(税込)※共に1ドリンク別

9月24日(火)
<東京公演>
ビルボードライブ東京
1stステージ『TNB! 』再現プラスα
開場17:30/開演18:30
2ndステージ 『Terminal』リリース記念ライブ
開場20:30/開演21:30
サービスエリア:6,500円(税込)
カジュアルエリア:5,500円(税込)※1ドリンク付

公式サイト

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