コブクロが伝えた、20年分の感謝と未来への決意 3時間超えの熱演見せた20周年ツアー

コブクロが伝えた、20年分の感謝

 最初のMCで、小渕が本日の入場者・20396人への感謝を述べる。この会場でちょうど20回目の公演ということで、「縁起がいいね。結成20年、20回、大阪ではG20もやってる(笑)」と黒田がボケる。なごやかなムードの中、しかし20年のうちにはつらい出来事もあり、最初の東京・渋谷公会堂公演では客席が半分しか埋まらなかったことに触れ、「最高の演出は満員のお客さんです」と小渕がしみじみ語る。全ての人に向けて全力で歌うことがコブクロの原点。それが今の僕らを作ってきたと胸を張る、小渕の言葉に迷いはない。

小渕健太郎

 ここからは、ドラマチックバラード三連発。黒田がリードを取り、若い恋心が激しく揺れ動くさまを描く「赤い糸」。小渕のリードで黒田がサビを歌う、片思いの切なさと和風情緒香るサウンドが寄り添う「未来」。二人のソロと息の合ったハーモニーが楽しめる、遠く離れた恋人へ贈るロックバラード「Twilight」。バラードにも関わらずこの迫力と音圧、そしてせつない恋歌なのに、いつかこの恋は報われるだろうと信じさせてしまうような、黒田の圧倒的なパワーボイス。小渕の描くロマンチックな世界観の中で黒田が武骨な生き様をさらす、コブクロのバラードはいつだって儚く切なく、しかし激しく力強い。ストリートで最初に黒田の歌声を聴いた時、あまりの衝撃に動けなかったという小渕も、「最初に黒田の声を聴いた時と、今日の歌は、ほぼほぼ近い」と相方を絶賛した。常にそばにあると気づかないものだが、小渕と黒田の出会いはやはり一つの奇跡と言っていい。

 「ここからはみんなの盛り上がりにかかってますよ!」と、小渕が観客を煽る。バラードセクションのあとはアップテンポへと一気にモードチェンジ、「宝島」では小渕がエレクトリックギターをかき鳴らし、黒田が花道へ飛び出す。軽快なカントリーロック調の「轍‐わだち‐」では、恒例の大合唱で会場全体が一つになる。スピード感たっぷりのドライビングソング「tOKi meki」ではカラフルな大玉風船が登場し、「Moon Light Party!!」では七色のペンライトが輝く中、小渕が盛り上げの手を緩めないせいでコール&レスポンスがいつまでも終わらない。もちろん観客も大歓迎だ。ハードロックな「神風」ではスモークが吹き上がり、バンドメンバーも次々と花道へ飛び出してソロを決める。バラードもいいが、ロックなコブクロも最高にハマってる。

黒田俊介

「大切な歌がまだあります。10周年の時に書いた、絆と出会いの歌を、20年目で歌えるのが嬉しいです」(小渕)

 曲は「時の足音」。情感豊かなストリングスと、心を込めた二人の掛け合いが素晴らしい。この時点でたぶん、小渕の中にこみ上げるものがあったのだろう。「蕾」の途中で感極まり声を詰まらせた小渕のあとを、当然のように黒田が歌い継ぐ。「風をみつめて」では小渕がかすれそうな声を振り絞り、一歩ずつ前に進む決意を歌う。「蕾」も「風をみつめて」も、植物の生命を人の生き方に重ね合わせる歌だ。雨降りでもビルの谷間でも、きっといつか咲く日を待つ。やがて光溢れる雨上がりのシーンに至る、壮大な風景が胸の中に広がってゆく。

「20周年を無事に迎えられました。二人だけで続けられた自信はありません。みなさんのおかげです。この喜びを胸にこれからも頑張っていきます」(小渕)

 20周年記念日をタイトルに冠する「20180908」は、昨年9月16日に宮崎のライブで初披露された楽曲。20年分のありがとうを持って、今ここに立てる喜び--。物語ではなく、飾らない独白のような言葉がいい。続いて歌われた「晴々」も20周年記念曲で、過去のコブクロ曲の歌詞を織り込んだ楽しい歌詞、躍動感あふれるロックサウンドで、まだまだ続く二人の未来の希望を高らかに歌い上げる。会場内は青いペンライトの光で美しく染まった。ラストは派手に銀テープを発射し、大歓声と拍手に包まれた笑顔溢れるエンディングへ。本編は19曲、3時間近い熱演だが無駄なシーンは全くない。20年の歴史をしっかり凝縮し、コブクロの原点と現在と未来を見通す力のこもったパフォーマンスだ。

 アンコールは2曲。あらたまって黒スーツに着替え、小渕が「路上ライブでいつもやっていた歌を」と前置きして歌った「ココロの羽」の、ゆったりとフォーキーな曲調が、本編で盛り上がり切った観客の心を優しくクールダウンする。スクリーンではサンドアートが、天使の羽を描いている。小渕がアコギを弾くのをやめ、最後は感動的なアカペラのコール&レスポンスになった。20396+2人の歌声が、広いスーパーアリーナをゆっくりと満たしてゆく、忘れがたいワンシーン。そして本当のラスト曲は「ANSWER」。ワルツのリズムに乗ったバラードで、3時間以上歌ってもまるで衰えない力強い歌声が素晴らしい。変わり続けるために、変わらずにいるよ――。サンドアートが“20thありがとう”とメッセージを描き出す。歌い終えた小渕と黒田が笑顔で手を振る。満足感でいっぱいの、しかしまだまだ続く使命感を持った引き締まった顔つきだ。

 音楽にマラソンのようなゴールはなく、音楽シーンにはまだまだ、はるか先を走る年上のアーティストはたくさんいる。20年という通過点を経て、コブクロがどこまでゴール地点を伸ばし続けるか。その決意と自信をしっかり見せてもらった素晴らしいライブだった。

(文=宮本英夫)

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