ITZYの新作『IT'z ICY』にパク・ジニョンが参加 TWICEでも取り入れた“空欄を埋める”手法を解説

 ITZYの楽曲も同じ気持ちで関わっているのだろうが、やはり時期的に早すぎるという印象は否めない。彼女たちのポテンシャルの高さが想像以上だったのか、いてもたってもいられずに曲作りに関わったのかもしれない。「ICY」は計8人のコンポーザーの共作となっている。この曲はパク・ジニョンが考案した“空欄を埋める”手法で作ったのではないかと思う。同様の手法はTWICEの「The Best Thing I Ever Did(今年一番よくやったこと)」(2018年12月リリース)ですでに試されている。

TWICE "The Best Thing I Ever Did(올해 제일 잘한 일)" M/V

 “空欄を埋める”手法とは何か。それはまずパク・ジニョンが核となるフレーズを作り、ブリッジなど残りの部分を他のコンポーザーが埋めていく作業を指す(参考:Kstyle)。この進め方によって出来上がった楽曲は、1人で作るよりもサウンドの奥行きが広がり、味わいも深くなる。確かに「ICY」を聴くと、サビの部分やTWICE風のかけ声はJYPらしさがあるものの、トライバルな香りが漂う凝ったサウンドメイクは、共作者のダニエル・シーザーとルドヴィク・リンデル(代表曲:Red Velvet「Red Flavor」「Zimzalabim」など)の貢献度が高そうだ。

 常に現役のアーティストでありたいパク・ジニョンが、「ではどうしたらそうなれるのか」を考え続けた結果、“空欄を埋める”手法にたどり着いたのだろう。TWICEのクリスマスシーズン用の曲「The Best Thing I Ever Did」で試して確かな手応えを得た彼は、「ICY」で本格的に導入した。先ほど「いてもたってもいられずに曲作りに関わった」と書いたものの、本当はITZYのデビュー前に早いうちから積極的に楽曲に関わっていくことを決めていたのかもしれない。彼は多くのトレンドを生んだ一流のアーティストである。リスナーよりもっと先を見て行動していてもおかしくはないのだ。

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。

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